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宝くじ販売回復の兆しと新興株市場の活況に共通するのは?

LIMO / 2020年8月28日 20時25分

宝くじ販売回復の兆しと新興株市場の活況に共通するのは?

宝くじ販売回復の兆しと新興株市場の活況に共通するのは?

9月2日は「宝くじの日」です。これは、1967年に宝くじの販売を担っていた第一勧業銀行(現在のみずほ銀行)が制定したもので、「く(9)じ(2)」の語呂合せが理由です。当時は、当選しても引き換えられず時効となってしまう宝くじが多いことから、時効防止のPRの為に制定されたようです。

皆さんの中にも、「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ宝くじ」のような当選金額の大きい宝くじを、毎年、何となく購入している人は少なくないのではないでしょうか。

2017年度の宝くじ売上額は2005年度のピーク時から約3割減まで落ち込む

宝くじは、総務大臣の許可を得た全国地方自治体のみが発行する正式名称「当せん金付証票」です。そして、その売上収益の約38%は地方自治体の公共事業に使われており、地方自治体財政にとって大きな収益源の1つとなっています(2018年度実績)。

ちなみに、売上収益の残りの内訳は、社会貢献広報費が約1%、印刷代など経費が約14%、当選金支払いが約47%です。この数字通りだとすれば、売上収益の半分弱が当選金として還付されていることになります。多くの当選者、とりわけ高額金額の当選者は、誰にも言わずに喜びを噛みしめているのかもしれません。

このように地方自治体財政に必要不可欠な宝くじですが、売上額の減少傾向が続いています。総務省の集計によれば、2017年度の売上額は7,866億円(対前期比6.9%減)に止まり、2年連続の減少で20年ぶりに8,000億円を割り込みました。

また、ピークの2005年度実績である1兆1,047億円から見ると約3割減まで落ち込みました。人口減少などにより税収の伸びが期待し難い地方自治体では、既に大きな財政問題になりつつあるのが実態です。

2018年度は小幅増加、ネット販売の導入で回復の兆しが見え始めた?

ところが、最新実績(2018年度)では、売上額が前年度比+2.3%増の8,046億円となり、3年ぶりの前年超えとなりました。販売額は8,000億円をようやく上回った状況ですから、未だ低水準であることに変わりはありませんが、今後の販売回復への明るい兆しも出始めています。

その1つがインターネット販売の導入効果です。宝くじのインターネット販売は、2018年10月から「ジャンボ宝くじ」を含めたほぼ全種類に導入されました(注:ロトやナンバーズはそれ以前から実施済み)。結局、2018年度(2018年4月~2019年3月)への寄与は6カ月間だけでしたが、相応の効果が出ていた可能性があります。

実際、設立直後からインターネット販売を導入した「スポーツ振興くじ」(通称:サッカーくじ、toto等)が堅調に推移したことを勘案すれば、ネット販売導入による押し上げ効果は着実に出ていたと見ていいでしょう。

ただ、そうは言っても、前述した通り、過去のピークから見れば依然として約27%も減少しています。販売回復に向けた“切り札”に近いネット販売導入を終えた現在、今後の販売が持続的に上向く可能性はあるのでしょうか?

様々な見解があるかと思いますが、筆者は宝くじ販売の増加傾向が続く可能性は高いと予想します。その最大の理由は、一連のコロナ禍を受けたテレワークの定着等に伴う在宅時間の増加です。

一見すると、在宅時間の増加と宝くじ販売には何の関係もないように見えます。しかし、大きな関連性を見出すことができるのが、株式市場における新興市場の動向です。

4月上旬以降、近年まれに見る活況な商いが続く新興株式市場

ご存知の方も多いと思いますが、株式市場は大きく「大型株式市場」(主に東証1部)と、「新興株式市場」(東証マザーズ、ジャスダック等)に分けられます。

このうち、後者の新興市場は、外国人投資家や機関投資家による売買は非常に少なく、大部分が個人投資家によるものです。なぜならば、新興市場に属する企業には、流動性が低い、無配が多い、赤字決算が長期間に渡る等々の理由から、機関投資家が売買できる基準を満たさない銘柄が多いためです。

もっとも、新興市場は発展途上の企業が将来の大きな成長に向けた資金調達を行うマーケットなので、仕方ないと言えば仕方ないことなのです。事実、この新興市場で調達した資金を活かし、その後に“大化け”した銘柄も決して少なくありません。多くの個人投資家は、こうした“大きな夢”に投資しているのです。

さて、前置きが長くなりましたが、その新興市場は4月上旬以降、近年にない活況な商いが続いています。具体的には、新興市場で最大規模を誇る東証マザーズにおける1日の売買代金は、今年4月14日以降、91日連続で1,000億円を超えており、ここ10日間は2,000億円も超えています(8月27日現在)。また、3,000億円を超える日も出ています。

実は、これは特筆すべき変化なのです。東証マザーズでは、売買代金が1,000億円を超えると概ね“活況”という状況にありますが、振り返ると、4月上旬以前は1,000億円を超える日は非常に少なく、500億円台の日が続いたりしました。しかしながら、4月上旬を境にして市場参加者が大幅増加となり、活況な相場へと変貌したのです。

在宅時間の増加に伴って活況を呈し始めた新興株式市場

いったい、新興株市場に何が起きたのでしょうか?

もうお分かりかと察しますが、4月7日に政府が緊急事態宣言を発令し、16日からは全都道府県へ拡大となりました。街中から人通りがなくなり、多くの人が在宅を余儀なくされたわけです。その後、緊急事態宣言は解除されましたが、テレワークの定着などで、在宅時間が増加したままになっているのはご承知の通りです。

つまり、新興株式市場の近年まれに見る活況は、(個人投資家の)在宅時間の増加に伴う「副産物」以外の理由を見出すことができません。その証拠と言っていいかどうかわかりませんが、個人投資家の参加割合が相対的に小さい大型株式市場は、4月上旬以降も売買代金が目立って増えることはなく、むしろ、徐々に減っています。

こうしたことから、在宅時間が増加したことで、比較的少額から着手できる新興市場の株式投資を新たに始めた人が増加したと考えて間違いないと思われます。新興市場だけが対象ではないかもしれませんが、ネット証券大手である楽天証券の3月の新規口座開設が過去最多を記録したというニュースもありました。

新たに株式投資を始めた人の中には、ある種の時間潰しの人もいたでしょうし、当然、インターネットで手軽に売買できるようになっていることも大きな要素です。さらに、特別給付金(10万円)の受給も追い風になったと推察されます。

宝くじ販売にも新興株式市場と同じことが起きる?

この新興株式市場で起きたことと同じような事象が、宝くじで起きても不思議ではないと考えられます。もちろん、新興市場とはいえ、株式投資と“運頼み”の宝くじ購入を単純に同一視することはできませんが、時間的にも、購入手法(ネット販売)も、そして金銭的にも(特別給付金10万円等)、宝くじの購入を検討する人が増加する環境にあると思われます。

残念ながら、在宅時間の増加が2019年度(2019年4月~2020年3月)の販売に与える影響は限定的になりそうですが、2020年度(2020年4月~2021年3月)には大きな押し上げ要因になっている可能性があります。引き続き、今後発表される販売実績に注目したいと考えます。

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