「健康」は富裕層のもの?「ウェルネス産業」急成長の要因は「大衆化」
LIMO / 2020年8月30日 18時45分
![「健康」は富裕層のもの?「ウェルネス産業」急成長の要因は「大衆化」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_19003_0-small.jpg)
「健康」は富裕層のもの?「ウェルネス産業」急成長の要因は「大衆化」
近年人々の健康への意識が高まり、心身の健康状態を追求した活動やそれに関連するモノやサービスを提供するウェルネス産業が急成長を遂げています。The Global Wellness Institute(GWI)の2019年の報告(※1)(https://globalwellnessinstitute.org/press-room/statistics-and-facts/)によれば、2018年の世界市場規模は4.5兆ドル(約500兆円) 。
特に、富裕層をターゲットにしたスパやウェルネスツーリズム、ウェルネス不動産など高級化への展開がますます進んでいます。
しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) の勃発をきっかけに、多くの人の「健康への根本的なニーズ」をターゲットに「大衆化」へと路線変更が必要になったようです。
今回はデジタルを取り入れた新たな分野で成長を続けるウェルネス産業の実態と、ウェルネスの大衆化について考えます。
ウェルネス格差
人々の健康への意識が世界的に高まる一方で、健康的な生活への取り組みには収入や教育の格差が反映されています。
例えば、ベジタリアンになるには案外贅沢なことなのです。アメリカには「食品砂漠」といわれるエリアに住む低所得層が多くいます。新鮮な食料品が売っている店がなく、ファーストフードや安い添加物ばかりの食品しか手に入らないのです。
そのため、新鮮な野菜やオーガニック食品など手の届かないモノとなっています。低所得者層ほど肥満も多く、糖尿病など慢性病が蔓延しているのがその証拠です。
その一方で、富裕層は健康維持の為の食事、ヨガやエクササイズなどのフィットネス、予防医学など基本的な事のみならず、贅沢なスパやウェルネスツーリズム、健康的な家づくりやインテリアまで、とことんウェルネスを意識することがステータスシンボルのようになっています。
The Global Wellness Instituteのマックグロウリティー氏は、「COVID-19 以前、ウェルネス産業は富裕層をターゲットにした短絡的なビジネス展開に偏り過ぎているという批判を受けていた」と話しています(※2)(https://www.uschamber.com/co/good-company/launch-pad/pandemic-is-changing-wellness-industry)。しかしCOVID-19 により、人々の健康的な生活への意識がさらに広まり、誰にでも手の届くようなサービスへの見直しが迫られるようになりました。
COVID-19感染予防として、対面サービスが提供できなくなった企業が苦肉の策としてフィットネスや予防医学のサービスのオンライン化を強化したのです。これが結果的に、ウェルネスの大衆化につながり不平等の縮小となっています。企業側も顧客の幅を広げることに成功しているようです。
健康管理は「贅沢」?
例えば、オンラインクリニック。ここ数年で、医者に相談できるオンラインクリニックアプリが増加傾向にあります。COVID-19の感染を恐れ医療機関へ出向く人が減ったことで、さらにオンラインクリニックが注目されるようになりました。サービスも充実され、かつ値段も手頃になり、より多くの人の健康管理に役立っています。
医療費の高いアメリカでは、予防医学や初期的な治療を受けずにいた人が大勢います。そういう人にとっては少し医療が身近になり、健康管理が「贅沢」なことではなくなりつつあります。
また、今まで対面で診察を受けていた人や、忙しく診察に行けなかった人にも、オンラインクリニックは時間や費用を節約でき便利だということが知れ渡りました。COVID-19の収束後もオンラインクリニックは定着するでしょう。
オンラインフィットネス競争
運動不足を理由に、YouTubeなどの無料動画を利用して新たにフィットネスを始める人が増えました。波及効果として、宅トレ用の器具や小道具、ウェアーなどフィットネス関連グッズの売れ行きが急激に増加していることも、ウェルネス産業の成長要因の一つです。
また、無料動画では物足りなくなってきた人や、今まで忙しく時間や場所が合わなかった人達に向けの手頃なオンラインフィットネスクラスやアプリの需要も高まっています。
オンラインは場所を選ばないので競争が激しくなり、サービスの質も向上し、もちろん価格も手頃になり、より多くの人が本格的なフィットネスを気軽に続けられるようになっています。
マックグロウリティー氏は「今後、もっと大勢の人が超エリート主義の、むやみに高級なウェルネス体験や高価なサービスやモノを受け入れなくなるだろう」、「(ウェルネスビジネスは)手頃な価格という選択肢を揃えることが重要だ」としています。今後、ウェルネス産業は高級志向から大衆化へと方向転換しながら成長し続けるのでしょう。
COVID-19以前からSNSやアプリでウェルネスサービスを利用していた方も、オンライン化競争の激化でより内容も選択肢も充実していることに気付かれているのではないでしょうか。消費者にとって有り難いトレンドです。オンラインを利用して賢くウェルネスへ取り組まれてはいかがでしょうか。
参考
(※1)The Global Wellness Institute “Global Wellness Economy”(https://globalwellnessinstitute.org/press-room/statistics-and-facts/)
(※2)CO “Staying Healthy at Home: How COVID-19 Is Changing the Wellness Industry”(https://www.uschamber.com/co/good-company/launch-pad/pandemic-is-changing-wellness-industry)
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