コロナ禍でパワハラ悪化!?「パワハラ防止」の義務化がスタートしたが、その実態は…
LIMO / 2020年7月31日 18時45分
コロナ禍でパワハラ悪化!?「パワハラ防止」の義務化がスタートしたが、その実態は…
「騒動施策総合推進法(パワハラ防止法)」の改正によって、2020年6月より大企業を皮切りに、パワーハラスメント(パワハラ)の防止対策を講じることが義務となりました。
近年、働き方改革が推進されている一方で、ブラック企業による問題が後を絶ちません。劣悪な労働環境の職場では、パワハラが横行し、体力的にも精神的にも消耗が激しく、限界を感じている社員も多いと聞きます。
コロナ禍でテレワークを導入する企業が増えていることで、「ストレスが減って仕事がしやすくなった」と思っている人がいる一方、「緊急事態宣言の解除とともにテレワークもなくなり、業績悪化でより一層厳しい状況に陥ってしまった」という人も。
今回は、データを見ながらパワハラ問題の実態を読み解き、withコロナ時代のパワハラについて考えてみます。
上司のむちゃ振りに翻弄される部下
職場におけるパワハラとは、厚生労働省によると、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素をすべて満たすもの」(※1)(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about)と定義されています。
パワハラに対して社会の目が厳しくなってきているものの、今もなお上司のパワハラに悩まされている人が多いのが現状です。
Aさんも、上司のパワハラに苦しむひとり。「上司自身が担当していた案件を、私に丸投げしてきたんです。それで『これは私の仕事ではないですよね?』と訊いたら、怒りが爆発して……」
上司は「君の成長のためにあえて仕事を割り振っているんだ!」と怒号を飛ばしたそうです。「私が成長するために…ということなので、やり方も何もかも『考えてやれ』ということなんでしょうね。フォローもサポートも一切ありませんでした」とAさんはため息をつきます。
またBさんは、テレワーク導入により上司の態度がきつくなってしまった、と嘆きます。「緊急事態宣言の発令とともに、テレワークに切り替わっていました。営業のサポート業務なので、テレワークになっても業務に大きな支障はありませんでした。ただ子供の通う保育園で登園自粛が要請され、育児をしながらのテレワークとなると全然捗りませんでした。仕事が思うように進まずにストレスが溜まり、さらに上司からは『コロナで大変な時に、仕事が遅い!』とテレビ会議で言われ、ほんとうに散々な時期でした。
テレビ会議も子供が映り込んでしまうので、本当は映りたくなかったのですが、上司からは『絶対に画面表示しろ』との指示がありました。また私の仕事が遅いのが原因だとは分かっているのですが、会議の頻度も上がり、監視体制が厳しくなってきました。
テレビ会議となると化粧をしなければならないし、男性社員の中にはスーツをきている人もいました。テレワークになったら少しは楽になるのかな…と思っていたのですが、なんだか出勤していた時よりもストレスが増えてしまった気がします。
今はテレワークはなくなり以前のように出社しています。子供が保育園に行ってくれているのは助かりますが、テレワーク中の私の働きぶりが気に入らなかったのでしょうか。上司の物言いがきつく、人前で大声で叱責されることも増えました」と、語ってくれました。
データで見るパワハラの現状
約4割の人が「ハラスメント経験あり」
では、ここで日本労働組合総連合会(連合)が2019年5月に発表した、「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2019」(※2)(https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20190528.pdf)の調査結果を見てみましょう。
職場でハラスメントを受けたことがありますか?
受けたことがある…37.5%
受けたことはない…62.5%
受けたことがあるハラスメント(複数回答方式)(①~⑥がパワハラに該当)
①暴行・傷害などの身体的な攻撃(10.7%)
②棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃(41.1%)
③隔離・仲間外し・無視などの人間関係からの切り離し(21.3%)
④業務上明らかに 不要なことや遂行不可能 なことの強制、仕事の妨害などの過大な要求(25.9%)
⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことなどの過小な要求(18.1%)
⑥私的なことに 過度に立ち入ることなどの個の侵害(22.7%)
⑦セクシュアル・ハラスメント(26.7%)
⑧その他ハラスメント(42.9%)
行為者ごとのハラスメントをまとめた結果によれば、行為者が「上司」であるケースは589件と最も多く、このうちパワハラ(①~⑥の合計)が68.3%を占めています。なお、上司から受けた人のハラスメントで最も多かったのは、②の「棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃」でした。
多くの人が、ハラスメントの中でも上司によるパワハラに悩まされているということがうかがえます。
「社畜マインド」がパワハラを横行させる⁈
会社に飼い慣らされている家畜のように、会社のために自分の生活を犠牲にして働く会社員を「社畜」と表現することがあります。
実はこの「社畜マインド」は、少々危険。パワハラが常態化していると、過酷な環境下でも自分にとっては当たり前の状態になってしまい、感情や感覚がどんどん麻痺してしまうからです。
極端な話、パワハラを受けて育った部下が、今度は自分が上司になったときに、自分の部下に同じようにパワハラをしてしまうという、「負の連鎖」に繋がってしまうかもしれせん。
ハラスメントを受けても、半数近くが「誰にも相談していない」
ただ、おかしいと気が付いていても、動くことができない人も多いようです。
前述の調査(※2)(https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20190528.pdf)によれば、ハラスメントを受けたことがあると回答した人に、「誰かに相談しましたか?」という質問をしたところ、実に44%もの人が「誰にも相談しなかった」と回答しています。
その理由は、「相談しても無駄だと思ったから」(67.3%)が最も高く、「相談するとまた不快な思いをすると思ったから」(20.6%)と「誰に相談してよいのかわからなかったから」(17.0%)が続きました。
相談を無意味に感じ、相談する前に諦めてしまう人が多いことがうかがえます。
負の連鎖を断ち切るために
パワハラは、本来、会社が防いでいくべき課題です。しかし、パワハラが常態化している会社だと、上層部からの働きかけはあまり期待できません。でも「どうせ無駄だから」と動かなければ、さらにパワハラが常態化する負の連鎖に繋がってしまうかもしれません。
パワハラ防止措置が義務づけられたことにより、中小企業は2022年4月より施行)、会社はパワハラの防止や解決に向けて職場環境を整備する必要があります。体制のひとつに、労働者のハラスメント相談窓口を設置すること、幅広い相談に応じることなどがあります。
また、「業務上の指導」と「パワハラ」の線引きも、より具体的に示されるようになったため、今まで相談できなかった人でも相談しやすい環境になるはずです。
外部窓口への相談も視野に
コロナ禍で「新しい生活様式」の実践が求められています。企業内でも「ポストコロナの働き方」を模索しているところでしょう。コロナ禍で市場が大きく変化しています、誰しも多かれ少なかれストレスを抱えていると思います。しかし、「今はみんな大変な時期だから…」と理不尽なパワハラを受け入れる必要はありません。
まだ窓口がなかったり、社内での働きかけが難しい場合は、外部の相談窓口の利用という手もあります。例えば、厚生労働省が運営する『明るい職場応援団』には、パワハラの定義の他、各種データ、相談窓口の案内や利用の仕方などが掲載されています。
「パワハラ防止法」を根拠として、取り計らってもらうこともできますので、職場でのパワハラに悩んでいる人は参考にしてみてはいかがでしょうか。
参考
「ハラスメント対策パンフレット」厚生労働省(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000657100.pdf)
(※1)(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about)『あかるい職場応援団』ーハラスメントの定義ー厚生労働省(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about)
(※2)「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2019」連合(https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20190528.pdf)
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf)
『明るい職場応援団』厚生労働省(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)
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