菅氏の「不妊治療保険適用」発言に「それより教育無償化を」の声、どちらも望んではダメなのか

LIMO / 2020年9月20日 10時0分

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菅氏の「不妊治療保険適用」発言に「それより教育無償化を」の声、どちらも望んではダメなのか

9月16日、菅義偉氏が第99代内閣総理大臣に指名されました。その菅総理は、自民党総裁選で少子化問題について問われた際、「出産希望世帯を支援し、不妊治療を保険適用に」と言及しました。また、岸田政調会長(当時)も「出産費用を実質ゼロにする後押しも必要」と発言。

両氏の発言が報道されてから今もなお、さまざまな意見がネットを駆け巡っています。特に多かったのが、「それよりも必要なのは教育費用の補助」「産むまでのお金よりも産んでからのお金のほうが圧倒的に大変」「出産だけがゴールじゃない」といった声でした。

人工授精や体外受精は保険適用外

ネット上の意見を見てみると、大多数の人は上記の意見に共感している様子。しかし、実際には不妊治療の保険適用化や出産費用の実質ゼロ化によって、妊活や出産に前向きになれる人は少なくありません。

筆者の周りには、20代~30代前半ですでに不妊治療専門のクリニックに通っている夫婦が、かなりいます。芸能人のニュースなどを見ていると「不妊治療=40代」というイメージがあるかもしれませんが、実際には若い世代も不妊に悩んでいる現状があります。

そうした不妊治療当事者にすれば、菅氏の保険適用化発言はとても嬉しいニュースだったに違いありません。現状、排卵誘発剤などの薬物療法や卵管疎通障害に対する卵管通気法、卵管形成術といった治療には保険が適用されています。

しかし、妊娠までの最後の望みとも言える人工授精や体外受精といった治療はすべて自費診療。不妊治療のステップが進めば進むほど、子どもを持つまでに数百万円ものお金を不妊治療につぎ込まざるを得ない状況になっているのです。

また住んでいる自治体や勤めている企業によっては、不妊治療に対して一部助成を行っているところもあります。しかし、それらで不妊治療の多大な経済的負担が劇的に軽減されるものでもありません。

やはり、国として保険適用をしてくれるという状況になるのは、経済的にも精神的にも「自分たちも、子どもを望んでいいんだ」という大きなバックアップになることは間違いないでしょう。

不妊治療当事者と子育て当事者が国の予算を奪い合っていないか?

今回、ネット上で圧倒的に強い「それよりも必要なのは教育費用の無償化」「産むまでのお金よりも産んでからのお金のほうが圧倒的に大変」といった意見に対して、不妊治療当事者からは「いやいや、そもそもお金がないのに子どもを産もうとする人が悪い」「こっちはいくらお金を積んでも産めていないのに」といった声もあります。

こうした子育て当事者や不妊治療当事者の声はどちらも正解で、どちらも国から尊重されるべき意見でしょう。

筆者はこうした議論が盛り上がるのを見て、子どもをこれから産みたい人と子どもをこれから育てていく人が、限りある国の予算を奪い合っている構図に感じてしまいました。

不妊治療保険適用化も出産費用無償化も教育費用の補助も、本来は“子育て”という大きな枠で考えればすべてが地続きになっています。また、妊娠、出産、子育てのどこにハードルがあるかは、経済状況や身体的事情によって人それぞれです。

自分が今、妊娠に苦しむ時期にあっても、数年後には子育てに苦しむことになるかもしれない。自分は子どもを望んでいないけれども、子どもを望んでいる人が子どもを持てるようになればいい。

そういう視野の広さが社会全体にない限り、「不妊治療当事者と子育て当事者」「独身と既婚」「男性と女性」など、違う立場の人が別の立場の人を「自分ではない誰かが補助や助成を受けて得をするのはズルい」としていがみ合い、余計に差別や偏見が生まれやすい状況になってしまうでしょう。

子育て支援はどれか一つだけ頑張っても意味がない

今、日本で子どもを持つ上では、あまりにも多くの解決しなければいけない問題があります。保育園や学童保育の待機児童、夫の家事育児参加問題や男性の育休取得率、職場でのマタハラや独身の人への業務負担の偏り、時短勤務による不平等な評価……。

出産がゴールではないことはもちろんその通りですが、産んでからの問題のいくつかは国からの助成や保険適用に頼らずとも社会全体で解決していけることもあります。

子育て支援は妊娠、出産、子育てと特定の領域を取り上げるのではなく、すべてを大きな枠組みとして考えることが、国にも社会全体にも求められているのではないでしょうか。

【参考資料】「不妊治療をめぐる現状(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000314vv-att/2r985200000314yg.pdf)」(厚生労働省)

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