「公務員の老後は安泰?」自営業から見た退職金のイメージとは
LIMO / 2020年8月14日 20時45分
![「公務員の老後は安泰?」自営業から見た退職金のイメージとは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_18762_0-small.jpg)
「公務員の老後は安泰?」自営業から見た退職金のイメージとは
毎年、公務員のボーナスシーズンが訪れると「どんなに不況でもボーナスがでるなんて公務員や国会議員はズルい」などという話を耳にします。
クビになる心配がなく、安心して定年まで働けるという印象が強く「勝ち組」などといわれる公務員。
さらに「退職金をたくさんもらっていそう」というイメージから何かと目の敵にされがちな仕事ですが、実際に働いている方々の中にはイレギュラーな仕事に耐えながら毎日身を粉にして働き、世間が思っているような「優雅な公務員生活」とは程遠い生活を送っている人もいるようです。
「安定=のんびり」というイメージ
50代のEさんは長年続けているスポーツジムで仲のいいお友達が二人いるそう。一人はご主人が地方公務員だというTさん。会社員の妻であるEさん同様、専業主婦としていつも遅くまで働く夫の代わりに、家のことをすべてやってきていたそうです。この方とは生活水準の感覚が似ていることもあり、共通の話題も多かったそう。
二人とも、生活に困ることはありませんでしたが「夫がめちゃくちゃお給料を貰っている」という感覚もなく、むしろ夫の拘束時間を考え計算してみると、時給としては決して高い金額ではないと思っているところもそっくり。「民間もお役所も同じようなものなんだね」なんてよく話をしていました。
一方、ご主人が自営業というYさんは明るく社交的な性格で、彼女は二人をいつも誘うタイプの人でした。時折ご主人のお仕事を手伝う彼女はグルメやトレンドにも詳しく「新しくできたお店でランチをしよう」というのはいつもYさんでした。そんな三人の間に、少しハラハラする出来事がおこったそう。
「いつものように、ジムの帰りに夫の愚痴話で盛り上がっていたのですが、Tさんが『もうちょっとしたら夫も定年になってしまうのが不安』と一言呟いたんです。私は『家にずっといられるのは憂鬱だね』なんて笑って反応したのですが、Yさんが『いいよね、私たちの税金でこれから先働かないで優雅に暮らせるんだから』と、突然なんともとげのある一言を発したんです」
続けてYさんは「私の家は定年なんてないから、死ぬまでずっと働き続けなくてはいけない。のんびり働いてきて老後は安泰なんてやっぱり公務員は最強だわ」と少々嫌味な発言をしたというのです。
公務員は退職金をもらいすぎ?
厚生労働省の「平成30年(2018年)就労条件総合調査 結果の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html)」によると、2017年度退職者一人当たり平均退職金給付額(勤続20年以上かつ45歳以上)は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)が定年した場合、平均1983万円支給されるとのこと。一方、地方公務員の退職金ですが、総務省「給与・定員等の調査結果等(2019年)(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/teiin-kyuuyo02.html)」をもとに計算した結果、47都道府県の全職種の60歳定年退職者の平均支給額は2210万円でした。比較してみると、確かに数字としては公務員の方が高い数字ではあります。
ただ、民間企業で働く人の多くは「公務員はボーナス貰いすぎ」「退職金多くて羨ましい」と思うことがあるようで、その結果Yさんのような自営業を営む人からみると「うちは退職金なんてないからズルい」という思想になってしまったようです。
派手さはなかった公務員生活
Yさんの発言にムッとした表情のTさん。二人きりになると、Tさんはぽつりと本音を漏らしたといいます。
「夫は景気がいいときも悪いときも同じように仕事をしてきた。自営業の彼女が接待といいながら自分も飲食を楽しんでいるときだって、夫は公平な仕事をするためにそういうものとは一切縁のない生活を送ってきたの。急な異動や転勤で子供だって転校をしたこともあった。終電ばかりで体調が心配なことだってあったし、公務員というだけで「楽」だったなんてどうしていえるのかしら」
Tさんの言葉に、Eさん自身もどこか民間企業よりのんびりした風土を想像していたことに気が付きハッとしたそうです。Tさんから若いころ転勤の連続だったこと、周りが家を建てる中いつも官舎で暮らしてきたことなど話に聞いていたはずなのに、どこかで「退職金もたくさんもらえるんだし、それくらい」という意識があったかもしれない、と思ったそうです。
どんな仕事に就くかは選択できたはず
「景気がいいときはYさんのような自営業の家庭に憧れたこともあった」とTさんは語っていたそうです。しかし、景気に左右されず、自分の仕事に誇りを持っているご主人を信じここまでやってきたとのこと。それは民間企業で働くEさんのご主人も同様で、組織に所属することのメリット・デメリットを理解し、選択してきたということを改めて考えるきっかけになったようです。お互い、隣の芝生は青く見えます。しかし、自分が旨味を味わったものというのは意外とすぐに忘れてしまいがちです。
「ズルい」と思う前に、自分はどのような選択をしてきたか。発言の前に一度思い返すことで、相手を不快にさせないことにつながるのではないでしょうか。
【参照】
厚生労働省の厚生労働省「「平成30年(2018年)就労条件総合調査 結果の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html)」平成30年(2018年)就労条件総合総務省「給与・定員等の調査結果等(2019年)(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/teiin-kyuuyo02.html)」
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