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吉野家とマクドナルド、コロナ禍での客単価でなぜ差がついた? 株価不振の吉野家HD

LIMO / 2020年7月24日 11時0分

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吉野家とマクドナルド、コロナ禍での客単価でなぜ差がついた? 株価不振の吉野家HD

大手牛丼チェーン店「吉野家」や讃岐うどんチェーン店「はなまるうどん」等を運営する外食チェーン店持株会社「吉野家ホールディングス」(以下、吉野家HD)の株価が低迷しています。

冴えない吉野家HDの株価、牛丼株の不振が鮮明に

同社の株価は、昨年からの業績回復等を背景に、年明け間もない1月10日に3,050円(ザラバ値、以下同)を付け、上場来高値を更新しました。

しかしながら、その後は3月の株式相場暴落時に1,709円まで約▲44%下落し、いったんは2,500円前後まで戻したものの、現状は2,000円強の値動きが続いています。年初来高値(上場来高値でもあります)から見れば、ザックリ3分の2という水準でしょうか。

吉野家ホールディングスの過去2年の株価推移

(/mwimgs/a/2/-/img_a2adec457be1c366315f8cb03994b0b1140471.jpg)

拡大する(/mwimgs/a/2/-/img_a2adec457be1c366315f8cb03994b0b1140471.jpg)

もっとも、株価低迷は吉野家HDだけではなく、他の多くの外食株も似たような傾向にあります。

ただ、吉野家HDの競合相手でもある松屋フーズホールディングスやゼンショーホールディングスも、外食全体で見ると低迷が顕著です。つまり、外食株の中で“牛丼株”の低迷が目立っていると言えましょう。

テイクアウトの成否が外食産業の株価に影響?

改めて言うまでもなく、一連のコロナ禍で外食産業は大きな痛手を被りました。

これは、自粛要請による休業や営業時間縮小に加え、消費者の“巣ごもり生活”が顕著になったことが主な理由です。それまで注力していなかったテイクアウト(持ち帰り)を強化したものの、付け焼き刃の印象は拭えずに苦戦しているケースも多いのが実情です。

実際、コロナ禍までテイクアウトをほとんど実施していなかったファミレスは、大量の店舗閉鎖などリストラを余儀なくされ、株価も低迷したままになっています。

一方で、従来からテイクアウトを強化してきた日本マクドナルドは緊急事態宣言中も既存店の売上高を伸ばした月があり、株価は6月に入ってから上場来高値を更新しています(注:足元の株価はやや苦戦)。

こうした状況を鑑みると、外食株の優劣が決まりつつある最大の理由は、テイクアウトの成否と見ていいかもしれません。

以前からテイクアウトを実施してきた牛丼株はなぜ不振?

しかし、吉野家を始めとする牛丼チェーン店では、ずっと以前からテイクアウトを実施しています。

牛丼をテイクアウトして家で食べるという人も、決して少なくないはずです。吉野家もコロナ禍がピークだった3月下旬~5月下旬までは店内飲食の営業時間を大幅に短縮し、それ以外の時間帯はテイクアウトのみに切り替えた店舗が多数ありました。この時期、テイクアウトの客が思うように伸びなかったのでしょうか?

吉野家HDは、4月16日に行われた2020年2月期の通期決算説明で、当時の最新データである3月の既存店売上実績を公表しています。それによると、同社が展開する各ブランドの既存店売上実績は次の通りでした。

吉野家:▲1.8%
はなまる:▲29.3%
京樽:▲27.8%

注:いずれも3月の対前年同月比の増減率。

コロナ禍が本格化した3月に、グループ内では吉野家のみが孤軍奮闘しており、会社側も「店内客数が減少するも弁当需要の高まりで健闘」と述べています。なお、その後の吉野家の既存店売上高対前年同月比の増減率は、4月:▲4.0%、5月:▲7.3%、6月:▲12.3%と推移しています。

吉野家と日本マクドナルドの最大の違いは「客単価」

では、テイクアウトで健闘する日本マクドナルドと吉野家の違いは何でしょうか。

結論から言うと、おそらく「客単価」の改善度合いの違いではないかと推測できます。日本マクドナルドは店内飲食を大幅縮小(休止含む)してテイクアウトを増加させた結果、小売り消費産業で最も重要な指標である「客単価」が大幅上昇となりました。

