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米中冷戦は米国優位で長期耐久戦に〜中国の苦しい事情とは?

LIMO / 2020年8月2日 20時0分

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米中冷戦は米国優位で長期耐久戦に〜中国の苦しい事情とは?

米中の対立は「新冷戦」の様相を呈しており、米国の優位で当分続くだろう、と筆者(塚崎公義)は考えています。

米中は貿易戦争ではなく「新冷戦」

ケンカには二種類あります。一つはガキ大将が弱虫からオモチャを奪い取ろうと脅す場合です。「オモチャをよこさないと殴るぞ」と脅すわけですが、本当に殴ると手が痛いので、できれば殴らずに目的を達したいと考えています。

これは、トランプ大統領の常套手段で、たとえば日本に対して「米国製の武器を買え。買わないと日本車に高い関税を課すぞ」と脅すわけです。過日合意した米中貿易協議も、これでした。「米国製品を買え。買わないと中国製品に高い関税を課すぞ」と脅したわけです。

ケンカの種類の二つ目は、相手を倒すために本気で殴り合うものです。副社長派閥が勢力を拡大し、社長の追い落としを狙っている時には、社長派閥は本気で副社長派閥を叩くでしょう。「殴ると手が痛い」などと言っている場合ではありませんから。

筆者は、米中対立がこちらに移行しつつあると考えています。トランプ政権は、ポンペオ国務長官が中国共産党を本気で批判する演説を行ったり、在ヒューストン中国総領事館の閉鎖を命じたり、対中国の対決姿勢を鮮明にしています。

そして、肝心なことは、米国議会が最近相次いで中国が困りそうな法律を満場一致に近い形で可決しているということです。米国議会は「中国は不正な手段で実力を伸ばして、米国の覇権を脅かそうとしている。今のうちに叩き潰す必要がある」と考えているわけです。

つまり、次の大統領選挙でトランプ大統領が負けたとしても、米国の中国叩きは収まらない、ということなのです。米中対立の第二段階は、「新冷戦」と呼ばれる覇権争いになるでしょう。

これまではカネの問題でしたが、今後は中国政府のあり方や基本政策について米国が変更を求めるというものになるでしょうから、中国としても到底受け入れられるものではないでしょう。したがって、合意は非常に困難だと思います。

しかも、上記のように大統領選挙の結果にかかわらず米中の対立は続くでしょう。したがって、中国は「時間稼ぎ」をしても得をしないのです。むしろ、時間が経つと中国に不利になる可能性が高そうです。

中国の苦しい事情が米国の圧勝の要因に

貿易戦争は、米国が圧倒的に有利です。米国は中国から大量の輸入をしていますし、中国の方が経済規模が小さいので、米国の対中輸入関税で輸入が減ることは中国経済にとって大変な痛手なはずです。

一方で、中国の対米輸入は米国の対中輸入よりはるかに少ないですし、もともと米国経済は巨大ですから、中国が対米輸入に関税を課しても米国経済の打撃はそれほど大きくありません。

したがって、先の合意は米国の圧勝に終わったわけです。米国は貿易戦争勃発前と比べて何も譲らず、貿易戦争で中国に課した関税も大部分は残したままでした。関税を少し引き下げただけで中国から大量輸入の約束等を取り付けたわけですから。

今後についても、米国が圧倒的に有利だと思います。米国が世界中の企業に「米国と付き合いたければ中国と付き合うな」と言うでしょうから。そう言われた企業の多くは、「中国の工場を海外に移転させよう」と考えるでしょうから、中国経済が空洞化してしまう可能性が高まるでしょう。

これは、中長期的に中国経済にとって極めて大きな打撃となりかねません。外国企業の工場を誘致して、その輸出によって経済が発展してきたわけですから、その流れが逆転することの影響は大きいでしょう。

米中分断に向かえば、味方が多い方が有利

米中が新冷戦状態に突入しているとすれば、次第に米ソ冷戦時のように「違いに交流しない」ようになるかもしれません。中国は仲間たちと、米国は仲間たちと、それぞれ取引をするけれども、相互間では取引が行われない、といった時代になるかもしれません。

そうなった時には、自分の仲間がどれだけ存在しているか、ということが重要になります。はたして、どれだけの国が中国の仲間として「米国と付き合わずに中国と付き合う」ことを選ぶのか。

今までであれば、中国が経済力に物を言わせて途上国を味方に引き入れることが比較的容易だったかもしれませんが、中国経済が痛めば「金の切れ目が縁の切れ目」になるケースも多いかもしれません。

しかも、香港情勢などを世界中が注視しているわけで、中国陣営に入ることの危険性を認識する国も増えてくるかもしれません。

したがって、米国陣営に与する国が多くなると筆者は考えています。国の数はともかく、経済規模で言えば米国陣営が圧倒的な大きさになりそうです。

日本政府としては、同盟国が殴り合いのケンカをはじめたら、そちらに付くしかないのでしょうが、日本企業も上記のような展望を持った上で対中国ビジネスをどうするのか、大局的な観点で判断していく必要があるでしょう。

殴り合いですから、痛手を被ることは覚悟の上で喧嘩をするわけです。日本企業も日本経済も、そこの覚悟をしっかりして、来るべき変化に対応できるように準備をしておくことが、必要なのでしょうね。

あとは、密接に関係しあっている米中経済が分断されていくスピードに要注意でしょう。お互いの関係が緩やかに解消していくのであれば傷は小さいでしょうが、急激に分断が進むことになると、お互いの傷が大きくなりかねませんから。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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