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退職金の受取り方「一時金」「年金」「併用型」で、どのくらい違うの?

LIMO / 2020年9月25日 20時45分

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退職金の受取り方「一時金」「年金」「併用型」で、どのくらい違うの?

退職金の受け取り方には「一時金」「年金」「併用型」があります。受け取り方で、一体どのくらい差が出るものなのでしょうか。また、退職金は全体的に減少傾向にあるともいわれています。今からできる対策はあるのでしょうか。退職金を含めた将来設計について考えていきます。

退職金を「一時金」として受け取った場合

退職給付金を「一時金」として受け取った場合は以下のような取扱いとなります。

退職所得控除額

    勤続年数20年以下の場合:控除額=40万円×勤続年数

    勤続年数20年超の場合:控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20年)

課税の対象となる退職所得の額

次に、退職一時金から控除額を引いて、課税の対象となる退職所得金額を求めます。

課税対象額=(退職一時金-[1]または[2]の金額)×2分の1

通常の所得と比べて課税対象額が2分の1となるため、税制上の優遇が大きいことが分かります。

年金として受け取った場合

退職金を年金として受け取る場合は雑所得に分類され、「公的年金等控除」が適用されます。年金等に該当しない退職金もあるため勤務先に確認が必要ですが、税制上は公的年金や確定給付型年金、確定拠出年金などと同様の取り扱いとなります。

一時金・年金・併用型、どれがお得?

実際、一時金・年金・併用型の金額的な違いはどのくらいなのでしょうか。定年退職金の平均値をもとに受取金額を比較してみましょう。

大学・大学院卒(管理・事務・技術職)

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拡大する(/mwimgs/d/a/-/img_dac92058903015de7b3d0c492df38aa020382.png)

(厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」(2018年)をもとにLIMO編集部作成)

高校卒(管理・事務・技術職)

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拡大する(/mwimgs/9/6/-/img_968d4e41bf8351448801fb3ac756bb7119741.png)

(厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」(2018年)をもとにLIMO編集部作成)

高校卒(現業職)

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拡大する(/mwimgs/c/9/-/img_c990f0eb65718963eecc10068f5db75418124.png)

(厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」(2018年)をもとにLIMO編集部作成)

3種類の中で支給額が一番多いのは両制度の併用となりました。また、税制面の優遇が大きい「一時金」よりも「年金型」の支給額が高くなっています。

ただし年金で受け取った場合は雑所得扱いになるため、国民健康保険に加入した際の所得割額は増加する可能性があります。「健康保険の被保険者期間が2カ月以上」「退職から20日以内に申請手続き」といった条件はありますが、退職後最長2年間は会社の健康保険組合に加入できます(健康保険任意継続制度)。ただその後は国民健康保険に移ることも想定して検討しましょう(「特例退職被保険者制度」を導入している企業であれば、後期高齢者医療制度加入まで会社員時代と同じ健康保険に加入できる場合があります)。

また、退職金で住宅ローンを完済する予定などがある場合は一時金として受け取るメリットも大きいでしょう。退職金の受け取り方法については、個人の状況に応じて総合的に考えてみてください。

退職金は減少傾向?老後は貯蓄でまかなえるのか

2019年に話題となった「老後2,000万円問題」の金融庁報告では、退職給付額が近年減少傾向にあるという点も指摘されていました。退職金は学歴や勤務年数により金額が左右される傾向があり、例えば高校卒で転職経験者だと、勤続年数が35年未満の人は退職金が1,000万円未満になる可能性もあるのです。

働き方の多様化によりスキルを生かした転職も増え、フリーランスとして働く人も増えていますが、生涯で得られる退職金については減少を覚悟していく必要があるでしょう。

また、定年目前の50代世帯の貯蓄と負債の平均値については以下のようになっています。

《50~59歳の貯蓄・負債・収入の状況(2019年)》

貯蓄現在高:1,704万円

負債現在高:652万円(負債のある世帯の割合は55.3%)

年間収入:852万円

貯蓄から負債を引いた純貯蓄額は約1,000万円ということが分かります。

一方、公的年金はどのくらい受給できるのでしょうか。厚生労働省によると現在50代の人が65歳時点で受け取る年金月額は夫婦で約20万~24万円と予想されています(今後の経済成長率により可変)。この受給額は「平均的な賃金で40年間就業した夫と専業主婦の妻」の二人世帯を例として算出しています。

ただし生命保険文化センターの調査によると、ゆとりのある生活を送るには、二人世帯で月額約36万円が必要だとも指摘されています。

まずは勤務先の退職給付制度や再雇用制度などの情報をしっかり確認していきましょう。将来もらえる年金額は「ねんきん定期便」で確認し、現在有している貯蓄と負債の金額を把握して、資金計画を立ててみましょう。

50代は安定的に高収入が得られる最後のチャンスかもしれません。計画的な貯蓄や投資の機会を逃さないよう、老後に備えるための具体的な検討を進めていきましょう。

老後の就労収入と資産運用

日本では労働人口の減少のため、高齢者や主婦層の労働力化を政策的に後押ししています。その一方で、従来の終身雇用制度については、経団連も存続が非常に困難だとの見解を示しています。つまり人手不足でありながら早期退職を求められる…という時代が来ているのです。

欧米では、運用利回りを4%に仮定し、資産運用によって生活費をまかなう「FIREムーブメント」という思想もあります。「FIRE」は『Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期退職)』を指し、積極的な倹約と貯蓄で経済的自由と早期退職を実現することを指しています。

ここで、各人の「働いてお金を稼ぐ力」「資産運用」が重要となりそうです。資産運用だけでは利益も不確実ですし、働き続ける際も病気のリスクや年齢的な限界もあります。そのため資産運用と稼ぐ力の両方を育てることが、不安要素を最小限にしていく現実的な方法だといえるでしょう。

資産運用については、NISA(少額投資非課税制度)・iDeCo(個人型確定拠出年金)などの税制優遇制度もありますので、利回りと税制上のメリットを併せて年利4%を目指す方法もありそうです。

まとめにかえて

人により退職金や公的年金の額は異なり、望まなくても早期退職となる可能性もあります。貯蓄や資産運用に取り組み、継続的な収入を得る準備が必要となるでしょう。家計の見直しや資産運用については、不安であればファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも方法の1つです。

大切な老後の生活に備えて、お金に関する情報はしっかり収集し、正しい情報をもとに着実に準備を進めていきたいですね。

参考

「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm)国税庁
「高齢者と税(年金と税)」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_1.htm)国税庁
「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html)厚生労働省
『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」』(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html)
「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2019年(令和元年)平均結果―(二人以上の世帯)」(https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html)総務省統計局
「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)2019(令和元)年財政検証の資料」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html)厚生労働省
「令和元年度 生活保障に関する調査(速報版)」(https://www.jili.or.jp/research/report/chousa10th.html)公益財団法人 生命保険文化センター

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

【ご参考】年間収入とは

総務省統計局の「家計調査」における「年間収入」とは、世帯全体の過去1年間の収入(税込み収入)です。以下1~6の収入の合計金額となっています。
1. 勤め先収入(定期収入、賞与等)
2. 営業年間利益(原材料費、人件費、営業上の諸経費等を除く。)
3. 内職年間収入(材料費等を除く。)
4. 公的年金・恩給、農林漁業収入(農機具等の材料費、営業上の諸経費等を除く。)
5. その他の年間収入(預貯金利子、仕送り金、家賃収入等)
6. 現物消費の見積り額

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