日本海にも中国の触手が伸びる!? 北極海航路に虎視眈々の中国
LIMO / 2020年10月8日 20時0分
日本海にも中国の触手が伸びる!? 北極海航路に虎視眈々の中国
天然資源の宝庫と言われる北極海。現在世界で採取されていない石油の13%、天然ガスの30%が眠っているとされ、国家間の資源獲得競争の新たな場所になっている。
米国のポンペオ国務長官は2019年5月、訪問先のフィンランドで北極海を巡る情勢について演説し、「北極海は新たな戦略空間となっているが、関係各国は共通のルールに基づいて行動するべきだ」との認識を示し、また、「北極海を新たな南シナ海にしてはならない」と中国を強くけん制した。
中国が「氷上のシルクロード」構想で北極海に照準
北極海に領海や排他的経済水域(EEZ)を持つ国は、米国とロシア、カナダ、ノルウェー、デンマークの5カ国で、この5カ国が中心となる北極評議会が北極海の行方について話し合うが、中国はオブザーバー国として長年参加し、北極開発のルール作りで影響力を高めようとしている。
中国は2018年1月、北極開拓についての戦略を掲げた「北極白書」を初めて発表し、ロシア側の北極海沿岸を通ってアジアと欧州を結ぶ第3の一帯一路、「氷上のシルクロード」構想を打ち出した。
また、ロシアやノルウェー沿岸、アイスランドやデンマーク領グリーンランドへ投資を拡大したり、独自の砕氷船「雪竜」で北極海横断を成功させたりするなど、積極的な関与を見せている。
中国が北極海航路を好む理由は他にもある。それは東アジアと欧州を結ぶ海上貿易路を考えた場合、たとえば、東京ロンドン間はスエズ運河経由では約2万1000キロ、パナマ運河経由では2万3000キロだが、北極海航路では1万6000キロと大幅なショートカットになるのだ。
もちろんブリザードなど北極の厳しい気象条件を考えると決して簡単な道のりではないが、掛かる日数や輸送燃料費などからすると北極海航路が魅力的であるのは事実だ。
日本の海洋安全保障環境を変える中国の北極海進出
しかし、中国が氷上のシルクロード構築に向けて本腰を入れるということは、それは必然的に日本近海を通過することになる。具体的には、九州の北にある対馬海峡から日本海に出て、宗谷海峡や津軽海峡を抜けベーリング海に抜けるルートだ。
また、中国吉林省の最東端に「琿春」という都市がある。ここは中国とロシア、北朝鮮の3カ国の国境地帯で、中国国境の先から日本海までは約15キロの距離にあり、現在北朝鮮とロシアが日本海に面し、中国国境の延伸を防ぐ形となっている。
だが、中国が北極戦略を重視するようなれば、そこが戦略的要衝となり、港の使用権などで北朝鮮へ積極的に根回しをしてくる可能性もある。
いずれにせよ日本海が新たな覇権海域になるのであり、日本の海洋安全保障環境を大きく変える恐れがある。中長期的には、中国が軍を交えて氷上のシルクロード構築に乗り出している可能性も否定できず、日本の国防上も重大な問題である。
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