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相続後の思わぬ請求…受け継ぐ資産や借金がなくても要注意 !?

LIMO / 2020年9月7日 20時15分

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相続後の思わぬ請求…受け継ぐ資産や借金がなくても要注意 !?

親兄弟や配偶者など身近な人が亡くなったときには、遺産相続が発生することがあります。筆者の知人のAさんもご兄弟が亡くなられたのですが、身内がAさんのみであったため、Aさんが相続人になったそうです。

とはいえ、ご兄弟には借入金こそないものの貯金もほとんどなかったので、複雑な手続きも不要でほっとしていたとのこと。しかし、そんなAさんに思いもよらぬ請求が来て、非常に苦労することになったそうです。

Aさんに起こったトラブルは、遺産の多い少ないにかかわらず誰にでも起こる可能性があります。身近な人が亡くなり精神的に辛いときに、思わぬトラブルで追いつめられることがないように、トラブル事例と予防策について知っておきましょう。

遺産相続の基本をおさらい

遺産相続とは、誰かが亡くなった場合に、死亡した人(被相続人)の財産・権利・義務を受け継がせることを言います。原則として財産を受け取れるのは「法定相続人(相続人)」であり、法定相続人に該当するのは以下の人と定められています。

第1順位:被相続人の子ども、または孫(直系卑属)

第2順位:被相続人の父母、または祖父母(直系尊属)

第3順位:被相続人の兄弟姉妹、または甥姪

被相続人の配偶者は、上記に関係なく相続人に含まれます。Aさんのご兄弟は身内がAさんだけだったため、兄弟であるAさんが相続人になりました。

後処理後の予想外の出来事

それでは話を戻しましょう。Aさんはご兄弟の遺産の相続人になりましたが、ご兄弟は独り身で賃貸アパート住まい、飲み歩きが趣味で、資産と呼べるものは家具家電と50万円にも満たない貯金のみ。

その貯金も葬儀や部屋の片づけで消えてしまい、むしろAさんが費用を持ち出す必要があったそうです。当然相続税がかかることもなく、早々に後処理を終えてほっとしていたAさんに、思いもよらぬ書類が届きます。

遺産相続では「義務」も相続する

Aさんに届いた書類とは、ご兄弟の住民税の納付書です。遺産相続では、現金預金や住宅、土地の権利といったプラスの資産だけでなく、借入金の返済や納税義務といったマイナスの資産も引き継ぐことになります。

意外に見落としがちなのが、この「納税義務」です。とくに住民税は、住宅や自動車を相続したときのように、形があるものを引き継ぐわけではないため見落とす人もいます。

Aさんも住民税は完全に見落としており、納付書が届いて初めて気づいたとのこと。さらに困ったことにご兄弟は住民税の滞納があったため、その請求もAさんに回ってきたそうです。Aさんはすでに年金暮らしで、ご兄弟の部屋の片づけ費用も負担していたため、これ以上は払えないと役所に相談に行ったそうですが、どうにもなりませんでした。

遺産相続の際に、期限内に相続放棄や限定承認の手続きをすれば、基本的に納税義務を引き継ぐことはありません。ですがAさんは、借主がいなくなった部屋をいつまでもそのままにしておくのは申し訳ないと、早々に家財をリサイクル業者などに引き取ってもらい部屋を片付け、貯金も使ってしまったため、相続放棄などの手続きができなかったのです。

遺産相続で注意したいこと

相続税が課税されるほどの資産がなくても、Aさんのような事態が起こる可能性があります。自分には関係ないと思わずに、遺産相続時の注意点を覚えておきましょう。

①借入金だけでなく税金も調べる

遺産相続の際に、被相続人の借入金について調べる人は少なくないでしょう。しかし、今回のAさんのように、納税義務の相続を見落として大変なことになるケースがあります。

納税額がいくらになりそうか、被相続人が税金を滞納していないかまで調査してから、相続するかどうかを決めましょう。

②期限内に手続きを終わらせる

相続放棄や限定承認の手続きができるのは、被相続人が亡くなり、自分のために相続が開始されたことを知った日から3カ月以内です。

期限を過ぎると単純承認といって、債務を含めたすべての財産を引き継ぐことを承認したことになり、被相続人の滞納した税金まで引き受けることになるので、期限内に手続きを済ませましょう。

③家財は処分しない

被相続人の家財をリサイクル業者に引き取ってもらうなどして処分すると、相続を承認したとみなされ、相続放棄できなくなる可能性があります。生ゴミなどの確実に価値がないと判断できるものは処分してもかまいませんが、家電やブランド品といった金銭的価値があるものについては、一切手を出さないことが大切です。

また、相続放棄しても被相続人が住んでいた部屋の電気やガスを止める程度はできますが、賃貸借契約の解除や価値がある家財の処分などはできません。

大家さんから「何とかしてくれ」と催促されるでしょうし、大変心苦しいのですが、家財処分すると遺産相続したとみなされるので、相続放棄したことを伝えて放置するしかないのです(賃貸物件の連帯保証人になっている場合は、片付けなければならない可能性があります)。

④相続放棄しても管理責任は放棄できない

相続放棄すると、被相続人の現金預金などの資産を相続できない代わりに、借入金の返済や納税義務などから解放されます。しかし、相続財産の管理義務は残るため、たとえばAさんのようなケースでは、相続財産管理人が決まるまでは遺産を適切に管理しなくてはなりません。

もし、この管理を怠ったことでトラブルが発生した場合には、損害賠償義務を負う可能性もあり注意が必要です。

おわりに

Aさんは住民税の納税義務も相続することを知らなかった、さらに早々にご兄弟の家財を処分し、貯金も使ってしまったために相続放棄ができなかったことで、あとから困ったことになってしまいました。

遺産相続は人生で何度も体験するものではありませんし、近しい身内が亡くなったときに遺産について考えるのは辛いものです。しかしながら、自分の生活を守るためにも適切に対処し、判断できないことがあったら迷わず専門家に相談するよう心に留めておきましょう。

【参考】
・「No.4132 相続人の範囲と法定相続分(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm)」(国税庁)
・「民法の相続制度の概要(https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/souzoku/pdf/31/12.pdf)」(国税庁)
・「納税義務者が死亡したとき、残りの市・県民税(個人住民税)はどうなりますか?(https://www.city.suwa.lg.jp/www/faq/detail.jsp?id=13917)」(諏訪市)
・「両親が滞納した税金ってどうなるの?(https://ninbai-japan.or.jp/sozoku-trouble/sozoku01)」(一般社団法人 全日本任意売却支援協会)
・「相続放棄したら賃貸アパート解約と片づけはどうすればいい?(https://xn--hckh0k432otmgyp1bvyji50a.com/souzoku-12010.html)」(相続弁護士相談Cafe)
・「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案(https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000196677)」(e-Gov)

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