自分の預金が、知らないうちに誰かの役に立つ? 現役銀行員が教える「休眠預金等活用法」
LIMO / 2020年8月8日 20時0分
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自分の預金が、知らないうちに誰かの役に立つ? 現役銀行員が教える「休眠預金等活用法」
新型コロナウイルスの影響が長引く中、「困っている人へ、早く必要な支援を」というのは多くの人が望んでいることかもしれません。そして、困っている人への支援策の1つとして今注目されているのが、毎年700憶円もが発生していると言われている休眠預金を活用した助成金です。
この休眠預金の活用のカギになるのが、「休眠預金等活用法」という普段あまり耳にすることのない法律なのですが、実際に困っている人にどのようにお金が渡っていくのかを、現役銀行員の著者が解説してきます。
「休眠預金等活用法」とは?
休眠預金とは「預金者等が名乗りを上げないまま、10年間放置された預金」のことです。そして、休眠預金等活用法とは「休眠預金を、社会課題の解決や民間公益活動の促進のために活用するための法律」になります。
休眠預金等活用法を理解するには「お金の流れ」と「登場する関連団体」がポイントになるのですが、正直申し上げてなかなか分かりにくいシステムになっています。とはいえ、曲がりなりにもお金のプロである銀行員として、この休眠預金等活用法の2つのポイントを、やさしく解説していきたいと思います。
休眠預金等活用法~①お金の流れ
休眠預金で、1つ目のややこしいところが「お金の流れ」です。困った人のために休眠預金が活用されるまでのお金の流れは、結構ややこしくなっています。
休眠預金が活用されるまでのお金の流れ
10年間動きがない等の理由で預金が休眠預金になる
銀行から預金保険機構へ休眠預金が移される(移管)
預金保険機構から「指定活用団体」へ委託(1回目の委託)。「指定活用団体」は委託を受けて、休眠預金を「資金分配団体」に分配(1回目の分配)する。
「資金分配団体」は「指定活用団体」から委託(2回目の委託)を受け、休眠預金を「実行団体」に分配(2回目の分配)する
「実行団体」が公益活動を実施し、困っている人に休眠預金(助成金)が活用される。
休眠預金が困っている人のために活用されるまで、このようなプロセスを踏むことになります。支援を必要としている人は大勢おり、個人が殺到したら収集がつかなくなるので取りまとめる存在は必要だと思いますが、「いくつも関連団体を経由して、周りくどいなあ」と感じてしまうのは私だけでしょうか?
休眠預金等活用法~②関連団体と関連性
先程のプロセスで見たように、ここで登場するのは「実行団体」と「資金分配団体」、そして「指定活用団体」の3つです。
実行団体
実行団体とはいわゆるNPO法人※で、支援活動などを通じて、困った人に現場で接している団体です(※他にも、各種福祉団体や社団法人などがあります)。
資金分配団体
資金分配団体とは財団や基金などが含まれ、NPO法人の上部組織といった位置付けです。助成金分配や人的交流などを通じて、NPO法人の公益活動を支援・育成しています。
それでは、指定活用団体については次項で詳しく見ていきましょう。
「指定活用団体」とは?
指定活用団体とは、休眠預金等活用法に基づき、休眠預金を正しく社会に役立てるために、内閣総理大臣から指定される団体のことで「休眠預金を社会に活用する旗振り役」といった存在です。現在のところ、指定活用団体は「一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)」の1団体のみです。
ただし休眠預金等活用法では、指定活用団体は公募で決定されることになっているので、今後は変更となる可能性もあります。JANPIAは、経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)などが主導し、休眠預金等活用法の指定活用団体となる目的で設立されました。役員は元官僚、経団連関係者などで構成されています。
では、指定活用団体の役割について見ていきましょう。
指定活用団体の役割1:休眠預金の行き先を決める
休眠預金等活用法では、 休眠預金は主に以下3つの目的に活用されることになっています。
子ども及び若者の支援
日常生活等を営む上で困難を有する者の支援
地域活性化等の支援
前述したように1回目の委託、1回目の分配は指定活用団体が行ないますので、指定活用団体が休眠預金の行き先を決めるとも言えます。
指定活用団体の役割2:休眠預金が活用された結果を評価・報告する
指定活用団体は、休眠預金が最終的にどのように活用されたかを調査し、評価・報告する役割があります。休眠預金の元は預金者、つまり私たち国民のお金です。当然ですが、不当な手段で特定の人々だけが得をするようなことがあってはなりません。
そのため、倫理規定や内部通報制度などが整備されており、不正が発生しない仕組みとなっているのです。
まとめとして
2020年7月17日にJANPIAは、20団体20事業へ助成予定総額約16億円の採択を決定したことを公表しました。ぜひ、新型コロナウイルスの影響で困っている人に、1日でも早く休眠預金を有効活用して欲しいと願っています。
しかし、本当にそうなっていくのでしょうか?
指定活用団体は法施行と同時に設立され、公募とは言っても目論みどおり指定された。そして、複数回にわたる委託と分配を経て「ようやく」困った人のところにお金が届く…。
最近のニュースで頻出する「幽霊法人」「中抜き」などと言ったキーワードが、頭に浮かんでしまった方もいるかもしれませんね。筆者自身、施行されて間もない休眠預金等活用法の行く末を、預金を扱う銀行員としてしっかり見ていきたいと思います。
それでは最後に、JANPIAの二宮 雅也 理事長のメッセージから、休眠預金等活用法の崇高なビジョンをご紹介して、記事の結びとします。
”誰ひとり取り残すことなく、
未来の子ども達に
サステナブルな社会を引き継ぐために。
(中略)
JANPIAは、休眠預金等活用法に則り、誰ひとり取り残すことなく未来の子ども達にサステナブルな社会を引き継ぐために、オールジャパンの体制で多様なステークホルダーと連携の下、民間の英知、創造性、革新力を結集して、社会の諸課題の解決に革新的な手法でチャレンジし続ける担い手を支える触媒になることを目指します。
関係の皆さま方の一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。”
【引用】「メッセージ(https://www.janpia.or.jp/about/)」(一般財団法人日本民間公益活動連携機構)
【参考】「新型コロナウイルス対応緊急支援助成・資金分配団体の決定(https://www.janpia.or.jp/common/pdf/press_20200717_01.pdf)」(一般財団法人日本民間公益活動連携機構)
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