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新たな「常態」に回帰するインド経済 <HSBC投信レポート>

LIMO / 2020年7月12日 8時0分

新たな「常態」に回帰するインド経済 <HSBC投信レポート>

新たな「常態」に回帰するインド経済 <HSBC投信レポート>

マーケットサマリー

インド株式市場は、3月下旬以降、欧米における新型コロナウイルスの感染拡大のピークアウトを背景に世界の株式市場が反発する中で、戻り相場を続けている。最近では、インド国内における経済活動の段階的な再開も株式市場のサポート要因となっている。債券市場は、昨年12月下旬以降、世界的な金融緩和の動きやインド準備銀行(中央銀行)による追加緩和を背景に、上昇(利回りは低下)基調にある(6月30日現在)。

トピックス

新たな「常態」への回帰

インドでは、人の移動を示すデータや各種経済指標は、経済活動が概ね4月に底を打ったことを示している。5月から6月にかけては、景気回復の勢いが増す傾向が見られる。全土封鎖(ロックダウン)の段階的解除や生産活動の再開がインド経済にとって明るい兆候であることは確かだが、他方で新型コロナウイルスの影響による失業への不安や消費者のリスク回避志向は強く、先行きの景気の回復ペースについてはなお懸念が見られる。

政府は3月24日に全土封鎖措置を発表したが、感染拡大を阻止することはできなかった。しかし、PCR検査体制の拡充と感染からの回復率の高さを反映し、インドの死亡率は世界平均を大きく下回る3.2%にとどまっている。こうした状況下、政府は6月初めに感染者が少ない地区からロックダウンの段階的解除に踏み切った。

インドでは、厳しい感染拡大防止策が実施されたため、4月の経済指標では景気の落ち込みが他のアジア諸国と比較して極めて大きいことが示された。しかし、最近の経済指標の中では、電力需要、自動車販売台数、鉄道貨物輸送量、政府の雇用創出プログラムにおける新規雇用者数、物品・サービス税(GST)コンプライアンス・データ(図表1)などがいずれも4月に底を打ち、その後上昇に転じている。

投資家は、経済指標が急速に改善した理由は全土封鎖で抑制されていた消費需要が一気に噴出したためだと判断し、より持続的な成長要因を見極めようとしている。

短期的な景気見通しを左右する要因は複数ある。新型コロナウイルス感染症に伴う「恐怖要因」としては、 ①消費の減退、②数百万人に上る出稼ぎ労働者の地方への帰省による都市部における人手不足、③金融システムの一部における信用収縮の長期化、④他の主要国と比べて見劣りする緊急の財政出動などがある。

一方で、明るい要因には、①感染拡大後も底堅さが見られる農村経済、②インフォーマル・セクター(非公式部門)のフォーマル(公式)化と経済のデジタル化の加速(いずれも長期的なポジティブ要因)、③労働改革、土地改革を含む政府の構造改革(製造業振興策「Make in India」プログラムを加速する効果が見込まれる)などがある。

エコノミストの大半は、インドの国内総生産(GDP)成長率が2020年度(2020年4月-2021年3月)には実質でマイナスになると予測している。その理由が、国内経済の予想以上の低迷と世界経済の停滞であることは言うまでもない。ただし、2021年度の成長率は、前年度の大きな落ち込みの反動もあり、力強い回復が予想される。

大手格付会社は6月、インド経済について悲観的な見方を相次いで発表した。ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)は、インド国債の格付けをジャンク債(投機的格付債券)まであと1段階に迫る「Baa3」に引き下げた。これで、主要格付会社による格付けの足並みが揃ったことになる。

ムーディーズは、格下げの理由として、景気低迷の長期化、政府債務の増加、国内金融システムの脆弱性、コロナ禍による信用面での脆弱性の高まりを挙げた。前回(2017年)の格付け変更では、モディ政権が進める改革が評価されて「Baa3」から「Baa2」に格付けが引き上げられていた。

ムーディーズによる格下げに続いて、フィッチ・レーティングス(以下、フィッチ)はインド国債の格付の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。同時に、2020年度の実質GDP成長率は感染拡大と都市封鎖の影響を勘案し、-5%程度になるとの見通しも明らかにした。

