教室に響く「倍返しだ!」〜半沢直樹から銀行員を知る子どもたち
LIMO / 2020年10月8日 11時0分
![教室に響く「倍返しだ!」〜半沢直樹から銀行員を知る子どもたち](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_19687_0-small.jpg)
教室に響く「倍返しだ!」〜半沢直樹から銀行員を知る子どもたち
当初予定されていた4月14日スタートが新型コロナウイルスの影響を受け、約3カ月後の7月19日に放送開始となったTBS系日曜劇場『半沢直樹』。前作から7年の時を経てもその人気は衰えることなく、高視聴率を連発し、ツイッターでも全10話で世界トレンド1位を叩き出すなど社会現象になりました。
昭和や平成中期までのような、人気テレビ番組が学校で話題の中心になる時代は過ぎ去りました。しかし、半沢直樹は別格のようで、小学校の教室内で「倍返しだ」の名台詞がたびたび響き渡っているといいます。子どもたちの目に、銀行員はどのように映っているのでしょうか。
子どもにはわかりにくい「金融の世界」でも人気に
トレンディードラマが一世を風靡したバブル時代も、その後長く続いた不況時代も、ドラマの世界は基本的に男女の恋物語を軸にしたものが人気を集めていました。しかし、2000年代後半に入ると「草食系男子」という言葉が登場し、若者の恋愛離れが指摘され始めます。
そして時代の空気を読み取るかのように、テレビドラマは恋愛ものに代わって刑事ものや医療ものなど特定の職業をめぐる物語へと流れを変えていきました。
一般に、親の好きなドラマを子どもが一緒に見ることは珍しいことではありません。近所のママ友は親子で法廷ドラマに夢中になり、娘さんが弁護士になりたいと口にするようになったそう。そんな様子を見たママ友は、渡りに船とばかりに「勉強しようね」と声をかけたといいます。
普段の生活ではあまり接点のない弁護士ですが、ドラマを通じてその仕事内容を知り、憧れることもあります。医療や刑事ドラマは子どもでも主人公の仕事内容の想像がつきやすく、すんなりと理解できる世界かもしれません。
しかし、半沢直樹は銀行や証券という金融の世界が舞台となっています。今回、IT企業の買収や企業再建に政治家の汚職も絡み、子どもにとってわかりやすい内容とはいえませんでした。それでもセリフを口にするほど浸透しているのは、エンタテインメントとしての完成度の高さを物語っているのでしょう。
普段は子どもにとって縁遠い銀行
しかし、半沢直樹独特の長セリフや、金融業特有の専門用語の数々を子どもが全て理解しているとは思えません。成長し、アルバイトをするくらいの年頃になれば、銀行の役割を理解できるようになるでしょうが、子ども時代は街中で銀行の支店やATM機を見かけるわりには、一番遠い存在の職種かもしれません。
それにもかかわらず「倍返しだ」がクラスの中で飛び交っているのは、時代劇のように善と悪が明確なことが大きいと思われます。かつての敵と協力して真相究明をしていく物語の展開は面白く、不正を暴くことに奮闘する様は子どもでも細かいところを気にせず楽しめる内容だったからです。
幼稚園に通う筆者の末っ子にも冗談半分で「倍返しだ」と言っている子がいるか聞いてみたところ、「いるよ」との返答があり驚きました。小学生だけでなく園児の世界にも浸透している半沢直樹を通じて「銀行員はカッコいい職業」と思うようになるかもしれません。
銀行員が正義のヒーローに?
小学生を対象にした職業のアンケートで、ユーチューバーがランクインするようになったことはよく話題になりますが、子どもは日頃から楽しそうだったりカッコいいと思う職業に憧れを抱くものです。男児がスポーツ選手になりたいのはカッコよさゆえでしょうし、女児に人気のパティシエも、ケーキが好きだからというのが大きな理由でしょう。
一方、銀行員を含むいわゆるサラリーマンは、ざっくり「会社員」として扱われます。会社員になりたいと回答する子どもたちも、どんな業種かまで細かく考えているわけではないでしょう。しかし、半沢直樹が社会現象になった今は、少々イメージが変わったかもしれません。
筆者の子どもたちにドラマの感想を聞いたところ、「不正を暴かれた悪者がひれ伏すのは気持ちがいい」「料亭や小料理屋で食事できるのはうらやましい」と正直に答えてくれました。倍返しという言葉も、”ヒーロー”である半沢直樹が口にしているから子どもたちも言ってしまうのでしょう。
先行き不安の銀行業界の光明となるか
キャリタスリサーチが2020年1月に発表した「2021年卒業生の就職意識調査(2020年1月1日時点)」の志望職種ランキングで、銀行は文系の男女でそれぞれ2位と3位になっていますが、文系理系を合わせた総合ランキングでは10位です。
バブルやその後の不況でも高い人気を誇っていた金融業ですが、多くの業務がAIに取って代わられるのではと指摘されるようになりました。しかし、経済活動が続く限り銀行の役割が消えてしまうというわけではありません。半沢直樹ブームは、子どもたちが銀行や証券の世界に関心を寄せるきっかけになるかもしれませんね。
【参考資料】「キャリタス就活2021 学生モニター調査結果(2020年1月発行)(https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2020/01/202001_gakuseichosa-.pdf)」(株式会社ディスコ)
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