ミニ/マイクロLED、台湾・中国勢が事業化に本腰
LIMO / 2020年7月14日 0時0分
ミニ/マイクロLED、台湾・中国勢が事業化に本腰
台湾エピスターが業界再編を主導
ミニ/マイクロLEDの事業化に向けて台湾・中国メーカーの動きが活発化している。液晶の新規増産投資計画が先細るなか、大規模量産に巨額投資を要する有機ELを避け、ミニ/マイクロLEDで次世代ディスプレー技術を確立するのが狙い。LED産業にとっても、需要拡大の新たな牽引役として期待が高い。マイクロLEDディスプレーの量産化にはまだ3~5年を要しそうだが、苦境にある液晶&LED産業の突破口として、今後も多くの設備投資・研究開発資金が流れ込みそうだ。
中国のFPD&テレビ大手が開発体制強化
中国メーカーでは、液晶最大手のBOE(京東方科技)が、LEDベンチャーの米ロヒニ(Rohinni)と合弁会社「BOE Pixey」を設立した。BOEのディスプレー技術とロヒニの製造ノウハウを組み合わせ、32インチ以上の大型民生用と産業・車載用などのディスプレーを対象に事業を展開する。20年後半にミニ/マイクロLEDディスプレー機器を投入予定だ。
テレビ大手のTCLを親会社に持つ液晶メーカーのCSOT(華星光電)は、中国LED大手サンアンオプト(三安光電)の子会社であるサンアンセミコンダクターと、ミニ/マイクロLEDを共同研究する開発会社の設立に合意した。CSOTが55%、サンアンセミが45%を出資し、マイクロLEDチップ、移載&ボンディング、カラー化、リペアなどのエンジニアリング技術を開発する。一連の技術確立に3年を充てる。
テレビ大手の康佳(コンカ)は、重慶市の投資会社と光半導体を研究する合弁会社を設立。重慶の工業団地に建築面積21万㎡の施設を建設して、第1フェーズで50億元を投じて光電子研究所と試験生産ラインを整備し、第2フェーズは300億元を投資してマイクロLEDの量産化を目指す。LED製造装置大手の独アイクストロンにMOCVD(有機金属気相成長)装置複数台を発注済み。コンカは中国テレビ大手のなかでFPD(Flat Panel Display)の自社製造に踏み込んでいなかったが、19年10月にマイクロLEDディスプレー製品のブランド「APHAEA」を立ち上げるなど、デバイス~セットまで垂直統合する動きを強めている。
台湾ではエピスターが再編主導
台湾では、LEDメーカーのエピスター(晶元光電)がサプライチェーン拡大に本腰を入れている。エピスターは、古くはエピテックやハイリンク、近年ではヒューガオプトテックやフォルモサエピタキシー、TSMC子会社のTSMC Solid State Lightingなど同業を吸収合併し、台湾LED業界再編の主役を務めてきたが、ミニ/マイクロLEDの商業化に向けてもサプライチェーンの中心にいようとしている。
1月には、中国LEDディスプレー大手のレアードグループ(利亜徳集団)とミニ/マイクロLEDのチップ&モジュールを製造する合弁会社の設立を決めた。当初10億元を投じて江蘇省無錫市にLED生産拠点を設立し、段階的な投資でミニ/マイクロLEDディスプレー用のLEDチップやマストランスファー技術を活用したCOB(Chip on Board)やCOG(Chip on Glass)などを生産する予定で、23年までに本格量産を目指す。
一方で、台湾経済部が主導しているUターン投資にも応じ、20~21年前半に台中と台南の工場に54億台湾ドルを投資して中国からLEDチップの生産を台湾に移管し、ミニLEDの大半を台湾で量産する体制を整える。今後、中国では液晶バックライト用LEDチップをメーンに生産する。
さらに、先ごろFPD大手AUO(友達光電)のグループ会社で同業のレクスターエレクトロニクス(隆達電子)と共同持株会社の設立にも合意した。Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体の投資プラットフォームとして活動し、その傘下でエピスターはLEDのエピ技術やチップ、レクスターはパッケージやモジュールを強化しつつ、独立した事業を展開。投資の効率化とコスト管理のメリットを最大化し、ミニ/マイクロLED技術の早期商業化を目指す。
アップル新工場にも技術協力か
台湾では、米アップルが新竹サイエンスパークに約100億台湾ドルを投じてミニ/マイクロLED製品の工場を新設する見通しになっているが、これにはエピスターやAUOらが技術協力するといわれている。AUOは4月、台湾LEDベンチャーのプレイナイトライドと9.4インチ228ppiのフレキシブルマイクロLEDディスプレーを開発している。
アップルは、21年初頭にもミニLEDバックライトをiPadやMacBookに採用し、アップルウオッチにはマイクロLEDディスプレーを採用する計画があるといわれている。アップル製品のFPD&LEDには、iPodの時代から日本企業の製品・技術が数多く採用されてきたが、近い将来、中国・台湾勢がミニ/マイクロLEDの量産化に成功するようなら、サプライチェーンの多くが日本から失われることになるだろう。
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