今年3月〜6月の日本マクドナルド既存店売上高、客数、客単価の対前年同月比は、同じ順序で以下の通りです。

3月:▲0.1%、▲7.7%、+8.3%

4月:+6.5%、▲18.9%、+31.4%

5月:+15.2%、▲20.7%、+45.3%

6月:▲3.2%、▲19.4%、+20.1%

これは、店内飲食の休止や大幅縮小で、中高生や会社帰りのサラリーマンなど1杯100~150円のコーヒーで長時間店内に滞在するような不採算客が一掃されたことが最大要因でしょう。その結果として、マクドナルドの客単価は劇的な大幅上昇となりました。

吉野家はテイクアウトにシフトすると客単価が下がる?

一方、吉野家は事情が全く異なると推察されます。吉野家にはマクドナルドにいるような100円で長時間滞在する客はいません。実際、吉野家の既存店客単価の対前年同月比増減率は、3月:▲2.0%、4月:▲3.0%、5月:+2.1%、6月:+8.1%で、日本マクドマルドの実績には遠く及びません。

吉野家では店内飲食の場合、牛丼や豚丼よりも値段の高い「定食」「御膳」に一定の需要があります。これら「定食」「御膳」も概ねテイクアウト可能となっていますが、一部商品や季節限定商品には対応できていません。

また、実際に定食をテイクアウトするとなると、味噌汁を家に帰って自分で作る等の煩わしさが発生します。牛丼のようにパカッと開けてすぐに食べられませんから、「定食」「御膳」は店内飲食の方に圧倒的なメリットがあるのは明らかです。

さらに店内飲食の場合は、たとえば牛丼を注文した上で、生卵やポテサラ、お新香などサイドメニューの追加注文が多くありますが、テイクアウトでは店内ほどあれこれ頼まないのではないでしょうか(ちなみに、生卵は夏期はテイクアウト不可)。

こうした状況を勘案すると、店内飲食がテイクアウトにシフトして客単価が上昇する、という可能性は低いでしょう。なお、6月以降になると昨年春から発売した「牛丼 超特盛」の増収効果が一巡すると見られるため、この3~5月期(2021年2月期第1四半期)にどれだけ収益を確保したのかは重要な注目点となるでしょう。

紅ショウガの“テンコ盛り”が消滅の危機?

ところで、吉野家はコロナウイルス感染拡大予防のために、店内でも紅ショウガの小袋配布を実施し始めています。

ご存知の通り、店内飲食ではテーブルやカウンターに置かれている紅ショウガは取り放題です。牛丼に紅ショウガをたくさん乗せる“テンコ盛り”は、吉野家ファンに必須アイテムなのは周知の事実。牛丼だけでなく、「定食」「御膳」でも取り放題です。

時々、SNSを意識して常軌を逸した不届き者の行為(10cmくらい山盛りにする等)が見られるのは残念ですが、店内飲食の大きなメリットになっていることは確かです。

ところが、コロナ感染予防の観点から、小袋に入った紅ショウガを出す店舗が出始めています。この小袋入り紅ショウガはテイクアウトの際に付けてもらうものでしたが、それを店内飲食で使用し始めたというわけです。

筆者が調べた限りでは全国で一斉導入というわけではなく、店舗ごとで判断されているようですが、実施店舗が増えていることは間違いありません。確かに、感染予防という意味で仕方ない面はありますが、店内飲食の楽しみが一つ減ったことでモチベーションが下がる吉野家ファンがいても不思議ではありません。

先日、筆者も3カ月ぶりに吉野家に行きましたが、本当に小袋入りになっていました。それまでのような“テンコ盛り”にするためには、少なくとも10袋、人によっては20袋くらい必要でしょうが、小心者の筆者は「10袋ください」とは言い出せませんでした。

吉野家HDの株価低迷の一因が、事実上の紅ショウガ“テンコ盛り”廃止というわけではないでしょうが、これを悲報と受け止める吉野家ファンは少なくないかもしれません。

【参考資料】
2020年2月期 決算説明会資料(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08813/e880750c/c3fa/4db3/810d/191ed61c7ec4/20200416174134031s.pdf)(吉野家HD)
吉野家月次推移(https://www.yoshinoya-holdings.com/ir/report/yoshinoya.html)(2020年度)

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