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結局、日本は「国際金融ハブ」になれない?中国に操られる香港の行く末

LIMO / 2020年8月2日 18時45分

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結局、日本は「国際金融ハブ」になれない?中国に操られる香港の行く末

東洋と西洋両方の文化、情報、金、人、モノ、パワーを持ち合わせた香港は、世界経済の重要な役割を担ってきました。

しかし、中国は6月30日、香港から「一国二制度」に守られてきた民主主義を奪い、「国家安全維持法(国安法)」を施行することなりました。それによって香港はどのように変わるのでしょうか。また、香港の「国安法」施行は日本にどんな影響を与えるのでしょうか。

言論の自由の制限

香港はアジアの金融とジャーナリズムの中心として、様々な国籍の人材が集まる活気に満ちたユニークな場所でした。しかし、「国安法」が施行されたことで、中国を批判するような事を言えば、国家の安全を害する言動とみなされ、市民だろうが、外国人だろうが最悪は無期懲役という刑を科せられることも有り得るということです。

これには多くの外国企業や外国人駐在員も警戒し、香港から脱出することも検討しているそうです。早速、ニューヨーク・タイムズはデジタルニュース部門を香港から韓国ソウルに移転することを発表しました(※1)(https://www.nytimes.com/2020/07/14/business/media/new-york-times-hong-kong.html)。

国安法は自由なジャーナリズムを最も嫌うようです。既に同社の記者の1人は、就労ビザの更新を拒否されたということです。中国当局は2月、米中外交的な問題も絡み、米メジャー紙の記者達を本土から追い出し、香港でも自由な報道はさせないと言い渡したということです。

国際金融ハブを狙う日本

その他では、香港のアジア国際金融ハブとしての地位を危ぶむ声もささやかれています。そんな中、日本では香港に代わりアジアの国際金融ハブを目指すという取り組みがすすめられているようです。

日本は、2017年に「国際金融都市・東京」構想を策定しました。その取組の1つとして、「海外の金融系企業や有能な人材が惹きつけられ定着するよう、金融系企業に対する税負担の軽減を検討するとともに、金融系行政手続の相談体制及び英語化対応の強化、生活環境整備などを推進」(※2)(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/11/10/06.html)していくことを掲げています。

香港の「国安法」施行は日本の「国際金融都市・東京」構想の実現には都合が良いと言えるかもしれません。香港脱出を考えている外国金融企業や外国人人材を日本に誘致するチャンスです。

もし、国際金融都市化が実現すると、高給の職種も増えることになり、経済波及効果は約16兆円と言われています(※3)(https://r.nikkei.com/article/DGXMZO51158710Y9A011C1L83000)。金融系専門職の日本人にとってはキャリアアップのチャンスでしょう。しかし、極端に高給な職種や外資金融企業が増えると、一部の地域では家賃高騰や、他の国際金融都市のように、収入格差が拡大することも考えられます。

日本は外国人に不人気?

専門家の間では、「香港に代るのは東京ではなくシンガポールだろう」というガッカリな意見が多くみられます。法人と富裕層にとっては、シンガポールの税制は魅力的だからです。それに比べ日本の税制や規制は企業や富裕層にとって最悪。外資金融企業が敬遠する最も重要な原因の1つとなっています。

また、外国人材を集めるにしても、日本は働く場所として外国人からの評判はよくないようです。英HSBCホールディングスが2019年、外国で働く世界中のビジネスパーソンを対象に「各国の駐在員が働きたい国ランキング」(※4)(https://www.expatexplorer.hsbc.com/survey/)を公開し、なんと日本は33カ国中32位という残念な結果でした。

収入や仕事生活バランスは最悪の33位。子育て環境についても、学習環境や友達作り等を含め総合的に最下位の33位となりました。

香港は国際金融ハブとしてさらに強化?

今後のアジアの金融ハブがどこになるのかと憶測が飛び交うなか、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(※5)(https://jp.wsj.com/articles/SB12198070967903604140304586525542184441496)では、中国当局が「クロスボーダーの資金移動がより容易になるよう」香港を支援し、香港の国際金融ハブとしての地位を低下させるどころか、より強化させていく姿勢を示していることを取り上げています。

実際、中国本土のハイテク大手企業が次々と香港で重複上場したり、中国本土の企業案件が増え、香港の金融機関は巨額な利益を得ているということです。同紙は「最近の香港金融セクターのパフォーマンスは、中国当局と歩調を合わせることがいかに恩恵をもたらすかを示している」と述べています。

また同紙では、「香港に深く根ざしているグローバル金融機関は、すでにビジネス環境の変化に適応している」と述べています。さらに、今後も多くの中国ビジネスを獲得するため、本土の企業や富裕層客に対応できるよう、標準中国語を話す「中国人の採用を強化」していると指摘しています。

「国安法」施行による香港の新たな立場は、実は金融業界にとっても「中国ビジネス拡大のチャンス」とみられているようです。残念ですが、日本がアジア国際金融ハブになる可能性は少ないということでしょうか。

結局、中国は国にとって好ましくない報道機関を締め出し、経済強化を支える金融機関とはWIN-WINの関係を築き、「国安法」を都合よく使い分け香港を操っていくつもりなのでしょう。今後の中国と香港の動向に注目していきたいです。

参考

(※1)The New York Times“New York Times Will Move Part of Hong Kong Office to Seoul”(https://www.nytimes.com/2020/07/14/business/media/new-york-times-hong-kong.html)
(※2)『「国際金融都市・東京」構想の策定について』東京都(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/11/10/06.html)
(※3)『東京「国際金融都市」への課題は 識者3人に聞く』日本経済新聞(https://r.nikkei.com/article/DGXMZO51158710Y9A011C1L83000)
(※4)HSBC“A unique insight into how expat life differs across the globe”(https://www.expatexplorer.hsbc.com/survey/)
(※5)「金融ハブ香港、さらなる発展狙う中国の思惑とは」THE WALL STREET JOURNAL(https://jp.wsj.com/articles/SB12198070967903604140304586525542184441496)

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