愛犬の安楽死を選んだのはなぜ? 辛い選択をめぐる手続き、配慮、費用…
LIMO / 2020年9月18日 17時0分
愛犬の安楽死を選んだのはなぜ? 辛い選択をめぐる手続き、配慮、費用…
ニュージーランドの街角を歩いていると、自由気ままに歩き回る猫や、オーナーと散歩している犬によく出会います。犬猫や小鳥、熱帯魚などペットを飼育する世帯は全世帯の64%に上り、1%の僅差で65%の米国に及ばず、世界第2位となっています※。
飼い始めは動物たちが幼いことも多く、元気で個性的でかわいくて……とメロメロになるものです。「いったん飼い始めたら、最期まで面倒を見る」という飼い主の責任がありますが、まだまだ先のことと忘れがちです。
ですが、命あるものには必ず死という別れがやって来ます。最愛の犬や猫などがもし天寿を全うするのではなかったら? 私たちが、子ども代わりともいえる動物の最期を決めなくてはならないのだったら?
安楽死を選ぶこともあるニュージーランドの飼い主たちの心中はどのようなものなのでしょうか。
※『Companion Animals in New Zealand 2016』(The New Zealand Companion Animal Council Inc.)
余命3カ月と告げられた「クマ」ちゃん
ニュージーランドではペットの安楽死について、日本より比較的多く耳にします。
家庭で飼われている動物のうちのどの程度に安楽死がもたらされているのかははっきりしません。が、暮らしていてペットを飼う人と動物の話をしていると、日本ではほぼ聞くことがなかった「ペットの安楽死」が自然に話題に上ることもしばしばです。辛いことですが、それだけ身近なのだということがわかります。
筆者の友人、Aさんは日本から移り住んで23年という、ニュージーランドの裏も表も知り尽くした女性です。ご主人は7歳の時に香港から移住してきた、中国系キーウィ。2人はフレンチ・マスチフが気に入り、数代にわたってこの種類の犬を飼ってきました。
2年ほど前のこと。「クマ」ちゃんと名づけた3歳のオス犬の首にしこりがあるのに気づきます。かかりつけの獣医さんに連れていくと、しこりは悪性リンパ腫で、余命は約3カ月と告げられました。
通常、獣医さんは病気にかかった動物を快方に導くための手立てをいくつか提示し、飼い主はその中から最も良いものを選びます。残念ながらクマちゃんには投薬しか方法は残されていませんでした。しかも薬をのんでも回復は見込めず、数カ月の延命が期待できるだけに留まりました。
Aさん夫婦は大変なショックを受けます。当時気が動転していて正確な値段が頭に入らなかったそうですが、薬が非常に高額だったことはよく覚えているとのことでした。
痛みに苦しむ愛犬を目にして考えたこと
痛みに耐え切れず、クマちゃんは夜中に鳴き声をあげるまでになっていました。怒りっぽくなり、一緒に暮らすもう1匹の犬とけんかをするようになりました。それまで、けんかなど1回もしたことがなかったのに、です。
クマちゃんの変容ぶりを目にして、「痛みがこんなにひどいのに、延命させるのは正しくない」とご夫婦は気づいたそうです。「クマちゃんとできるだけ長く一緒にいたいという、私たちの『エゴ』で延命してもらうのは間違っている」と。
薬をのみ、少しでも長く生きることができても、クマちゃん自身の「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」は上がらないとご夫婦ともに考えるようになりました。QOLの向上が見込めないのに、高額な薬を処方してもらう意味はどこにあるのだろう…と疑問にも感じました。そしてご夫婦は安楽死を選択したのです。
ちなみに安楽死にかかる費用は全国共通というわけではなく、獣医さんによってまちまちです。
ご夫婦が行かれた獣医さんではありませんが、例を挙げると猫が220NZドル(約1万5600円)、小型犬(体重1~14キロ)が240NZドル(約1万7000円)、大型犬(15~40キロ)が260NZドル(約1万8400円)です。40キロ以上の特に大きな犬は通常の大型犬の費用に20NZドル(約1400円)が加算されます。
敬意を払い、痛みは最低限に
安楽死を行う側である獣医さんも、それを軽はずみに勧めているわけでも、いい加減に処置を施すわけでもありません。
対象となる動物に対し、敬意を持ち、できる限り痛みがなく、苦しまないよう安楽死を行うよう、全国の獣医師を代表する会員組織、ニュージーランド・ベテリナリー・アソシエーション(NZVA)で決められています。動物福祉の法律、「アニマル・ウェルフェア・アクト 1999」に基づいた規則です。
NZVAの規定では、安楽死のほかにどのような選択肢があるのかを説明し、納得がいかない飼い主は他でセカンドオピニオンを求めることができます。最終的に、飼い主が記入したインフォームド・コンセントを受け取り、獣医さんは初めて当該の動物に対し、安楽死を行うことが許されるのです。
安楽死の実施だけでなく、飼い主の気持ちをおもんばかるのも、獣医さんの仕事です。最近よく聞かれる「ペットロス」に陥らないよう、安楽死の過程の最初から最後まで、飼い主の気持ちに寄り添うよう努めます。
愛する動物のために
クマちゃんの話をしてくれた時、Aさんの目からは涙がポロポロとこぼれ落ちました。愛するペットに、軽々しく安楽死を選んだわけではないことは明らかでした。
それでも、Aさんは安楽死を後悔しているのではないと言い切ります。しゃべれない動物が言いたいだろうと、また考えているだろうと想像し、人間の自分勝手を捨て去ったところ、現れたのが安楽死だったと言います。
ペットの安楽死は決して安直な考えの先にあるものではありません。飼い主の精神的負担も悲しみも、自然死でペットを亡くした時同様……いやそれよりさらに深いものと、筆者は受け止めています。
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