フィッチはインド国債の格付については、投資適格の最下位である「BBB-」に据え置いた。また、S&Pグローバル・レーティングは、現状の格付けの「BBB-」と見通しの「安定的」を据え置くと発表した。

投資家は、ムーディーズによる格下げとフィッチによる格付け見通しの引き下げを冷静に受け止めた。投資家の間では、2020年後半には「ポスト・コロナ」の景気回復が期待できるとして、近い将来にインド国債の一段の格下げはないとの見方が広がっている。

経済成長率の低下傾向が中期的に続く場合は、インドの格付けがさらに見直される可能性も出てこよう。そうなれば、投資資金の流出、期間プレミアム(債券の償還期間の長さに伴う上乗せ金利)の上昇、ドル資金調達コストの上昇、グローバル債券インデックスに占めるインド債券の構成比率の決定の先送りなどが生じることが考えられる。

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株式市場

3月下旬から戻り相場が続く

インド株式市場は、2020年1月下旬から、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした世界的な株安を受けて、大幅に下落した。しかし、3月下旬以降は、欧米における感染拡大ペースの鈍化と経済活動の再開を背景に世界の株式市場が反発する中で、インド株式市場も上昇に転じている(6月30日現在)。

インド国内では、危険度の高い地域でロックダウンが継続される一方、その他の地域では封鎖措置が段階的に解除されている。

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HSBC投信の株式運用戦略

インド株式市場は短期的には新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、不安定な展開を続ける可能性がある。また、当面は感染予防対策が国内の経済活動に悪影響を及ぼすことが見込まれる。

インド経済は当面は厳しい局面を迎えそうだが、当社は長期的にはインド株式市場に対する強気の見方を維持している。インド経済の成長ポテンシャルは高く、構造改革の進展から、長期的に成長率は高まると見られている。与党インド人民党(BJP)が安定した政治基盤のもとで高成長・構造改革路線を継続すると見込まれることも、株式市場にとり強力なサポート要因となる。

インド株式の運用では、持続的な収益成長性を有しながらバリュエーションに割安感のある銘柄を選別する。業種別には一般消費財と不動産をオーバーウェイトとし、エネルギー、ヘルスケアをアンダーウェイトとしている。またインフラ関連銘柄は、第2期モディ政権が推進するインフラ投資計画の恩恵を受けると見込まれる。

債券市場

債券価格は上昇(利回り低下)基調を維持

インド国債市場は、2019年12月下旬以降、世界的な金融緩和の流れ、国内ではインド準備銀行(中央銀行)による積極的な利下げを受けて、上昇(利回りは低下)基調を維持している(6月30日現在)。

新型コロナウイルスの影響による景気の落ち込み、財政の悪化が懸念されており、前述の通り、6月1日にはムーディーズ・インベスターズ・サービスがインド国債の格付けを投資適格級で最低の「Baa3」に引き下げた。

HSBC投信の債券運用戦略

インド債券市場は、グローバル投資家にとり良好な投資機会を提供している。新型コロナウイルスによる経済的混乱が収束すれば、インド経済は再び優位性を取り戻すと思われる。インドの国債の相対的に高い利回り水準にも妙味がある。

インド債券の運用においては、引き続きインドルピー建国債に重点を置いて投資を行っている。また、短中期のインドルピー建社債を選好している。一方、米ドル建インド債券には慎重な姿勢を維持する。

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為替市場

インドルピーは2月下旬から3月上旬に急落、その後は一進一退

インドルピーは対米ドル、対円ともに、本年2月下旬から3月上旬にかけて、新型コロナウイルスの感染者の世界的な広がりを受けた投資家のリスク回避志向の高まりを背景に、他の新興国通貨とともに急落した。その後は、一進一退の方向感に欠ける展開となっている(6月30日現在)。

インドルピー相場は、短期的には引き続き不安定な動きを続ける可能性があるが、長期的には、相対的に良好な経済ファンダメンタルズや潤沢な外貨準備高が支援材料となり、堅調な展開が予想される。

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