菅政権は「短命に終わるジンクス」を打破できるか?
LIMO / 2020年9月21日 20時0分
菅政権は「短命に終わるジンクス」を打破できるか?
歴代最長の第2次安倍政権が終焉を迎え、正式に菅政権が発足
9月16日、第2次安倍政権が終了し(注)、正式に菅政権が発足しました。首相を辞任した安倍晋三氏の在任期間は、今般の第2次政権2,822日(2012年12月26日~2020年9月16日)が連続在職として過去最長となり、短命に終わった第1次政権の366日(2006年9月26日~2007年9月26日)と合わせた通算在職日数でも過去最長となりました。
とりわけ、第2次政権は久々の長期政権となり、一般に子供に物心がつくのを10歳前後と仮定すれば、現在の小中高生のほとんどは安倍氏以外の首相を知らないということになります。それまで1~2年で首相がコロコロ変わっていた時代が少なくなかったことを勘案すると、大変な偉業なのかもしれません。
注:臨時国会の首班指名投票ベースでは第2次~第4次安倍政権となりますが、簡潔にするため「第2次」とします。以下も同様です。
過去の長期政権後の新政権は、短命に終わるケースが繰り返されている
さて、新たに船出した菅政権ですが、“歴史は繰り返す”という過去の教訓に倣うと、前途多難と考えざるを得ないものがあります。それは、長期政権後の新政権は短命に終わるパターンが続いているからです。
まずは、過去の長期政権とその後の新政権の在任期間を振り返ってみましょう。なお、対象は現在の日本国憲法が施行された1947年5月以降とします。
長期政権や短命政権の定義が厳密に規定されているわけではありませんが、確かに、歴代の長期政権後は短命に終わることが繰り返されています。しかも、長期政権の直後だけではなく、その次の政権も非常に短命で終わるケースが見られます。
果たして、これは単なる偶然なのでしょうか? しかし、こうも同じパターンが続くと、やはり、そこには何か理由があると見るべきでしょう。
長期政権は自民党の“順繰り”パターンを崩す
1つの理由として考えられるのが党内抗争です。これら過去のケースは全て自民党の政権ですが(注:鳩山一郎氏の時は“55年体制”の誕生)、一般論として、政権与党には総理総裁への欲望を隠さない野心的な政治家が数多くいます。
言い方が適当でないかもしれませんが、その野心的な政治家が2年前後の“順繰り”で首相を務めてきたことは否めませんし、このパターンは今もあると考えられます。それでも、順繰りによって党内が丸く収まってきました。
ところが、何らかの拍子で1人が5年以上の長期に渡って首相を務めると、この順繰りパターンが大きく崩れます。昔、中曾根康弘氏が首相在任終盤によく言っていた「待合室が混んできたようです」という状況なのでしょう。
支持率が低下する長期政権後の新政権、スキャンダルで辞任するケースも
もう1つ見逃せないのが支持率の低下です。長期政権を維持するのには、世論調査等による高い支持率や国政選挙での勝利が必要不可欠です。いくら順繰りとはいえ、不人気の首相が長期政権を保てるほど甘くないのです。
実際、長期政権を維持した5人の首相には全て当て嵌まっており、小泉政権時の「郵政解散選挙」に代表される圧倒的な大勝利も決して少なくありません。ところが、長期政権後の首相の多くは、この支持率が大きく低下しています。やはり、前任者の高い支持率を引き継ぐことは難しかったと考えられます。
さらに、長期政権後の首相は、何らかのスキャンダルを引き起こして退陣するパターン(田中角栄氏、竹下登氏、宇野宗祐)しや、体調不良で止む無く退陣するパターン(石橋湛山氏、第1次の安倍晋三氏)も目立ちます。特に、スキャンダルで退陣したパターンは、後々から振り返れば、党内抗争で“刺された”可能性もありそうなものばかりです。
長期政権が続いた唯一の例外、首相就任時は全員が61~63歳
一方、日本国憲法の施行後、長期政権直後の政権も長期政権になった事例が1回だけあります。
岸信介(1957年2月25日~1960年7月19日、1,241日、歴代9位)
→池田勇人(1960年7月19日~1964年11月9日、1,575日、歴代7位)
→佐藤栄作(1964年11月9日~1972年7月7日、2,798日、歴代2位)
今となってはちょっと想像しにくいですが、約15年間で総理大臣が3人だけだった時代があったのです。ちなみに、直近15年間(2005年~2020年)では、新しく総理になった菅義偉氏を含めて8人です(安倍氏を2度数えた延べ人数)。
ただ、この3人の長期政権が続いた時、首相就任時の年齢が岸信介氏:61歳、池田勇人氏:61歳、佐藤栄作氏:63歳であり、政治家としては脂が乗った時期でした。決して年齢だけで判断するつもりはありませんが、菅氏があと3カ月で72歳になることを勘案すれば、激務が続く総理大臣の職を長期間続けるのは容易ではないと見るのが普通でしょう。
重要な政治日程目白押しの中、菅政権は過去のケースを打破できるか
こうして過去のケースを踏襲するならば、思いのほか短命で終わる可能性が高い菅政権ですが、約50年ぶりにこのパターンを打破することができるでしょうか。この先の政治日程に目を向けると、少なくとも1年内には衆議院の解散総選挙があり、また、1年後(来年9月頃)には再び自民党の総裁選挙が実施されます。
こうした政治日程が押し迫る中、喫緊の課題でもある新型コロナウイルスへの対応策を含め、今後出てくるであろう新たな政策に、まずは期待したいところです。
【参考資料】「歴代内閣(https://www.kantei.go.jp/jp/rekidainaikaku/index.html)」(首相官邸)
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