「おひとりさま」が抱える不安な老後生活…今から準備できることとは?
LIMO / 2020年7月31日 20時15分
「おひとりさま」が抱える不安な老後生活…今から準備できることとは?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行に伴う経済への大打撃や、2019年6月に金融庁が発表した『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)』内のいわゆる“老後2000万円問題”などにより、改めてお金の大切さを実感したり、不安を抱いたりした方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、“おひとりさま”が老後の生活費のために今から準備できることについて考察します。
優雅に過ごせると思っていたら「老後2000万円問題」なんて
「独身で仕事をバリバリやってきた私。年金もきちんと納めているし、老後は一人優雅に趣味三昧、と思っていたのに。老後は年金以外に2000万円は必要といわれ、ショック」(YR 45歳)
「そもそも老後2000万円問題って何?今さら聞けない感じなんですけど」(AS 39歳)
昨年、ニュースや新聞でも取り上げられ、話題となった「老後2000万円問題」。これを簡単に解説すると、長寿化で定年後の人生が長くなり、95歳まで生きると仮定した場合、夫婦で約2,000万円のお金が必要になると金融庁が発表したもの。
その後、これはあくまでも単純な試算であり、該当しない人も多くいるという補足があったものの、老後に不安を感じた方も多くいたのではないでしょうか。とくに、“おひとりさま”ともなれば、自立した生活を維持していけるかどうかも考えなくてはならず、心配が募ってしまいそうですよね。
年金はどれくらいもらえるの?
それでは、実際に年金はどれくらいもらえるのでしょうか。厚生労働省年金局「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(https://www.mhlw.go.jp/content/000578278.pdf)」の内容をみていきましょう。
まず、国民年金・厚生年金がもらえる会社員・公務員の老齢年金の月平均は、約14万4千円。自営業や専業主婦といった国民年金のみの受給である場合、月平均は約5万6千円になります。
国民年金の受給額はこれまでの納付月数により決定されるため、多少の差額が出ることもあるでしょう。また、厚生年金の受給額は納付月数と収入によって変化するため、高収入であった人ほど受給額が増えます。
この数値から考えると、老後生活には大きな個人差が出ることが予測されます。場合によっては、生活に必要な家賃や光熱費、食費など、年金だけではまかないきれないことも出てくるかもしれません。
年金だけでは足りない分はどう補う?
総務省統計局が発表した「家計調査報告 家計収支編2019年(令和元年)平均結果の概要(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2019.pdf)」から単身世帯のひと月の支出額をみてみると、食料品・光熱費・住居費といったものを含む消費支出合計は平均163,781円という結果が出ています。これは別名家計費とも呼ばれ、生活を維持するために必要な支出のことを指します。
しかし、あくまでもこれは平均なので、住んでいる地域や環境によって支出額に大きな差が出ることも考えられるでしょう。個人差はあるものの、先述の年金受給額だけではとても足りないという計算になりますよね。そこで、まずは次の点について自己チェックをしてみることをおすすめします。
(1)現在、何にいくらくらいお金を使っているかの明細を出す
(2)(1)で挙げたものの中に、老後不要になりそうなものを引く
(3)老後、新たに必要となりそうなものとその金額目安を新たに足す
上記の整理をしてみると、老後、どれくらいお金が必要になるかが見通しやすくなるでしょう。また、今からでも老後に備える策としては、以下のような方法を使っている方もいらっしゃるようです。
1. 会社の財形貯蓄や銀行の自動積立定期預金をする
財形貯蓄や定期預金など、自分で決めた預金額が毎月自動的に給与振込口座から引き落とされるシステムは、「あればあるだけ使ってしまう」方にはおすすめの方法です。引落日を給料日に設定しておけばわかりやすいですね。
2. 個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」に加入する
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は、毎月一定の金額を定期預金や保険、投資信託といった形で積み立て、60歳以降に年金または一時金で受け取れる仕組みです。いってみれば“自分で作る年金”のようなもので、積立金額を所得控除の対象にできることから、節税にもつながるというメリットがあります。
3. 老後も続けられる仕事の“タネ”を探す
上記のような貯蓄策と平行して、「老後も仕事を続けて収入を得たい」と考えている人もいるようです。
「現在は会社員ですが、趣味でやっている料理の腕をさらに磨いて、自宅でクッキングスクールを開設するのが目標です」(WT 40歳)
「現在、スポーツクラブでスタッフの仕事をしている私は、高齢者が増えることを想定して、健康運動指導士の資格を取得。老後は同世代の方々の体操指導などを公民館でするのが夢」(AS 42歳)
このように、現在自分の特技としていることを収入につなげていけるように準備をする、というのもひとつの手段といえますね。
貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
今から5年10年、と年単位で準備を
煩わしい人間関係も少なく、自由を謳歌できそうな、“おひとりさま”生活。しかし、土台となるお金をきちんと管理していかなくては、なかなか望み通りの暮らしを実現することは難しくなるのかもしれません。
今一度、お金の管理や運用、将来の「働き方」「暮らし方」について、計画表を作ってみましょう。まずは10年単位で希望する生活水準を想定し、今度はそれを実現するために1年単位、1カ月単位、さらには1週間単位で具体的な目標を立てる…こうした現実感を伴う将来設計を今からしておくことで、日常的に「あたりまえ」になっていた無駄遣いに気づいたり、節約術を考えたりと、お金との向き合い方も変わってくるのではないでしょうか。思い描くとおりの老後を迎えられるよう、準備を始めましょう。
【参照】
金融庁「高齢社会における資産形成・管理(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)」金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
厚生労働省年金局「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(https://www.mhlw.go.jp/content/000578278.pdf)」
総務省統計局「家計収支編2019年(令和元年)平均結果の概要(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2019.pdf)」家計調査報告
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