漢字・計算テストで見えたコロナ休校後の学力格差…経済的理由も?
LIMO / 2020年7月22日 10時0分
漢字・計算テストで見えたコロナ休校後の学力格差…経済的理由も?
3カ月にも及ぶ臨時休校を経て、全国的に6月から順次学校再開となっています。年度を挟んだ休校で、子供の学力格差拡大に拍車がかかるのではないかと不安を感じる親は少なくありません。
学校が始まるまでの過ごし方は、どの程度学力格差として現れているのでしょうか。筆者が見聞したエピソードからその実態を探っていきます。
学校再開直後の漢字テスト
筆者の子供たちが通う学校では、学校再開直後に漢字テストが行われました。テストの対象は臨時休校期間中に勉強するよう指示されていた、前学年の3月から進級後の4月と5月に習う漢字です。
休みの間もそれなりに勉強していたどうか見るつもりなのでしょう。担任の先生方は「時間もたっぷりあったし、皆が100点取れると先生は思っている」「95点以上が合格ライン」と設定し、目標以下の点数を取った生徒は再テストを課すと宣言したそうです。
それを聞いた子供たちは、時間のあるときには漢字を見直すなど準備に余念がありませんでした。そこでクラス全員は合格しそうかと、それぞれに聞いてみると異口同音に「諦めている子もいる」と言うのです。
漢字の苦手な子は休校中に漢字練習を避けていたため、漢字を忘れている場合もあったといいます。また、中には何とか95点以上取るために覚えられそうにない漢字は捨てて、確実に読み書きできそうな漢字を全力で覚えると言い放っている子もいたそうです。
漢字テスト1つとってもしっかり読み書きできる子とうろ覚えの子、お手上げの子がハッキリしたと子供の目にも分かってしまったとか…。時間がたっぷりあったからといって、全員が100点を取れるとは限らない現実を垣間見ました。
算数の計算スピードの差に驚く先生
知り合いのママAさんは、算数の時間で起きた驚きの出来事を教えてくれました。Aさんの娘さんは筆者の子供の一人と同じクラスです。学校が再開して2週間経った頃、先生が算数の授業中に計算のテストを行いました。
先生の「スタート」の声で一斉に始めたテストでしたが、すぐに終わったグループと計算に手こずる生徒たちの時間差が思った以上に離れていたのか、先生は驚いた表情を浮かべながら「う~ん、けっこう苦戦した子も多いのかな」と口にしていたとAさんは娘さんから聞いたそうです。
気になった筆者は、子供に算数の授業での出来事を確認してみると「そうだよ。3年生の時のテストよりも解くスピードの差が広がっていたから先生が焦ってた」と口にしたのです。
Aさんの娘さんのように、休校中でもそろばん教室の宿題や課題をオンラインでやり取りして計算力を維持している子もいれば、3カ月間ほとんど勉強しないで過ごした子もいるようです。この差を埋めるには学校の授業だけでは無理がありそうで、子供自身の努力も必要かもしれません。
勉強系の習い事をしている子・していない子の学習量の差
塾や公文、学研に通っている子は、学校がある時は授業と学校の宿題以外に学習教室での勉強や宿題をこなしています。臨時休校になる前から学習習慣が定着している子は、習い事が休みになっても公文や学研の先生から渡されたプリントを解いたり、塾のオンライン授業を通じて勉強していました。
塾に通っている筆者の子供たちも、自由時間は多かったものの平時と変わらない学習量を保つことができました。また、臨時休校になったことで、タブレット端末の通信教材に申し込みをして学習の遅れが出ないよう手を打った家庭もありました。
しかし、習い事に行っていない子や経済的な理由で何らかの手を打てない家庭の子は、休校になったことで先生のような親以外の大人の監視下で勉強する機会を失ったのです。
普段、勉強系の習い事に通っていない子は、学校、宿題、そして親が用意した家庭学習用の教材に取り組んでいます。しかし休校中は学校から宿題が出されたとはいっても、1日のうちでそれをこなすのに大した時間はかかりません。
先生という第三者の目が届かず、まるまる自由に過ごせる日が続けば自分に甘くなり、親から渡された教材を解くのに身が入らなくなるのも仕方ないでしょう。
勉強系の習い事に通う子には「先生」と呼ぶ存在が学校と習い事先の2種類あるのに対し、行っていない子には学校の先生しかいません。休校で勉強を教えてくれる大人がいなくなれば質問もできず、分からない単元や教科をそのまま放置することにつながります。
このように、3月の時点ではそれほど大きくなかった両者の差も、休校が長引けば長引くほど大きくなるのは避けられません。6月から多くの自治体で学校再開となっても、学習面では「一斉にスタート」といえる状況ではなかったのです。
経済的理由や家庭環境による格差がコロナで深刻化?
これまでも、経済的理由や家庭環境によって学力格差が生じ、年々その差が広がっていることを不安視する声はあがっていました。その根本的な解決が見いだせないまま、3カ月もの休校期間中の学習時間確保は各家庭に任されたのです。
学校にいる約7時間から8時間がごっそり自由時間となり、「学校に行っている時間」という共通した条件がなくなったことが、学力格差がより大きくなる状況を作り出したといえるかもしれません。塾など学校以外の場で勉強する機会のある子と、そうでない子の間の差がより開き、簡単に埋めることが難しくなっているという一面もあるでしょう。
新型コロナウイルスに関しては、第2波、第3波が危惧されています。再度休校になる可能性を考えると、子供の学習時間を確保する準備をしておくことが必要かもしれません。本来ならば、今回のことを教訓に、国や自治体が格差是正を進めるためのシステムを迅速に導入することが望ましいものの、今すぐは難しい面があります。
夏休みなどの長期休暇前に出版される市販のまとめドリルを購入したり、経済的に余裕があれば通信教材を検討するなどして、子供の学習時間を維持する対策しておきたいものです。
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