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還暦を過ぎたら考えたい「財産の終活」、リスクヘッジとしての遺言

LIMO / 2020年9月22日 0時10分

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還暦を過ぎたら考えたい「財産の終活」、リスクヘッジとしての遺言

もしものときに備え、終活に取り組む人が多く見受けられるようになりました。2020年7月に一般社団法人信託協会が公表した「信託の受託概況(信託の機能別分類に基づく計数)」においても、その傾向がうかがえます(※1(https://www.shintaku-kyokai.or.jp/archives/038/202007/20200721-2.pdf))。

まずは、この調査のうち「遺言代用信託」に関する項目をみてみましょう。「遺言代用信託」は「委託者が自分の生存中は自分を受益者とし、死亡後は自分の子・配偶者などを受益者とするといった形で設定する信託」を意味しています。

遺言代用信託の新規受託件数の累計は、2019年度末の時点で18万711件となっています。2009年度末の13件と比較すると、この10年間で世間に広く普及したといえるでしょう。

なかでも、財産に関する状況の調査、遺言書の作成の相談、遺言書の保管の引き受けといった「遺言書の保管・執行業務」に関する取扱いの増加が目立っています。同資料より「遺言書の保管件数の推移」をみると、2020年度3月末時点での「遺言書の保管・執行件数(※1(https://www.shintaku-kyokai.or.jp/archives/038/202007/20200721-2.pdf))」は、14万9,406件。これは、10年前となる2010年度末の6万8,911件を倍以上上回る数字です。

(※1)NEWS RELEASE(https://www.shintaku-kyokai.or.jp/archives/038/202007/20200721-2.pdf) 2020年7月21日 一般社団法人信託協会

3種類の遺言、「特徴と注意点を整理」

遺言には3種類あります(※2(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/%EF%BD%91-%E9%81%BA%E8%A8%80%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%A9%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%EF%BC%9F-2))。その様式やメリットと注意点を「自筆証書遺言」「遺言公正証書」「秘密証書遺言」に分けてみてみましょう。なお、いずれも定められた様式で作成し、必要条件を満たしているかが重要となります。

【自筆証書遺言】

様式…遺言者が全てを自筆し、捺印する(2019年1月13日から、財産目録についてはパソコン使用が可能 ※3(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html))

メリットと注意点

特別な手続きをせずに作成でき、他人に内容を知られない

死後発見された遺言書は、家庭裁判所の「検認(遺言書を確認・調査する手続き)」が必要

様式の条件を満たしていない場合は、遺言としての効力を失う

紛失、改ざん、未発見のリスクがあるが、2020年7月10日からは法務局で遺言書が保管可能になった(※4(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00011.html))

【遺言公正証書】

様式…遺言者の指示によって公証人が筆記。遺言者、公証人、および証人(2人以上)が内容を承認し、署名・捺印する

メリットと注意点

公証人が作成するため、様式や内容面での不備が生じにくい

公正役場の遺言書検索システムで遺言の存在を調べることが可能

公証役場への申請が必要

作成手数料(※相続財産の額による)が必要(※5(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/q12))

【秘密証書遺言】

様式…遺言者が遺言書に署名・捺印して封印し、公証役場に持ち込む。封紙に公証人および証人(2人以上)が署名・捺印する

メリットと注意点

遺言の内容を誰にも知られない

内容面で不備があり、無効となる可能性が高い

自分で保管しなければならず、紛失などのリスクが伴う

(※2)「Q. 遺言は、どのような手続きでするのですか?(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/%EF%BD%91-%E9%81%BA%E8%A8%80%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%A9%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%EF%BC%9F-2)」日本公証人連合会
(※3)「自筆証書遺言に関するルールが変わります(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html)」法務省
(※4)「法務局における遺言書の保管等に関する法律の概要(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00011.html)」法務省
(※5)「Q. 公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらいかかるのですか?(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/q12)」日本公証人連合会

遺言が”争続”トラブルを引き起こすケースも・・・

このように、遺言を作成する際は、それぞれの様式に合ったものを用意する必要があります。また、「遺言を用意すれば一安心」とも言い切れません。なかには、遺言がきっかけで思わぬ事態に発展したケースもあるようです。実際に父親の遺言で予想外の展開を迎えた、Aさん(59歳・女性)の経験談をご紹介しましょう。

「生前、父は『あの引き出しに遺言をしまっている』と言っていました。そして父が他界し、指定された場所を探したのですが…結局どこを探しても見つかず・・・。さすがにこの時は、『これでは、他の兄弟と相続トラブルに陥ってしまう』と焦りを感じました。

案の定、遠方に住む弟からは“争族”を匂わすような不平不満が出ました。でも、兄・妹からは『嫁いだあとも、最期まで父の世話をしていたあなたが実家を相続して』と言ってもらえたため、大事にはなりませんでしたが…。

自筆証書遺言の場合は、紛失のリスクを踏まえ法務局で保管してもらう方がいいと感じました」

Aさんは兄弟同士の話し合いで事なきを得ましたが、遺言の紛失は相続トラブルの原因になりかねません。とくに自筆証書遺言は、紛失だけでなく形式上の不備により無効になるケースも存在します。遺言としての機能をきちんと果たすため、「遺言公正証書」の作成を視野に入れるのも1つの選択肢でしょう。

さいごに

自分亡き後、家族や関係者に意志を伝えるための手段として「遺言」に関心を持つ人は増加しています。

「遺言」というと、「何を、誰に、どう託す」といった内容や、メッセージ性の部分に着目されることが多い感があります。思いを込めて作った遺言が紛失や無効になってしまったら、自分亡き後のこととはいえ、むなしいですし、何より相続トラブルの元にもなりかねません。

遺言の作成を「検討中」、もしくは「既に作成している」人は増えています。いずれの場合も記載内容同様、規定の様式を守れているかどうかをじゅうぶん確かめておくことをおすすめします。

【参考】
(※1)NEWS RELEASE(https://www.shintaku-kyokai.or.jp/archives/038/202007/20200721-2.pdf) 2020年7月21日 一般社団法人信託協会
(※2)「Q. 遺言は、どのような手続きでするのですか?(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/%EF%BD%91-%E9%81%BA%E8%A8%80%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%A9%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%EF%BC%9F-2)」日本公証人連合会
(※3)「自筆証書遺言に関するルールが変わります(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html)」法務省
(※4)「法務局における遺言書の保管等に関する法律の概要(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00011.html)」法務省
(※5)「Q. 公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらいかかるのですか?(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/q12)」日本公証人連合会

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