勉強のできる子が辛い目にあう「浮きこぼれ」 スポーツ万能なら褒められるのに…なぜ?
LIMO / 2020年9月27日 12時0分
![勉強のできる子が辛い目にあう「浮きこぼれ」 スポーツ万能なら褒められるのに…なぜ?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_19439_0-small.jpg)
勉強のできる子が辛い目にあう「浮きこぼれ」 スポーツ万能なら褒められるのに…なぜ?
日本の義務教育である小中学校では一斉授業のスタイルが主流です。全員が同じペースで授業を受けて問題を解いていきますが、中にはクラスメイトの何倍もの速さで終わらせる子もいます。
実力があっての速さなのに、「先生がスタートと言う前から問題を解いていたんだろう」などと言われて傷つくこともあるようです。学力が高いことで、俗に「浮きこぼれ」と呼ばれる子どもたちはこの問題をどうクリアしていけばよいのでしょうか。
「浮きこぼれ」の悩みをつぶやく子ども
学力格差の問題がメディアなどで話題になるとき、たいがいは授業についていけない「落ちこぼれ」の観点です。しかし、クラスメイトより学力が高いことで授業中に目立ってしまい、嫌味を言われたり疎外感を感じる「浮きこぼれ」のケースもあります。
授業の理解や計算などが同級生よりも格段に速い子は、一見すると恵まれていますが、当の本人は悩みを抱えていることも少なくありません。特に地方の公立学校では、学力がある子に対して「勉強ばかりしている」と揶揄し、勝気な子からは「ズルしている」と理不尽に責められることも。
筆者が塾講師をしていた時、勉強ができることが原因で悩んでいる生徒に出会ったことがあります。ガリ勉タイプではなく、理解力が格段に高い子でした。他人から見れば何ともぜいたくな悩みかもしれませんが、当事者の悩みは深刻なものでした。
学校の授業がつまらないとは感じないものの、同級生からの妬みとも思える言動に心を痛めていたのです。「運動神経のいい子は褒められるのに、問題が解けると周囲から冷たくされるのは納得できない」とつぶやいていたのが印象的でした。
学力の高い子に嫌味を言うのはなぜ?
地方全般に言えることではありませんが、首都圏や近畿圏のように中学受験が浸透していない地域では、小学校時代に良く勉強している子や際立って勉強ができる子を目の敵にするような無意味な偏見が残っていることもあります。「こんな早くから勉強させなくても」という空気が優勢なのです。
地方の新興住宅街の近くの塾に勤務していた時には、小学生の子どもを塾に通わせることで「教育ママ」と陰口を叩かれていた保護者がいました。その反対に、周囲の声を聞いて「子どもを通塾させるのは早すぎたのではないか」と悩む保護者もいました。
もちろん親によりけりなのですが、地方では「小学生は伸び伸びと過ごすもの」という考えを持つ人も少なくありません。また、大学進学で子や孫が地元を離れてしまうことに否定的で、高等教育に嫌悪感を抱く年配の方も存在しています。
この考えは代々受け継がれ、祖父母がそうであったように親が学力の高い子や塾に通っている子に対して「勉強ばかりしていて可哀そう」などと家庭内で口にしていると、子どももその考えに染まってしまいます。そして、無意識のうちに勉強のできる子に対する嫌味を口にしてしまうのでしょう。
アクティブラーニングで変わる学習環境
「子どもは外で遊ぶもの」「運動能力が高い子が褒められる」という雰囲気は、小学校高学年や中学校になると大きく変わっていきますが、小学校6年間の子どもへの影響は無視できません。日頃から我が子の様子を観察し、少しでも気になる言動があればじっくり耳を傾けてみることも必要です。
また、今でも一斉授業スタイルが軸ではありますが、文部科学省の教育改革によりアクティブラーニングが導入されています。
親世代の頃に比べてグループ学習や発表する機会が格段に増えており、学力のある子の活躍する場が多くなっています。こうした学習スタイルでは、低学年の間は冷やかしの対象になっていても、高学年になれば大活躍してクラスメイトから頼られる存在へと変貌していくのです。
また、問題をすぐに解いた子が分からないで困っている子を教えたり採点する「ミニ先生制度」を実施しているケースもあるなど、公教育が変化し、地方でも学力のある子は学年が上がれば上がるほど存在感を増す土壌ができてきています。
外野の声に負けないで!
地方の勉強ができる子は、教育熱がものすごく高い家庭なわけでもないのに周囲に勝手な噂を流されることがあります。「出る杭は打たれる」とは言いますが、悪いことをしていないのに辛いことを経験することもあります。
こうした”空気”がそう簡単になくなるとは思えませんが、様々な知識を得て視野を広げることは子どもの未来を明るいものにします。
現在の公教育は知的好奇心のある子が活躍できるようになってきています。「運動や友達と遊ぶことも大切だけれど、コツコツ勉強することは将来の選択肢を広げ、人生を豊かにすると」説明し、子どもに寄り添いながら外野の声を気にしない心を持つ子に育てていきたいですね。
【参考資料】「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2020/01/28/20200128_mxt_kouhou02_01.pdf)」(文部科学省)
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