現金もプラスチックカードも消えていく…「バーチャル・アカウント・カード」とは何か
LIMO / 2020年8月7日 20時0分
現金もプラスチックカードも消えていく…「バーチャル・アカウント・カード」とは何か
読者も財布の中に1枚はお持ちであろうクレジットカード。これはプラスチック製のカードで、現金と一緒に財布に入れておくのが普通です。筆者はキャッシュレス推進派で、なるべく現金を持たないようにしていますので、財布は持たずクレジットカードはスマホケースのカード入れに入れています。
いずれにせよ、物理的なカードは携帯しているわけですが、もうそろそろカード自体が不要になるだろうという動きがあります。
ちなみに筆者は、デバイス内に格納できるアップルペイとかモバイルSuicaがキャッシュレスでバーチャルだ、ということを言いたいのではありません。その決済インフラであるクレジットカードというプラスチック固形物が物理的になくなる可能性を言いたいのです。
バーチャル・アカウント・カードとは?
筆者は米国のコンサルティング会社から相談を受けることがあります。回答時間10分程度の簡単な調査に協力することもあります。回答費用は大したことありませんが、しっかり謝礼が支払われます。
日本でも、さまざまな調査やアンケート等への回答に薄謝進呈するケースがあります。千円程度であれば、プリペイドカードや商品券等で支払いを受けるのがほとんどでしょう。
米国の場合、従来は振込やペイパル決済が多かったのですが、最近は「バーチャル・アカウント・カード」(以下、VAC)が多く使われているようです。
このVAC、日本では今のところあまり馴染みはありませんが、シンプルかつ先進的な仕組みです。簡単に言うと、支払者が現金を送る代わりに、サーバー上に開設した受取人の”仮想デビットカード”に入金するというものです。
たとえば、筆者から読者に1万円の謝礼を払うとします。筆者は読者の個別番号が割り振ってあるVACに1万円の入金登録をします。その後、読者がウェブ上でそのVACホームページにログインすれば、筆者からの謝礼1万円が利用可能な残高として入金登録されているというわけです。
読者は筆者から1万円を受け取るために金融機関に出向くこともなければ、ハンコを押す必要もありません。この受取手続きは、スマホやPCでものの2分もあれば十分です。
筆者の場合、調査謝礼などを受け取るのに米国マスターカード社のサービスを選択しましたが、同社はVAC番号を自動的に採番します(下の画像は実際の筆者VAC画面)。
どうやってVACを使うか
もっとも、実際に筆者がVACで支払いを受ける相手は米国のコンサルティング会社ですから、調査料は米ドル建てで入金されることになります。
では、この入金された米ドルをどうやって使うのでしょう。よくできたもので、このVACはオンライン取引であれば、ほぼ何にでも使えます。
筆者は試しに、5000円相当分(約48ドル)のアマゾンギフト券をこのVACで購入しました。購入後、VACからアマゾンへの支払いとして48ドルが引き落とされます。
後で気づきましたが、わざわざギフト券に交換する必要はなく、何かを購入する場合にはそのVAC番号で決済すればアマゾンが自動的に円建ての価格をドル決済にしてくれます(ただし為替手数料は3%程度と高い!)。
また、アマゾン以外でもオンライン決済が可能なECであれば、基本的にどこでも利用可能です。これは通常のクレジットカード決済と変わりません。
ただし、VACには利用できる金額と有効期限の縛りがあるので、通常のクレジットカードのようにカード会社が自動的に有効期限を継続してくれることはありません。VACの有効期限は半年程度ですから、すぐ使わないと無効になってしまいます。早期に消費を促すインセンティブとしては、優れた手法かもしれません。
キャッシュレスからカードレスへ
VACでは決済が即時に行われ、所有者の信用力によって決済金額の上限が上がったり、決済期間に猶予が与えられたりするわけではありません。しかしながら、VACは銀行口座やリアルなクレジットカードを持たなくても、資金授受ができることを示しています。
ユーザーの立場から言えば、同じ発行会社の異なるVACが統合できないこと、全額を使い切るのは難しいこと(小銭がどうしても余る)、外貨(米ドル)決済した場合は為替手数料率が高いこと等、非効率な点があるのは事実です。それでもなお、リアルなプリペイドカードや商品券よりVACの利便性に軍配が上がります。
VACとは異なりますが、日本でもバーチャルプリペイドカードが使われています。こちらは完全オンライン化したバーチャルというよりも、リアルなカードを前払いで買う形式ですが、いずれVACが広まっていくかもしれません。
そうなると、プラスチックのクレジットカードもVACのように全てオンライン化され、保有者はクレジットカード番号をいずれかのデバイスに記録しておけば、どこでも使えるようになるでしょう。実際、アップルペイやペイペイの決済機能はクレジットカードが担っていますが、いったん登録しておけば次回の有効期限までカード自体を見ないこともあり得ます。
筆者の生活圏では、ほぼキャッシュレスで事足りるようになっています。それでも、全てのお店でオンライン決済ができるわけではありません。カード決済の場合カードを決済端末に挿入するというひと手間がかかるお店もまだ多数あります。
しかし、気がつけばキャッシュレス化、さらにはカードレス化が拡がって、好むと好まざるとにかかわらず現金取引はどんどん縮小していくでしょう。30年以上前に就職した銀行での新人時代に、日銀からの札束を特大ジュラルミンケースで運んでいた頃が懐かしい今日このごろです。
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