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老老介護で貯蓄を取り崩す…介護にかかる費用はどのくらい?

LIMO / 2020年9月12日 20時0分

老老介護で貯蓄を取り崩す…介護にかかる費用はどのくらい?

老老介護で貯蓄を取り崩す…介護にかかる費用はどのくらい?

人生100年時代の今、「一生健康で暮らしたい」「寝たきりにはなりたくない」と考えている人が大半ではないでしょうか。そのため、世界保健機関(WHO)が提唱した新しい指標「健康寿命」が注目されています。

75歳以上の3人に1人は介護が必要に

健康寿命とは、「平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間」を意味しています。厚生労働省の「令和2年版高齢社会白書」によると、2016年の健康寿命は男性72.14歳・女性74.79歳で、同年の平均寿命との差は男性8.84年・女性12.35年。この間が、介護が必要になり得る期間ということになります。

また前述の白書によると、介護保険制度における65歳以上の要介護者等(要介護または要支援の認定を受けた人)は年々増加しており、2017年度末で約628万人。75歳以上になると第1号被保険者に占める要介護の割合が23.3%、要支援が8.6%で、合わせると約3人に1人が要介護認定を受けているという状況です。

こうした状況では、実親や義理の親、配偶者そして自分自身も将来介護される可能性は十分あります。介護が必要になった際に慌てずに済むように、筆者の知人であるAさんのケースを交え、介護の実態について見ていきましょう。

2人暮らしの高齢者夫婦の老老介護

Aさんは70歳。80歳のご主人と地方都市での2人暮らしです。2人いるお子さんは、結婚してそれぞれ親元から離れたところに住んでいます。

80歳になるご主人は15年ほど前に病気で倒れ、70歳くらいから認知症を発症。今は、要介護2の認定を受けて、週に1回デイサービスに行っています。Aさんにとって、ご主人がデイサービスに行っている時間が、束の間の息抜きできる時間だといいます。

介護にかかる支出としては、月に一度かかりつけの病院でもらうご主人の持病の薬代などの医療費が約8,000円。紙おむつ代が、ひと月に1万円ほど。さらに、年に数回2週間ほど入院することがあるそうです。高額医療費制度を利用しても、月をまたぐことが多く、入院代は6〜7万円かかるとのこと。

ご主人は寝たきりではありませんが、食事、入浴や排せつなど、生活のさまざまな場面で介助が必要です。便利な介護用品はありますが、値段は決して安くありません。ちなみに、ファスナー1つで脱ぎ着ができるつなぎのパジャマは1万円もするそうです。

Aさん夫婦のケースは、「老老介護」といわれるものです。介護保険に加入しているのでデイサービスも利用できますが、限度額はあるものの1~3割は自己負担しなければなりません。

また、在宅介護では、快適に過ごせるようにと暖房や冷房を付けっぱなしにすることが多く、排泄の後始末をするためにシャワーを頻繁に使うそうです。そのために、オムツ代や医療費以外にも、電気代や水道代などの費用もかさみます。

「年金で足りない分は貯蓄を取り崩しています。施設に入るには、今の年金では無理そうです」と、Aさんはため息交じりに話していました。

データが示す介護の実情や費用は?

次に、厚生労働省などの調査資料から、介護負担に関する実態を見ていきます。

介護を行うのは誰?

前出の「令和2年の高齢社会白書では、介護をしているのは同居の家族が6割弱で、その内訳は配偶者が25.2%、子が21.8%、子の配偶者が9.7%となっています。

また、男性が34.0%に対して、女性が66.0%と、女性が介護者になるケースが多いことが見て取れます。

介護にかかる時間は?

また、同居家族の1日のうち介護にかかる時間は、「必要な時に手をかす程度」が44.5%と最も多く、一方で、「ほとんど終日」も22.1%という結果になっています。

要介護度別では、要支援1から要介護2までの場合「必要な時に手をかす程度」が最も多く、要介護3以上になると「ほとんど終日」が最も多くなります。

在宅介護と施設利用の状況は?

厚生労働省の「介護保険事業状況報告(月報・暫定)」(令和2年6月分)によると、在宅で介護または介護予防サービスを受けた人は383.7万人、施設でサービスを受けた人は約95.4万人でした。

また、同省の「平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況」では、在宅でサービスを受けているのは要介護1と要介護2の人が多く、介護老人福祉施設や介護療養型医療施設といった施設の在所者では要介護3以上が9割超となり、要介護4と要介護5の人の占める割合が高くなっています。

介護にはいくらかかる?

公益財団法人 生命保険文化センターが過去3年間に介護経験がある人に行った調査によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッド購入などの一時費用の合計が平均69万円、月々の費用が平均7万8000円となっています。

月々の費用は、在宅介護か施設介護かで必要額は大きく変わります。一番の違いは言うまでもなく住居費です。在宅であれば必要ない住居費が、施設を利用すればかかります。また施設には、介護保険対象施設とそうでない施設、公的施設か民間かでも利用料金は全く異なります。

特別養護老人ホーム(特養)の場合

特別養護老人ホームは、介護保険が適用され、自己負担が比較的少ない金額で利用できる介護施設です。月々の利用料だけで、一時金がかかりません。また、所得が少なくても利用できるように、所得区分によって利用料金は減免されます。

そのため、非常に人気が高く、順番待ちの施設も多いようです。ただし、入所条件が原則として要介護3以上なので、誰もが入れるわけではありません

民間の有料老人ホームの場合

入居の際にまとまった一時金が必要になります。また、毎月の利用料も、公的介護施設と比べると高くなります。一方、要介護1であっても入所可能で、特別養護老人ホームのように順番待ちすることは少ない状況です。

おわりに

介護には、さまざまな負担がかかります。通常は40歳から介護保険に加入しているので、65歳以降に介護や支援が必要と認められれば介護サービスを受けることができます。

ただし、保険の対象になるのは、あくまで介護サービスのみ。そのため、老後資金を準備する際には、上記で紹介した住居改造やベッド購入、日用品など介護費用全体も視野に入れて考えることが必要になってきます。また、少しでも健康寿命を延ばせるように、日頃から健康的な生活を送るようにしたいですね。

【参考資料】
「令和2年版高齢社会白書(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/zenbun/02pdf_index.html)」(厚生労働省)
「介護保険事業状況報告の概要(令和2年6月暫定版)(https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m20/dl/2006a.pdf)」(厚生労働省)
「介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?(https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/4.html)」(公益財団法人 生命保険文化センター)
「介護保険制度における要介護認定の仕組み(https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kentou/15kourei/sankou3.html)」(厚生労働省)
「平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service17/)」(厚生労働省)

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