なぜ今「フィリピン」なのか?世界中の投資家が注目する理由
LIMO / 2020年8月23日 18時45分
なぜ今「フィリピン」なのか?世界中の投資家が注目する理由
爆発的な人口増加をベースに、日本の高度経済成長と重なる勢いを見せるフィリピン。そんなフィリピンには今、世界中の投資家が注目しています。
本記事では、世界中から注目が集まる背景や、フィリピンの中でも特に成長が予測される市場・業界について、フィリピンの首都マニラで金融事業を中心に活動を行うS DIVISIONホールディングス(https://sdivision-holdings-inc.com/)のCEO 須見一氏にお話を伺いました。
なぜ今?フィリピンに注目が集まっている理由とは
――なぜ今フィリピンに注目が集まっているのでしょうか?
世界経済の予測をするときに考慮すべき指標はいくつかありますが、最も重要な指標の1つは「人口ピラミッド」。一般的に、人口が増えると、当然、消費も増えると言われています。例えば、人口が2倍になる国なら、単純計算で、何の努力もしなくても消費や企業の売上も2倍になる。このように人口は、国の将来を支える重要な要素になります。
それを踏まえてフィリピンを取り巻く状況を分析してみます。フィリピンの現在の人口は約1億700万人。国連の人口中位推計によると、2028年にフィリピンの人口は約1億2,300万人と日本を抜くとも言われています。
またフィリピンの人口増加は単純な人口増加ではありません。人口ピラミッドを見ると、きれいな三角形になっていることが分かります。これは若者の数が多いことを表し、国力を支える担い手が多いことを示しています。
――他にはどのような観点があるのでしょうか?
GDPの面からもフィリピンの成長度合いが伺えます。国力を表すと言われるひとり当たりGDPですが、フィリピンは2018年に3,000ドルを超えました。(出展:IMF)この数字は日本の1970年頃に相当し、著しく経済成長した時代と一致。一般的にもひとり当たりGDPが3,000ドルを超えてくると、少しずつ豊かになってくると言われています。
以上のことから、フィリピンの可能性が見えてきます。今のフィリピンは50年前の日本と同じ。日本とまったく同じ足跡をたどるかどうかは分かりませんが、少なくとも今後、大きく成長していくことが想定されます。
注目が集まる「コールセンター・アウト・ソーシング事業」
――フィリピンの中でも特に注目の集まっている事業はどのようなものでしょうか?
今、フィリピンで特に注目を集めている事業の1つがBPOです。
(BPO:企業活動における業務プロセスの一部を、企画から運営まで一括で専門業者に外部委託するもの)
フィリピンの一部にはBPOの特区があり、ここではBPOに参入してくる企業に対して、インターネット回線を太くする、参入してくる企業の税制優遇など、さまざまな優遇措置がとられています。
――なぜフィリピンでBPO事業に注目が集まるのでしょうか?
フィリピンでコールセンター事業が拡大している理由としては、フィリピン人の英語のクオリティが挙げられます。元々コールセンター事業はインドで多く展開されていましたが、インド人の使う英語には独特の訛りがあり、「聞き取りにくい」などの苦情が多かったのも事実。その点、フィリピン人の使う英語はとてもきれいで聞き取りやすい。
また、英語圏のコールセンター事業を引き受けることは、稼働効率がいいことでも知られています。なぜ英語圏は稼働効率が良いかというと、オセアニア時間、欧州時間、米国時間で仕事を回せるためです。3交代制にすることで、1席を24時間体制で動かすことが可能となります。
これらの理由により、多くの企業がフィリピンへのBPOを行っています。実際、我々のもとにも、外資系の大手企業などから業務依頼をいただいております。
また、2020年現在、世界の主要国の多くは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けて大混乱の中にあります。働き方の見直しから業務をアウトソーシングに切り替える企業も増えると見られ、同様の理由からコールセンターのBPOを推進する企業も増えると考えられます。
私がフィリピンで金融事業を始めた理由
――なぜ須見さんは、フィリピンで金融事業を始められたのでしょうか?
なぜ日本人がフィリピンで金融事業を行っているのかと考える方もいらっしゃるかと思います。私がフィリピンで事業を始めた際の中心事業は「マイクロファイナンス」でした。マイクロファイナンスとは、開発途上国の貧困層に対して小口融資を提供すること。従来のフィリピンではこのマイクロファイナンスが、月利50%を超えるような状況でした。
マイクロファイナンスでお金を借りる人々の多くは、主にフィリピンの市場(いちば)で商売を営む人たちです。フィリピンの市場では、畳一畳分のスペースの中で、肉屋や八百屋や洋服屋など、さまざまなお店が営業しています。小さなお店が集まって、ひとつの市場を形成しているのです。
商売継続のためにお金を借りるわけですが、月利50%では当然、返せない人も現れます。そうなると、貧困層特有の問題が浮き彫りになってきます。
フィリピンには、日本の高度経済成長期のようなエネルギー自体はあるが、それを支えるだけの十分な原資が国内にない。自立して働く環境も整っているとは言いがたい。この問題に着目し、私は市場の5分の1以下という低金利でお金を貸す金融事業を開始しました。
――須見さんが行う事業の特徴を教えてください。
私が行っているマイクロファイナンスは、単なる「低金利での小口融資」ではありません。どういうビジネス展開をすればよいのかをアドバイスしたり、彼・彼女らの代わりに商品を仕入れて、それを彼・彼女らに卸したりなど、「融資先と一緒に商売をする」というビジネスパートナーとしての対等な関係を築いています。
二人三脚でビジネスを軌道に乗せることで、無理なく資金を回収できる仕組みを構築しています。
現在私の取り組みは多くの市場にも知れ渡っており、ありがたいことに「うちも面倒見てほしい」とお声を多くいただき、現在では、警察官や国家公務員の給料を前倒しで貸し付けるサービスも提供しています。
フィリピンと日本の架け橋に
――最後に、今後の展望を教えてください。
日本は莫大な資本を持っていますが、私から見ると、国内には魅力のある投資先が多くはありません。これに対してフィリピンは、お金はないけれども、ポテンシャルの高いビジネスがたくさんあります。これは私がフィリピンで活動を行なって得た確信です。
だからこそ、日本の資金をフィリピンの発展のために使い、そこで得た高いリターンを日本に還元するという、日本とフィリピンの資本の架け橋になれればよいと考えています。
インタビュイーのプロフィール
S DIVISION HOLDINGS INC.(https://sdivision-holdings-inc.com/) CEO 須見 一(すみ・はじめ)
1979年大阪生まれ。トラック運転手を行なっていたが、自分の時間をお金に交換する仕事の限界に気付き、独学でIT開発会社を創業。アプリやシステム開発などを手がけ、最初の会社を年商12億円までの企業に成長させる。その後は家族との暮らしも考え海外に目を向け、32歳でフィリピン・マニラに渡る。2011年に現地で「S DIVISION」(https://sdivision-holdings-inc.com/)を創業。高度経済成長期のエネルギーを持ちながら国内に十分な原資がない不均衡にいちはやく着目し、マニラでマイクロレンディング(小規模融資)事業をスタート。フィリピンの金融リーディングカンパニーのCEOとして、活動を広げている。
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