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急成長したカーシェア、コロナ禍で一転して斜陽産業に?

LIMO / 2020年8月1日 11時0分

急成長したカーシェア、コロナ禍で一転して斜陽産業に?

急成長したカーシェア、コロナ禍で一転して斜陽産業に?

10年連続の減少となった日本の人口、都心部への人口集中傾向も顕著に

総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によれば、最新※の日本人住民の人口(「日本人」を指します)は10年連続減少となる1億2,477万人でした。人口減少は今さら驚くことではありませんが、改めて将来の人口減少社会に危機感を持たずにはいられません。

※平成31年1月1日付、令和2年は遡及修正中の模様

人口の減少が続く中で、地方都市の減少ペースが加速し、都心部へ集中する傾向が見て取れます。今回の調査で人口が増加した都道府県は、東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、沖縄の6都県でしたが、出生数が死亡数を上回って増加となったのは沖縄県だけでした。つまり、残り5都県は「転入>転出」によって増加しているのです。

また、人口増加には至りませんでしたが、大阪府や福岡県などでもこうした傾向が見られます。さらに、この傾向はここ数年続いていることにも注目していいでしょう。

有望な成長事業の1つとして注目されてきたカーシェアリング

こうした都心部への人口集中で注目されてきたのが「シェアリングエコノミー」です。

シェアリングエコノミーとは、物・サービス・場所などの経済価値を多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組みのことです。ザックリ言えば、“貸し借りを推進する経済”でしょうか。私たちの身近で代表的なシェアリングエコノミーが図書館であり、これはブックシェアリングになります。

そのシェアリングエコノミーの中で、今後の高い成長率が見込めるビジネスの1つとして注目されてきたのがカーシェアリングです。

カーシェアリングとは、自動車を共同利用するシステム。自動車を所有しないという点ではレンタカーと同じですが、カーシェアリングはレンタカーより1回の使用時間が短く、使用頻度が高いことが想定されています。簡単に言うならば、クルマを所有しなくてもクルマを利用できるシステムということでしょう。

海外では、国土面積の小さい先進国などで普及が進み、近年では典型的な自動車社会である、あの米国でも徐々に普及しています。

都心部でクルマを所有することは想像以上にコストがかかる

高級消費耐久財であるクルマは、購入価格が高いだけでなく、その後の維持・保有コスト(税金、保険料、駐車場代、車検代、修理補修代、燃料コストなど)も負担になります。クルマをお持ちの方、あるいは、過去に持っていたという人ならば納得していただけるはずです。

カーシェアリングは、その運営企業の会員になれば、一定額の費用(固定費と使用実績に応じた使用料)を払うことで、こうした膨大な費用を負担することなくクルマを利用できるのです。この支払料金は、レンタカーを借りるよりも割安になることが知られています。

特に、都心部でクルマを所有するということは、想像以上に費用がかさみます。駐車場代は地方都市に比べて圧倒的に高く(ゼロが1個多くなります)、ガソリン価格もかなり割高です。さらに、地下鉄など公共交通網が充実しているため、利用頻度も低くなると見られます。

こうした点からも、今後は日本でもカーシェアリングが有望と考えられていましたが、現時点ではどうなのでしょうか?

カーシェアリングの市場規模は直近10年間で爆発的な成長だが…

結論から言うと、カー・シェアリングは急成長しています。全国のカー・シェアリングの車両台数と会員数の推移を見ると、以下のように急拡大しています。

2006年:118台、1,712人

2010年:1,265台、15,894人

2015年:16,418台、681,147人

2017年:24,458台、1,085,922人

2018年:29,208台、1,320,794人

2019年:34,984台、1,626,618人

2020年:40,290台、2,046,581人

注)毎年3月調べ。2014年以前は毎年1月調べ。

特に、人口減少が鮮明となった2010年以降の拡大ペースが顕著であることが分かります。そして、登録会員もついに200万人を突破しました。実際には、これら会員全員がカーシェアリングを利用しているわけではないようですが、今後の活用に高い関心を持っていると考えられます。

“クルマを所有するのは大変だけど、クルマは何かと便利だ”という人には、最適なシステムなのかもしれません。

新型コロナでカーシェアリングは大きく減退する懸念

さて、順風満帆に見えるカーシェアリングですが、一連のコロナ禍を経た現在、今後の見通しはどうでしょうか。様々な見方があると思いますが、筆者は成長性が大きくスローダウンする可能性が高いと考えます。

それどころか、場合によっては、斜陽化する可能性も排除できません。

在宅リモートワークの普及で都心部→地方都市への人口移転が進む

最大の理由は、在宅リモートワークの普及・定着です。これにより、“仕事(働き口)があるから都心部に住む”という、冒頭に記した都心部への人口流入トレンドが根本的に変わってくるでしょう。さらに、このトレンドの巻き戻しが起き、都心部から地方都市への人口流出が増えるケースも十分に考えられます。

地域にもよりますが、地方都市ではクルマは生活必需品であり、所有する意義は格段に大きくなります。また、クルマの維持費も圧倒的に安く、仮に、地方都市の不動産価格が上昇したとしても、クルマの維持費(主に駐車場)の上昇分は限定的なはずです。

少し極論になりますが、物価の安い地方ではカーシェアリングなんか必要ありません。

ウイルス感染予防でカーシェアリングを敬遠する可能性

また、感染予防という観点でも、カーシェアリングを敬遠する人が増加する可能性があります。確かに、誰が使用したか分からないクルマを使うのには抵抗感がありますし、使用の度にカーシェアリング管理会社が全てのクルマに消毒・殺菌作業を実施するのは不可能に近いものがあります。

さらに、「Go To トラベル」施策は導入されたものの、外国人旅行者も含めた観光需要は壊滅的で、当面は大きく回復する見込みはありません。加えて出張の減少も当分続くでしょう。こうしたことを勘案すると、コロナ禍はカーシェアリングに強い逆風になると考えていいのではないでしょうか。

一方で、収入の減少が続くために高級消費耐久財への出費が抑制されることや、そもそも外出する時間が減ることを踏まえれば、クルマの所有意欲が戻ってカーシェアリングの利用が激減するとは考え難いものがあります。

こうした消費者の需要の変化に対し、カーシェアリング事業者のみならず、自動車メーカーや地方自治体がどう対応していくのか注目したいと思います。

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