夫婦同時の育休取得で大げんか…妻の怒りが爆発した夫の一言
LIMO / 2020年8月30日 10時0分
夫婦同時の育休取得で大げんか…妻の怒りが爆発した夫の一言
小泉進次郎環境大臣が取得したことで注目が集まった男性育休。しかし、本人が取得を望んでいても「会社に前例がない」と、会社側から拒否反応を示されるケースはたびたび耳にします。また、社内の「男が育休なんて」といったネガティブな雰囲気に飲み込まれてしまうこともあるでしょう。さらには、「実際に男性育休を取得した人が周りにいないから育休中が不安」といった意見も。
実は、筆者の周囲には妻の出産を機に1年間の育休を取得した男性が数人います。彼らの実体験から夫婦ともに育休を取得した場合の子育てを紹介します。
男性が簡単には育休を取得できない理由
厚生労働省の「令和元年度雇用均等基本調査」によると、2019年度調査での男性育休取得者の割合は7.48%でした※。2014年度の同調査ではわずか2.30%だったことからすると、少しずつ増加はしています。ただ、女性の同割合が近年はずっと8割台で推移していることに比べると、依然として低い割合であることは事実です。
※2017年10月~2018年9月に妻が出産した男性のうち、2019年10月1日までに育休を取り始めた人(育児休業の申出をした人を含む)の割合
今年4月に第一子を出産した筆者の友人Aとその旦那さんは、夫婦同時に育休をスタート。旦那さんは中小企業勤務で社内では初めてとなる男性育休取得者でした。結婚した2年前から“予防線”を張るように、同僚や直属の上司に「子どもが生まれたら育休を取りたい」と常々言っており、今回もAが安定期に入る前から上司に懇願して、なんとかして育休を取ることに成功したのだとか。
また、昨年夏に出産した友人Bとその旦那さんも夫婦同時に育休を取得。Bの旦那さんも男性の育休取得は社内初でした。会社は以前から男性社員に対して「実績作りのためにも、誰か育休取得してほしい」と言っていたそうです。しかし、社内に前例がゆえに育休の取得で家事育児に集中する生活のイメージが湧かなかったり、仕事のブランクが空くことへの不安を抱いたりして、これまで一人も取得したことがなかったのだとか。
そんな中、Bの旦那さんは徹底的に育休制度について調べたり、不安なことを総務に掛け合ったり、Bと育休中の生活費について話し合ったりして、具体的に育休を取得してから1年間のイメージを掴んでいきました。そこで自分自身で納得がいき、「きっと大丈夫だろう」という確信を得たことで、社内初の男性育休取得者として名乗りを上げたのだと言います。
Aの旦那さんもBの旦那さんも、ともに平成生まれ。育休を取得する前から、「男は仕事、女は家事育児」といった昭和的な価値観がほとんどありませんでした。もともと家庭にコミットしてきたからこそ、いざ子どもが生まれたら「乳幼児期は一瞬しかないのだから一緒に過ごしたい」「妻をサポートしたい」という強い気持ちと会社にかけあう行動力によって、育休取得が叶ったとも言えます。
一方で2人の実例からは、男性本人のそういった“条件”が揃わない限りは育休取得が実現しない現実も見えてきます。
夫婦同時育休でも、家事育児分担は妻7割・夫3割?
