もうすぐ定年だけど、うちは大丈夫?60代世帯の貯蓄額はいくら?
LIMO / 2020年8月22日 19時50分
もうすぐ定年だけど、うちは大丈夫?60代世帯の貯蓄額はいくら?
定年がもうすぐそこまで迫っている世代にとって、気になるのが退職後の生活。公益財団法人生命保険文化センターが全国の18~69歳男女を対象に、平成30年4月6日~令和元年6月2日まで行った調査をまとめた「令和元年度 生活保障に関する調査(https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/r1hosho/2019honshi_all.pdf)」によると、自分の老後生活に「不安感あり」と回答した人の割合は84.4%となっており、多くの人が老後生活に対して何かしらの不安を抱えていることが明らかになっています。
また老後に対する不安の具体的な内容を見てみると、「公的年金だけでは不十分」が82.8%と、8割以上の人が年金に対して不安を感じているという結果が出ています。次いで「日常生活に支障が出る」「退職金や企業年金だけでは不十分」と続き、多くの人が老後のお金について強い不安を感じているという結果がみてとれます。
しかし、だからといって老後のための貯蓄状況や、年金額などについては周囲の人はもちろん、身内ともなかなか話しにくいですよね。今回は、定年後の60代世帯の人が一体いくら貯蓄しているのか、そして老後の収入源や貯蓄方法について考えていきましょう。
60代世帯の平均貯蓄額はいくら?
金融中央広報委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)(https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2018/18bunruif001.html)」によると、令和元年における60代の二人以上世帯の平均貯蓄額は、
平均値:1,635万円
中央値:650万円
ということが明らかになっています。平均貯蓄額は1,500万円をゆうに超える額ですが、ここで注目してほしいのは中央値が650万円だということです。中央値というのは、少ない方から順番にデータを並べたときに大体真ん中にくる値のことをいいます。
一般に貯蓄などに関する平均値というのは、一部の富裕層に平均値が引っ張られて実態とかけ離れてしまうことがよくあるため、「大体真ん中辺りの人」の貯蓄額として中央値が使われています。つまり、実際の貯蓄額は平均値以下という世帯も多いのが実情だということです。
よく話題にのぼる老後2,000万円問題。中央値で見るとなかなかそこに到達する貯蓄を持ち合わせていない世帯も多いように見えますが、そこに到達するために期待するのは退職後に受け取る退職金ではないでしょうか。
退職金で貯蓄をまかなえるのか?
2019年4月に発表された日本経済団体連合会「2018 年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果(https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/039.pdf)」によると、「管理・事務・技術労働者(総合職)」の 60 歳の標準者退職金は大学卒が 2,255.8 万円となっています。これだけ見ると、かなりの退職金を60代で受け取ることができ、貯蓄と合わせても余裕のある老後が過ごせるように思えますが、注意して欲しいのはこのデータは日本経済団体連合会に加入している企業が対象であり、大企業の退職金数値だということです。
日本の企業の97%は中小企業といわれていますが、中小企業の退職金は実際いくらなのでしょうか。
東京都産業労働局が行っている「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/chingin/h30/)」によると、定年時の退職金支給金額は大学卒で1,203.4万円です。また中小企業の25%は退職金制度がないということも明らかになっています。
勤めている会社によって、大きく変わる退職金制度。退職金頼みにしていると後々痛い目を見るおそれもあるため、退職金に頼らずに早め早めに老後貯蓄をスタートさせていくのが望ましいといえるでしょう。
老後の収入源について
金融中央広報委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)(https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2018/18bunruif001.html)」によると、老後の生活費の収入源のトップ3は、第一位が「公的年金」で79.1%、次いで第二位は「就業による収入」48.2%、そして第三位は「企業年金、個人年金、保険金」で38.4%の人が収入源として回答しています。
老後の収入源で、最も多かったのは公的年金で、約8割の方が公的年金を生活費の中心に捉えているということが分かります。しかしながら、10年後20年後、公的年金がいくら貰えるのか不安に思う人も多いのではないでしょうか。
公的年金の次は就業による収入で、約5割の方が収入源として捉えていることが分かっています。老後の貯蓄にあまり余裕がないという方は、定年まで働いた後に再就職を考えるということも一つの選択肢となるでしょう。それまでと同じ働き方とはいかないかもしれませんが、週に何日か働くことで、老後の不足金額を補充することができ、生活の安定にもつながります。また、働くことで貯蓄を切り崩さなくてすみ、精神的にも余裕が生まれるのではないでしょうか。
近年では定年も65歳に引き上げられ、また定年制度自体を廃止している企業なども見受けられます。さらに定年退職後にシニア枠として再雇用を実施している企業も少なくなく、働くことができる期間がどんどん長くなっています。再就職を検討している人は、早めに企業に相談してみてはいかがでしょうか。
賢く老後資金を貯めるためには
長い老後のためのお金を準備するのであれば、できる限り早めに老後貯蓄をスタートしコツコツと貯めていくことがおすすめです。ただ今は銀行預金で貯めていてもほとんど利子がつかず、賢い貯め方とはいいがたいですよね。
現在個人資産形成のために、iDeCoやNISAなど税制面で優遇されている制度を利用するのもいいでしょう。これらの制度を利用していない資産の運用益には20%の所得税がかかるのですが、iDecoやNISAは非課税なのが特徴です。またiDeCoは所得控除の対象となっており、働いている人にとっては節税対策としても有益な制度といえるでしょう。
いずれにしても、効率的に貯蓄していくためには工夫が必要です。簡単なところからいえば、毎月の生活で余った分を貯蓄しようというのではなく、先に貯蓄を行う先取り貯蓄へと変えていきましょう。自動的に、給与口座からお金が貯蓄へと引き出されるようなシステムを作っておくと、一定額をしっかりと毎月貯蓄することができます。
長い老後生活を有意義に送るために、今から賢く老後貯蓄を始めていきましょう。
【ご参考】
貯蓄とは 総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯 金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)へ の預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに 株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点 の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社 内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
【参照】
公益財団法人生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査(https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/r1hosho/2019honshi_all.pdf)」
日本経済団体連合会「2018 年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果(https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/039.pdf)」
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/chingin/h30/)」
金融中央広報委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)(https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2018/18bunruif001.html)」
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