菅首相の「学歴は関係ない」が話題に。ではなぜ世間は「学歴」を求めるのか?
LIMO / 2020年10月11日 18時0分
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菅首相の「学歴は関係ない」が話題に。ではなぜ世間は「学歴」を求めるのか?
大事なのは「学習歴」
現在、横浜市議を務める遊佐大輔氏が、かつて菅首相の秘書になるときの会話がツイッターなどで話題になっています。
「私は高卒ですが、それでも大丈夫ですか?」と遊佐氏が尋ねると、菅首相は「過去の学歴は関係ない。あるのは、いまと未来だ。一生懸命頑張れ」と。
「地盤(ジバン)」「看板(カンバン)」「鞄(カバン)」がなかった菅首相らしい言葉です。菅首相の経歴については報道のとおりで、叩き上げの苦労人であることは間違いありませんから、「学歴は関係ない」発言には説得力があります。そこで、今回は「学歴」について考えて見たいと思います。
なぜ「学歴」を求めるのか
「学歴は関係ない」・・・この言葉は、学歴がなくてもそれなりの地位に就いた人が語る場合、あるいは学歴があっても学歴では測れないもの(人間性など)を持ち合わせていない人を揶揄する場合に使われるように思います。それではいったい「学歴」とは何なのでしょうか。
学歴とは「初等,中等,高等の教育段階のうちどの段階を修了したか」を示すとともに,「各段階の学校自体の格差や序列のなかでどの程度の学校を出たか」を指す概念ですが、特に後者の意味で使われる場合が多いでしょう。
では、皆どうして学歴を求めるのでしょうか。一般に高学歴ほど高い職務,地位,所得をもたらすと言われ,序列の高い学校への入学には熾烈な競争があります。
しかし、少子化時代とはいえ大学数が増え、大学への進学率が高まるという国民全般の高学歴化に伴って、学歴は一定の能力水準と対応しなくなりました。また、長く続いたデフレや就職氷河期などの時代を経た今では、必ずしも高学歴イコール高地位、高所得とは限らないことも事実です。
いずれにしても「学歴」は単なるランドセル・レッテルに過ぎないのです。たとえ最高学府と言われる東大のランドセルを背負っていても、中が空っぽでは意味がありません。しっかり中身のある重いランドセルにする必要があります。
「学歴」ではなく「学習歴」が大事
この「学歴」問題は、現在の我が国の教育体制、特に大学入試や大学教育そのものと密接に関係しています。筆者は、「大学進学が目的化している教育を改め、社会で働いていくことを念頭に置いた教育に変えるべきだ」と常日頃から考えてきました。しかし、これができていないのが現実です。
「人生を生き抜く人間力」は、一時の試験結果の点数よりも重要であることは当然のことでしょう。しかしながら、我が国の社会の考え方には、相変わらず有名学校入学主義、高学歴主義、大学進学目的主義、偏差値至上主義が根強く残っています。
単なる大学入試の難易度によって、学歴の評価が決まってしまうのは理不尽です。大学のレベルに関しては、国立大学を私立大学より上位と見る向きもあり、受験産業では私立大学の階層を示す「早慶上智」「MARCH」「関関同立」「日東駒専」「大東亜帝国」などという表現が使われます。しかし、こうした単純化は嘆かわしいことです。
筆者は、かつて勤務していた大学で、入学してきた新入生に次のようなとメッセージを送ってきました。
「皆さんの中には、偏差値の高い大学に入学したので喜んでいる方もいれば、一方で偏差値が足りずに仕方なくこの大学に入学し、劣等感にさいなまれている方もいるかもしれません。しかし、エリートだといって喜ぶのも、また劣等生だといって悩むのも、全く意味がないように思います。なぜならば、大学に入るだけでは勝負は決まらないからです。
実は、本当の勝負はこれからで、本当の勉学はこれから始まります。能動的に、自らの脚で何をどう勉学するのか、これからは『学習歴』が求められます。『学歴』ではなく、二文字の間に『習』という字を入れた『学習歴』が重要です。新入生の皆さん、『能動的な学習歴』を目指して下さい」
当たり前のことですが、学歴はゴールではありません。大学入試を変え大学教育が変われば、我が国の教育も変わるはずです。その具体策については稿を改めたいと思います。
我が国の教育を考える
大学は専門家を育てるだけの場所ではありません。それどころか、民間企業や官公庁など実社会で働く上で必要なバランスのとれた思考力と教養を有する人材を育てる場所です。
どのような職業に就こうとも、その前に人間としての力量、人間としての器が重要であることは自明なこと、それが「生きるための人間力」です。これは何も大学教育に限ったことではなく、我が国の教育全般に関わることです。
「教科を教えることから、人間を教える」教育に転換することが必須と思います。我が国の教育を変えるためには、当たり前ですが、教育の原点である「人間教育」を、時間をかけて実践するしか妙案はありません。「偏差値を上げることを目的とした教育からの脱却」は長年言われていることですが、そろそろ本当に真剣に取り組むべきではないでしょうか。
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