こうして、取得までになかなか高いハードルがあったものの、無事に夫婦同時に育休がスタートしたA夫婦とB夫婦。夫が育休を取得するはずもなく、子どもが産まれてからずっとワンオペ育児を担っている筆者からすると「なんてうらやましい!」と思っていましたが、実際に話を聞くとそんなに簡単には物事が進んでいないようなのです。
まず、A夫婦は産後すぐに危機がやってきました。出産直後からAの旦那さんは積極的に子どものオムツ替えや家事を頑張っていました。母乳とミルクの混合で授乳していたため、母乳はA、ミルクは旦那さんという役割分担で昼も夜も授乳を割り振っていたそうです。
夜間の頻回授乳が続いて睡眠不足に陥っていたAはある日、4時間ほど赤ちゃんを旦那さんに預け、リフレッシュしに1人でカフェに行きたいと申し出ました。その申し出を承諾した旦那さんですが、Aが帰宅すると不機嫌になっています。これまでは2人で1人の赤ちゃんを見ていたために精神的に余裕があったものの、初めて1人で数時間も赤ちゃんの世話と家事に追われたことで参ってしまったそう。
そしてさらに「こっちは苦労して育休を取ってやったのに、そっちが楽するのはおかしい」「僕はあくまでサポートなのだから甘えすぎるのは勘弁してほしい」と言われたのだとか。これにはAも憤慨し、一気に夫婦喧嘩へと発展してしまいました。
どうやらAの認識では、夫婦同時育休なのだから夫婦で50%と50%だと思っていた家事育児のパワーバランスが、旦那さんにしてみればAが70%、自分は30%だと思っていたそうなのです。
世代的に性別役割分担の意識が薄く、自ら希望して育休を取ったとしても、旦那さんの潜在意識の中には「女性の育休取得は当たり前だけど、男性の育休は苦労して取得したのだから自分は偉い」といった感覚が残っていたことに、Aはガッカリしたと振り返ります。そして「どのような分担割合なのか、夫がどういうスタンスなのかを産む前にもっと話し合うべきだった」と後悔もしていました。
張り切りすぎて妻に上から目線で育児指導してしまうケースも
また、徹底的に物事を調べるタイプなのが災いして夫婦仲に亀裂が入ってしまったのはB夫婦。Bの旦那さんは育児について、出産前からネットや育児本で知識を吸収していきました。それ自体はとても素晴らしいことですが、いざ産後に育児生活が始まると、ことあるごとにBの育児方法について「それはやめた方がいいよ」「もっとこうしないとダメだよ」と上から目線で指導するように。
もちろんBも旦那さんも育児初心者です。わからないことは2人で試行錯誤しながら乗り切ることが理想ですが、Bの旦那さんは張り切っていろいろなことを調べたことで、まるで「自分の方が育児を知っている」という態度でBに接していたのです。
「母乳で育てたい」というBの意向のもと完全母乳で頑張っていたBでしたが、1カ月検診で助産師さんから赤ちゃんの体重がなかなか増えていないと言われました。ミルクとの混合に切り替えるよう指摘され、少し落ち込んでしまったB。そんなBに対して旦那さんは「君の母乳の栄養が少ないってことなんだから、ミルクを飲ませればいいじゃん」と言ってしまいます。
この発言にBは激怒。これまでの上から目線の指導は「頑張ってくれているんだ」となんとか我慢してきたものの、まるで自分自身を否定されたような言葉を聞いて「じゃあ、もうあなたがすべてやってよ!」と怒りながら号泣してしまったそうです。
取得するまでの道のりや育休中の夫婦間コミュニケーションも男性育休の課題
妊娠、出産という大仕事を終えた後の妻は、心も体もボロボロの状態。夫が育休を取得して家事育児をサポートしてくれることで妻の心と体が回復し、夫婦2人で負担を折半しながら育児生活を送るのはとても理想的なことです。しかし男性育休の現実には、取得までの険しい道のりや育休中の夫婦間でのコミュニケーションなど多くの課題があります。
A夫婦とB夫婦の例からは、旦那さんがサポート役に回り過ぎてしまったり、妻の心身の負担を軽んじてしまったりして歯車がうまくかみ合わない様子がわかりました。日本にはまだまだ前例が少ないからこそ、今まさに夫婦同時育休を取って頑張っている人たちの失敗談は次世代にとってもとても貴重なもの。これから育休を取得したいと思っている男性には、こうした先駆者たちの経験を参考にしてもらいたいと思います。
【参考資料】「令和元年度雇用均等基本調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r01/03.pdf)」(厚生労働省)
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