日本人の即席ラーメン愛は不滅!? 過去最高の生産金額になった2019年度
LIMO / 2020年8月21日 18時20分
日本人の即席ラーメン愛は不滅!? 過去最高の生産金額になった2019年度
8月25日は「即席ラーメン記念日」
8月25日は「即席ラーメン記念日」です。これは、日清食品(注)の創業者である安藤百福氏が、1958年(昭和33年)8月25日に世界初のインスタントラーメンである「チキンラーメン」を発売したことに由来し、日清食品が「ラーメン記念日」として制定したもの。現在では「即席ラーメン記念日」として広く知られているようです。
このインスタントラーメンの開発については、2018年度後期(2018年10月~2019年3月)に放送されたNHK朝の連続テレビ小説「まんぷく」を通じて広く知れ渡ったのではないでしょうか。また、この年(2018年)は、世界初の即席ラーメンの発売60周年ということで様々な記念イベントも開催されました。
さて、即席ラーメン(=インスタントラーメン)を普段から当たり前のように食べている人も多いと思われますが、「即席ラーメンの日」にちなんで現在の市場状況を見てみましょう。
なお、一般社団法人「日本即席食品工業協会」及び日清食品の分類に従って、ここでは、「即席ラーメン=袋めん+カップラーメン+生めん」としています。
国内の即席ラーメン生産量は2018年度まで4年連続で過去最高を記録
まず、国内における即席ラーメンの消費量はどれくらいなのでしょうか。
前掲の「日本即席食品工業協会」が公表する生産データを見てみましょう。なお、国内で生産する即席ラーメンは、輸出向けは非常に少なく(2%未満)、また、それとほぼ同等量が輸入されていますので、実質的には「国内生産量=国内消費量」と見なしていいと考えられます。
その生産実績ですが、数量ベースでは近年、緩やかな増加傾向にあります。2018年度(2018年4月~2019年3月)実績は57億2千万食で、4年連続で過去最高となりました。4年連続で過去最高更新とは、やや意外な感じがするかもしれません。確かに、伸び率は微小に止まっていますが、即席ラーメンはまだ伸びています。
これは、即席ラーメンに占める割合が約69%(平成29年実績)のカップラーメンにおいて、新商品が次々に登場してくることが最大要因と見られます。ちなみに、袋めん(約30%)は漸減傾向にあり、生めん(約2%)も頭打ち傾向にあります。やはり、お湯を注ぐだけで食べられるカップラーメンの利便性が受け入れられているのでしょう。
2019年度は生産金額ベースで過去最高を記録
それでは、最新実績である2019年度(2019年4月~2020年3月)はどうだったのでしょうか?
結論から先に言うと、最後(3月)に予想外の急伸となり、微減に止まった数量ベースでは5年連続の記録更新はならなかったものの、金額ベースでは過去最高を大きく上回る約6065億円になりました。理由は単純明快で、一連の新型コロナウイルスの感染拡大懸念が大きな“追い風”になったためです。
実は、2019年度は最初から生産量の減少が見込まれていました。これは、前年(2018年度)の一時的な貢献(前述の朝ドラ「まんぷく」や60周年記念イベント等)が消失するためです。実際、2月実績までは数量は前年をやや下回る状況、金額は横ばいという状況でした。
しかしながら、コロナ禍の影響が一気に拡大した3月は、消費者による異常なまでの買い溜めや、それを見込んだ小売店の仕入増等に対応するため大増産となり、3月単月では数量ベースで対前年同月比+19.4%増、金額ベースで同+21.2%増の記録的増加につながりました。
その結果、前述の通り、2019年度の数量ベースは微減(対前年比▲0.1%減)、金額ベースは増加(同+2.2%増、過去最高を記録)となったのです。
ちなみに、この増産傾向は新年度になった2020年4月以降も続いており、とりわけ、4月は単月ベースでは過去最高の生産量・金額となっています。
即席ラーメンの数量以上に増加する生産金額
ここで注目したいのは、コロナ禍による想定外の押し上げ効果があったとはいえ、生産金額で過去最高を更新し続けていることです。ここ数年で見ても、数量ベースの増加以上に金額ベースが増加していました。これは、単純に考えれば、単価が上昇していることに他なりません。
その理由としては、高級タイプの増加や、カップラーメンの大サイズ化が要因と考えていいでしょう。確かに、コンビニやスーパーでは、びっくりするような大きいサイズのカップラーメンが陳列されています。
また、見逃せないのは、外食からのシフトです。実は、2018年度の時点で、即席ラーメンの生産金額は、過渡期にあると言われている外食産業のラーメンの市場規模(約6,000億円、推定値)に近づいていたと見られていました。
具体的な数値が出るにはもう少し時間を要すると思われますが、2019年度は外食のラーメン市場規模を上回った可能性が高いと見ていいでしょう。それどころか、飲食店の自粛がピークとなった4月以降、一気に形勢逆転となったのは確実です。
外食ラーメンからのシフトは加速するか?
では、コロナ禍が収束した後、再び街中のラーメン店に客足が戻るでしょうか。筆者は容易ではないと考えます。その大きな理由は、多くの消費者が改めて価格格差に気が付くと見られるからです。
外食でラーメンを食べた場合、高価なトッピングをしなければ、1杯700円くらいでしょうか(当然、食べるラーメンの種類にもよります)。しかし、家で即席ラーメンを食べれば、焼豚やメンマなど幾つかの具をのせても高々200円くらいで済みます。
もちろん、各店が創意工夫する手の込んだ味の外食ラーメンと即席ラーメンを比較するのは無理がありますが、既に“即席ラーメンで十分じゃないか”という人が増えているかもしれません。外食ラーメンを食していた人が、即席ラーメンにシフトしてくれば、即席ラーメンはまだまだ成長し続ける可能性は十分あるでしょう。
実際、即席ラーメンの味も年々進化しています。今回のコロナ禍によって、即席ラーメンの成長がさらに加速するのか注目したいと思います。
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