パートの主婦が「106万円の壁」を超えたらどうなる? 知っておきたい3つのポイント

LIMO / 2020年9月3日 10時0分

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パートの主婦が「106万円の壁」を超えたらどうなる? 知っておきたい3つのポイント

子供が幼稚園や保育園、または小学校に行き始めたタイミングでパート勤務を始める人は多いのではないでしょうか。筆者の周りでも、ほとんどのお母さんがパートで働いています。

厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査(令和元年分)」によると、パート収入の全国平均月収額は99,765円で、年収に換算すると約120万円。夫の社会保険の扶養を外れる130万円という年収の壁を意識した結果になっています。

「130万円の壁」だけでなく「106万円の壁」もある

年収130万円は、すべての人が社会保険の扶養から外れる収入の壁です。ところが、平成28年10月以降は被用者保険(厚生年金や健康保険)の加入対象者が拡大されたため、月収8.8万円以上(年収換算で106万円)など、以下の条件に当たる人も、扶養から外れて社会保険の加入が義務づけられています。

適用対象者の条件

勤務先の従業員数(パートタイム除く)が500人超

週所定労働時間が20時間以上

月額賃金が8.8万円以上

勤務期間が1年以上(見込みも含む)

学生ではない

また、令和2年5月には「年金制度改正法」が成立し、加入対象者がさらに拡大されることになりました。

現行では従業員数(パートタイム除く)が500人超の会社で働く人が対象ですが、令和4年10月には100人超規模、令和6年10月には50人超規模の会社に勤務する人も、厚生年金や健康保険に加入することになります。そのため、自分の働く会社がどの基準に該当するのかを把握しておくことが大切です。

では、実際に扶養を外れた際、何が変わるのでしょうか。以下、3つのポイントを見ていきます。

1. 将来もらえる年金が増える

サラリーマンの妻は、第3号被保険者で国民年金保険料を直接負担していませんが、国民年金が年額78万円・月額65,000円支給されます。扶養の範囲内で働いている場合、この基礎年金しか受け取ることができません。

しかし、扶養から外れて妻自身が厚生年金に加入すると、この基礎年金に厚生年金分が上乗せされ、老後に受け取る年金額が増えることになります。

実際にはどのくらいもらえる?

仮に、月収8.8万円で厚生年金保険料を毎月8,100円、20年間支払った場合、年額108,600円・月額9,000円の厚生年金を終身で受け取ることになります。よって、毎月受給する年金額は基礎年金65,000円と厚生年金9,000円を合わせた74,000円となります。

年金受給が開始される65歳から女性の平均寿命である87.45歳までは20年以上あることを考えると、加入するメリットは十分あるのではないでしょうか。

また、障害のある状態になった場合には、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が支払われることになりますが、障害厚生年金は月額約49,000円の最低保障額が決められています。さらに本人が亡くなった場合には、遺族に遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます(注)

注:障害基礎年金が支給されるのは障害等級1級または2級の場合だが、障害厚生年金は障害等級3級の場合も支給される。遺族基礎年金は18歳未満の子がいない場合は配偶者に支給されないが、遺族厚生年金は18歳未満の子がいない場合も配偶者に支給される。

2. 病気やけがで仕事を休んだときの保障を受けられる

夫の扶養内で働いている場合、病気やケガで仕事を休めば給料がもらえなくなります。一方、自身で健康保険料も負担すると、病気やケガ、出産で仕事を休まなくてはいけなくなった場合、賃金の3分の2程度の傷病手当金や出産手当金の現金給付を受け取ることができます。こうして一定の収入保障があることは、経済的な安定・安心につながります。

ちなみに、新型コロナウイルス感染で療養が必要になり、働くことができなくなった場合にも傷病手当金は支給されます(詳細については、各健康保険組合等にお問い合わせください)。

3. 手取り額が少なくなる

収入が変わらず、厚生年金や健康保険料が差し引かれると、手取り金額は少なくなります。例えば月収8.8万円だと、厚生年金保険料は8,100円、健康保険料は4,400円を毎月負担することになるので、毎月の手取り額は社会保険料分の12,500円分が減ることになります。

社会保険料を負担するのは半額だけ

厚生年金や健康保険の保険料は、本人と会社が折半します。例えば月収が8.8万円(年収106万円)だと、支払うべき厚生年金保険料と健康保険料の合計月額は25,000円。そのうち、本人が負担するのは、厚生年金保険料8,100円と健康保険料4,400円の合計12,500円で、残りの12,500円は勤務先の会社が支払うことになります。

筆者は自営業者の妻なので、第1号被保険者に該当します。そのため、国民年金と国民健康保険の保険料を全額負担しなければなりませんが、国民年金の保険料だけで毎月16,000円かかります。そのうえ国民健康保険の保険料の支払いもあるので、会社が半分負担してくれる厚生年金の制度はうらやましいというのが本音です。

おわりに

主婦がパートで働くのは限られた短い時間です。扶養内で働いていれば社会保険料の負担がなく、手取り額が減らないために、多くの主婦がお得だと選んできた働き方だといえます。しかし、ここ最近の年金制度の見直しにより、けっして安くない社会保険料を負担したとしても、長い目で見るとメリットを感じられる制度に変わりつつあります。

今は、コロナの影響で戦後最悪の不況といわれるまで日本経済は落ち込んでいます。上場企業の中にも業績の悪化が深刻なところもあり、希望退職を募集する企業も出始めました。先行きが不透明なコロナ禍では、106万円の壁の前で立ち止まらず、世帯収入を上げるために働くことを考えてみてもいいのではないでしょうか。

【参考資料】
「毎月勤労統計調査 令和元年分結果確報(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r01/01cr/dl/pdf01cr.pdf)」(厚生労働省)
「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html)」(厚生労働省)
「パート・アルバイトの皆さんへ社会保険加入対象が広がっています。(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html)」(政府広報オンライン)
「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について(https://www.mhlw.go.jp/content/000604969.pdf)」(厚生労働省)

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