日本の労働生産性を低くする理由の1つは、「助け合い精神」
LIMO / 2020年8月12日 18時45分
![日本の労働生産性を低くする理由の1つは、「助け合い精神」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_18726_0-small.jpg)
日本の労働生産性を低くする理由の1つは、「助け合い精神」
労働生産性向上に必要なこととは
日本は諸外国と比べて、労働生産性が低いことが課題とされています。
日本生産性本部(※1)(https://www.jpc-net.jp/research/detail/002731.html#:~:text=%E4%B8%AD21%E4%BD%8D%E3%80%82-,OECD%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8F2018%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%99%82%E9%96%93,%E4%B8%AD21%E4%BD%8D%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82)の調査によると、日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は46.8ドル(4,744円/購買力平価(PPP)換算)で、OECD加盟36カ国中21位と先進国中最下位です。しかし、日本の人材スキルやテクノロジーが低いとは思えません。近年ではスーパーコンピューターの開発分野において、「富岳(ふがく)」は世界一に輝いたばかりです(※2)(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61024880R00C20A7TJN000/)。
それでは日本企業の労働生産性を低くしているのは、一体何か?その正体は文化的なものによると考えています。
「残業する人の仕事を手伝う」が労働生産性を下げる
日本の中小企業に見られる光景として、「残業している人の仕事を早く終わった人が手伝う」という光景です。
一見すると美しい思いやり、助け合い精神のように見えますが、その実労働生産性を下げてしまう危険な行為だと感じます。助けてもらっている側は業務効率が悪くても、ダラダラ仕事をしていても周囲が助けてくれるのが常態化することで改善する機会は永遠にやって来ません。
また、最初はスパスパ効率的に仕事をさばいていたスタッフも、「どうせ頑張っても仕事が遅い人を手伝うことになるから」と、仕事をしているフリをして退社までやり過ごすという光景があります。
そうなると、ドンドン全体の労働生産性は低くなる一方ですから、負のスパイラルを止めなければ、いつまで経っても生産性は低いままなのです。
「そうはいっても、特定の人に膨大な仕事が集中し、結果として残業になるケースも有る」
と反論があるかもしれません。しかし、これも助け合いをすることが労働生産性を下げる要因になる可能性があります。
特定の人だけが残業をしている状態が続けば、「残業削減の必要があるのでは?」とメスが入り、そこで業務分担の見直しが図られたり、効率アップにつながる施策が出るのではないでしょうか。
ブラック企業は労働生産性が低い
誰もが絶対に入りたくないと考える、「ブラック企業」ですが個人的にこの手の企業はすべからく労働生産性が低いと感じます。
ブラック企業の定義は、「残業が多い」「休日出勤がある」ということではなく、「労働に対する相応の対価を支払わない」だと考えます。忙しい業界で残業が多くても、きちんと残業代が満額支給され、36協定が遵守されているならその会社はブラック企業とはいえません。
そうではなく、サービス残業、持ち帰り残業、サービス休日出社がブラック企業だと思うのです。つまりブラック企業の経営者は、従業員の労働力を使い放題です。労働生産性を高める必要はなく、現場で助け合いをして全体的な業務効率が悪くてもメスをいれるインセンティブが働きません。
残業代を支払わないなら、毎日従業員が定時に帰るより、可能な限り長く働かせる方が経営者も得ですから、さばききれないほどの業務を振り、抜け駆けして退社する人に「早く終わったなら頑張っている人を手伝いなさい」となりますから、ますます労働生産性は低くなる一方です。
労働生産性を高めるために必要なのは「解雇」
このようなことを言うと、思い切り批判されてしまうかもしれませんが、個人的には労働生産性を高めるためには、あまりにも守られ過ぎな正社員の雇用を見直すことが必要だと感じます。
過去記事「日本で「ブラック企業」を生み出しているのは経営者ではない!?その理由とは 」(https://limo.media/articles/-/17688)で書かせていただいたのですが、日本の正社員は法によって過剰に守られており、雇用したら最後、会社にとって雇用コストがリターンを上回る構図でも簡単には解雇が出来ません。それにより、「窓際族」「追い出し部屋」のような日本独自のガラパゴスビジネス慣習が生まれているものと考えます。
米国においては、日本より圧倒的にカジュアルに解雇されます。しかし、解雇されることが必ずしも悪いことではなく、解雇された本人は労働生産性を高める努力を怠らず、また自らの適正に合う仕事を模索することになりますから、雇用機会の最適化が図られることになります。
労働生産性が低くても問題にならず、それをアシストさせられる有能な人が割りを食う構図の方が問題だと思いますから、正社員の雇用制度を見直し、能力にあった適正な仕事に就ける機会を増やすことが本人にとってもメリットになると考えます。
参考
(※1)「労働生産性の国際比較2019」日本生産性本部(https://www.jpc-net.jp/research/detail/002731.html#:~:text=%E4%B8%AD21%E4%BD%8D%E3%80%82-,OECD%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8F2018%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%99%82%E9%96%93,%E4%B8%AD21%E4%BD%8D%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82)
(※2)「国産スパコン「富岳」が世界一、使いやすさアピール」日本経済新聞(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61024880R00C20A7TJN000/)
外部リンク
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