「冷凍餃子も手抜き?」ポテサラ老人やから揚げ夫…あとを立たないその理由
LIMO / 2020年8月19日 20時15分
「冷凍餃子も手抜き?」ポテサラ老人やから揚げ夫…あとを立たないその理由
2020年7月上旬にSNSで起こった、いわゆる「ポテサラ論争」をご存じですか?スーパーのお総菜コーナーで幼児連れの女性が高齢男性から「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」といわれているのを目撃した女性の投稿をきっかけに、高齢男性に対してさまざまな意見が飛び交いました。
その後、同じくSNSで「冷凍餃子は手抜き」と夫にいわれた女性の投稿や、テレビのインタビューで「から揚げは手抜きだと思う」と妻の横で答える男性の映像などが流れると多くの女性たちから怒りの声が。
こういった世代や男女による価値観の違いはなぜいつまでたっても起こるのでしょうか。
手作り神話と「こうすべき論」
ポテサラ論争の際、最初に話題となったのが「ポテトサラダは簡単かどうか」という問題でした。男性が「潰して混ぜるだけだろう」と考えるのに対し、「ジャガイモを茹でて皮をむく手間、お芋以外の食材を切って混ぜる面倒くささなどを知らない」と意見が対立。大変さを分かっていないことへの怒りがまずあがりました。
そして、次に話題となったのが「知らない人に対していきなり失礼なことをいう」態度。そして、相手の事情を知らないにもかかわらず「母親ならこうするべき」という自分の価値観を押し付けたことへの批判も多数集まっていたように思います。
多様化が進む現代社会において「そうであれば、こうすべき」という意見は相手を傷つけることも多く、違った事情や背景を持つ人に対して思いやりや配慮が欠けているのではないか、という点が多くの人の感情を逆なでしたとも考えられます。
厚生労働省が発表した「専業主婦世帯と共働き世帯の推移(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000118655.pdf)」によると、昭和55年頃には共働き世帯の倍ほどいた専業主婦も、今や逆転し専業主婦は共働き世帯の約半分。当時は仕事を持たない主婦も多く比較的時間にも余裕があったり、スーパーのお惣菜がそれほどまで普及していなかったため「作るのが当たり前」という感覚だったのかもしれません。
また、「手作りこそ母の愛情」という神話を信じ、そんな姿こそ当時の多くの人が思い描いた母親像だった可能性も。高齢男性にとり、ポテサラを購入しようとした女性は自分の知る母親とかけ離れていたため、それを受け入れることができなかったという可能性もあります。
コロナ禍で需要の伸びた冷凍食品
そして、昭和の時代にはまだまだここまで発展していなかったものの一つに冷凍食品もあげられます。ポテサラ論争後、とある女性が食卓に冷凍餃子を出しお子さんが「おいしい」と喜んだところ「これは手抜きだよ」と夫がお子さんに言い放ったという話をSNSに投稿。こちらも多くの物議をかもすこととなりました。
これには、冷凍餃子を扱う味の素冷凍食品の公式Twitterが反応。「冷凍食品を使うことは手抜きではなく手『間』抜きですよ」と母親たちにエールを送りました。工場という台所で母親たちに代わり野菜を切り肉をこね皮に包む。そのことで家事や育児、仕事に追われる母親たちが少しでも時間を作れるようにという企業の気持ちに、感謝の声などが聞こえてきました。
総務省統計局がまとめた「新型コロナウイルス感染症により 消費行動に大きな影響が見られた主な品目など(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_rf1.pdf)」によると、2020年6月の冷凍調理食品に対する支出金額は前年同月に比べ21.8%もアップ。通常の多忙に加え、今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で外食を自粛した結果などが重なり、自宅での食事が増加。母親たちへの負担が増えたことによるものとも考えられます。「誰かが代わりに包んでくれた餃子」を積極的に利用しながら、この難局を乗り切っている人がいかに多いかがわかるデータです。
やらない人だからこそでてくる発言
テレビを見ていた主婦たちを驚かせた「から揚げは揚げるだけの料理だから手抜き」という発言ですが、これを見た人たちは「この人揚げたことあるの?」という疑問がわいたといいます。いくらリビングのエアコンをつけたとしても、揚げ物をしていればその周囲は一気に温度が上がります。
そして、油の処理や油汚れの酷い食器の後片付けなど、これらの工程は「から揚げを作る」工程から見落とされているという見方も。これらは先に述べたポテサラや冷凍餃子にも共通する「経験したことがないからこそ想像がつかない」ことでしてしまう想像力が欠如した悪気ない発言なのかもしれません。
家族が笑顔になるための食卓は?
仕事と家事を両立する中で、母親が身を削りながら手作りにこだわり、へとへとになりながら提供する夕食と、多少単価やコストがアップしても、子どもと一緒にいる時間を確保し会話をしたり遊んであげる時間を作るゆとりが生まれる夕食。みなさんはどちらを選択したいでしょうか。
また、こういった話題になるとまだまだ「母親がごはんの支度をする」という前提になりがちです。しかし、冷凍食品や中食を上手に利用すれば、父親が夕食作りに参加するハードルもグンと下がります。やったことがないから理解できないのであればやってみる。そのことこそ、温度差を埋めるための第一歩になってくれるのではないでしょうか。
【参照】
厚生労働省「専業主婦世帯と共働き世帯の推移(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000118655.pdf)」
総務省統計局「新型コロナウイルス感染症により 消費行動に大きな影響が見られた主な品目など(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_rf1.pdf)」
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