お金持ちだけのものではない?「カウンセリング」も手軽になった「ウェルネス産業」の今
LIMO / 2020年9月7日 20時45分
![お金持ちだけのものではない?「カウンセリング」も手軽になった「ウェルネス産業」の今](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_19163_0-small.jpg)
お金持ちだけのものではない?「カウンセリング」も手軽になった「ウェルネス産業」の今
コロナパンデミックでは世界中で多くの人が不安を抱えています。コロナ鬱、パニック症、孤独感、今までに感じたことがないネガティブな感情に襲われるなど、先行きが見えない状況が長くなるにつれ、個人差があるにしても、誰もが不安やストレスのレベルが上がってしまっているようです。
前回の記事(※1)(https://limo.media/articles/-/19003)では、身体的なウェルネスの大衆化をとりあげました。今回は、精神衛生の取り組みにもデジタルが利用されるようになり、今まで精神的なウェルネスの普及を妨げていた「世間体」という問題を目立たなくさせることで、より多くの人が精神衛生に取り組みやすくなっている現状について取り上げます。
人々をさらに苦しめる米医療システム
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者を最も多く出しているアメリカですが、感染者だけではなく失業者数の増加にも収拾がつかない状況です。さらに、先行きの見えない未来、感染恐怖、経済的困難と不安材料が尽きず、鬱やパニック障害などの精神的な症状に苦しむ人も急増しているということです。
米コモンウェルスファンドが2020年3~5月、欧米豪先進国の18歳以上の大人各8,259人を対象に行った調査によると、アメリカでは調査を受けた33%の人が精神的症状に苦しんでいることが分かりました。これに続くのがイギリス とカナダの26%です(※2)(https://www.commonwealthfund.org/publications/issue-briefs/2020/aug/americans-mental-health-and-economic-consequences-COVID19)。
また、その中でも56%のアメリカ人がコロナ禍で失業などの経済的ダメージを受けているということです。
元々医療費が高く、失業=無保険とまさに血も涙もないアメリアの医療システム。パンデミックが与える不安は感染だけではありません。医療保険が充実している日本や他国の人々以上に経済的な困難にも苦しんでいるようです。
必要な人ほど手が届かない治療
そもそもアメリカでは、精神衛生管理にも格差があります。例えば米人気TVドラマ『Suits』などで見るように、高級弁護士や会社役員などエリート層は有名な精神科医の元でカウンセリングを受け、仕事や人間関係のストレスをコントロールしているということはよくあることです。
しかし、精神科医やカウンセラーは場所や医師の経験や専門によっても異なりますが、30分程度のセッションでも平均200~400ドルほどと高額です。精神的な治療が必要な人ほど「保険に加入していない」「入っていてもカバーしてくれない」など経済的な問題があり、手が届かず放置して悪化するというケースが多いです。
ところが、ここ数年でオンラインカウンセリングが普及しました。保険がなくても手頃な費用で専門家の治療を受けられ、場合によっては薬の処方もしてくれます。ミレニアルズを中心に利用者が増えているようです。また、コロナ禍により対面を避けるという点でも需要が高まり、より充実したサービスが次々と市場に参入しています。
精神的な疾患と世間体
一方、医療システムに恵まれている日本において心療内科やカウンセリングに通う事は、経済面での負担はアメリカに比べて少ないかもしれません。しかし、社会的な偏見を持たれてしまうという恐れが欧米より強く、そういった点で精神衛生の管理や治療を拒む人が多いようです。特に男性は「弱さ」「甘さ」とみられるのを嫌う傾向があるともいいます。
その点オンラインカウンセリングならば、誰にも気付かれずに会社を休むこともなく、自宅で都合の良い時間に受けられるため、じわじわと人気を集めているようです。もちろん欧米でも、精神的な疾患に対するネガティブなイメージはあります。それでも日本よりは遥かに周囲の理解が進んでいます。
特に最近は、ミレニアル世代の著名人や有名運動選手が次々と自分の精神的な問題を公言しています。自分の精神的な問題を公言することを恥ずべきことではない、という考えが広まっているといえます。
デジタル世代の精神衛生管理
また欧米のミレニアルズは、ウェルネスに関して前の世代よりも意識が高く、心身共に健康でいることへの出費を優先させる傾向があります。そういったニーズに合わせ、オンラインカウンセリングだけではなく、瞑想アプリやゲームを利用して不安症などの症状を緩和するアプリや、孤独感を緩和させるAIロボットなど、次々と精神衛生管理や治療を目的とした斬新なアイデアの技術が開発されています。
このようなトレンドも後押しして、デジタルに親近感をもつミレニアルズは、手頃な費用で気軽に精神衛生管理をしているようです。
日本でも、マインドフルネス瞑想などに興味を持つ人が増えているといいます。様々な選択肢が増えています。今後ストレスフルな時代を生き抜くためにも、自分なりの精神衛生管理法を見つけ積極的に取り組んでいくことが大切ではないでしょうか。
参考
(※1)『「健康」は富裕層のもの?「ウェルネス産業」急成長の要因は「大衆化」』LIMO(http://limo.media/articles/-/19003)
(※2)The Commonwealth Fund “Do Americans Face Greater Mental Health and Economic Consequences from COVID-19? Comparing the U.S. with Other High-Income Countries”(https://www.commonwealthfund.org/publications/issue-briefs/2020/aug/americans-mental-health-and-economic-consequences-COVID19)
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