元証券マンが解説、貯金を上手く増やす投資法
LIMO / 2020年10月9日 5時30分
元証券マンが解説、貯金を上手く増やす投資法
給料が安定して上がり続ける時代が終わる一方、税金や社会保険料などの負担は増すばかりです。
しかし、低金利が続いているため、貯金していても残念ながらお金はほとんど増えません。
これからは貯金だけでなく資産運用の力を借りて、資産を増やしていくことが必要な時代になっているのです。
貯金だけではお金が増えない
2019年の「老後資金2,000万円問題」で資産運用に関心のある人が増えています。
しかし、わが国の家計の金融資産は、ほとんどが金利のつかない預貯金です。
2018年3月時点 での日本の現預金比率は5割程度なのに対し、米国は1割程度。
一方、株式や投資信託などのリスク資産の割合は、米国が5割弱なのに対して日本は1割強にすぎません。
1998年からの20年で見ると 、米国の家計の金融資産は2.7倍に伸びていますが、日本は1.4倍にとどまっています。
これは、運用リターンの違いが主な原因と考えられます。
金融資産を増やしていくためには、株式や投資信託などで資産運用をおこなう必要があるのです。
では、資産運用をどのようにおこなっていけばいいのでしょうか。
資産運用の手順とは
資産運用をするとき、いきなり株や投資信託を購入してしまう人もいます。
しかし、投資をするのには順番があります。
順序としては、以下の通りです。
ステップ1:運用額の決定(リスク許容度の認識)
ステップ2:安全資産とリスク資産の割合を決定(株式や債券など金融資産ごとの配分、アセットアロケーション)
ステップ3:具体的な商品を決めて証券会社等で購入
それでは、資産運用の手順を具体的に見ていきましょう。
ステップ1.0:運用額を決める
株式や投資信託などには「儲かる」というイメージがありますが、損失がでるリスクもあります。
大きな利益を期待してリスクをとりすぎれば、あっという間に家計は破綻してしまいます。
たとえば100万円しか貯金がないのに、すべてを株式につぎ込むのはギャンブルにすぎません。
そこで自分が許容できるリスクを認識しながら、安全に守るべきお金と、資産運用に回せる額を決めます。
資産運用には「貯蓄」と「投資」の2つがあります。
貯蓄とはお金を蓄えることで、預貯金などです。
一方の投資とは利益を見込んでお金を運用することで、株や投資信託などの購入などを指します。
投資に回せるお金は、以下の式で求めます。
投資に回せるお金=現在の金融資産-6カ月分の生活費-5年以内に使う可能性のあるお金
安全に守るべきお金は、自由に引き出せる預貯金(貯蓄)の形で持っておくことが大切です。
まずは、6カ月程度の生活費を手元に残しておきましょう。
仮に月30万円使う場合は、30万円×6カ月=180万円になります。
また、家を購入するための頭金や学費など、5年以内に貯蓄から取り崩す見込みの金額を差し引きます。そして、残ったお金が投資に回せるお金になるのです。
この範囲内で運用すれば、もし失敗してもライフプラン(将来に向けた人生の設計図)の実現に支障はありません。
ステップ2.0:アセットアロケーションを決定
投資額を決めたら、投資対象を決めます。
金融商品はいろいろありますが、主に安全資産とリスク資産に分類できます。
安全資産とは損失のでるリスクが低い資産で、預貯金や日本国債などです。
ただし、リスクが低い代わりにリターンも低くなります。
一方のリスク資産とは、リスクがある代わりにリターンも期待できる商品で、株式や外国債券などがあります。
投資信託は組み入れている商品によって、安全資産にもなれば、リスク資産にもなります。
日本株式や外国債券などの資産に資金配分することを「アセットアロケーション」といいます。
アセットアロケーションの基本は、国内債券、外国債券、日本株式、外国株式の4つにバランスよく配分することです。
公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内債券、外国債券、日本株式、外国株式などに分散して投資しています。
GPIFの2001年度から2020年度第一四半期までの約20年間の収益率は、年率+2.97% です。アセットアロケーションを決める際は、GPIFのアセットアロケーションを参考にし、リターンを高めたいときは株式の比率を高め、リスクを抑えたいときは債券の比率を高めるようにします。
ステップ3.0:具体的な金融商品を購入する
アセットアロケーションを決めたら、株式や投資信託などの具体的な銘柄や数量を決め、証券会社などの金融機関で購入します。
まとめにかえて
貯金だけでは、なかなかお金は増えていきません。
ある程度の貯金が貯まったら資産運用をはじめると良いでしょう。
ただし、その時に株式の一括投資などリスクの高い方法では資産を大きく減らしてしまう恐れがあります。
リスク資産と安全資産の比率を考え、適切なアセットアロケーションを決める必要があるのです。
アセットアロケーションを決めるときは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオを参考にしましょう。
そして、リターンを高めたいときは株式の比率を高め、リスクを抑えたいときは債券の比率を高めるようにします。
もし、実際にアセットアロケーションを決めるのが難しいという方は、日本ではまだあまりなじみがありませんが、米国や英国のようにお金のプロである投資アドバイザーに相談してみるなども選択肢の一つです。
お金のプロに相談するメリットはライフプランを考えた適切な資産配分を決めることができることです。
また、資産運用は20~30年と長期に渡っておこなうことでリターンが安定するものです。
短期的な収益を考えるのではなく、長期的な視野で資産運用を考えるようにしましょう。
参考資料
金融庁「人生100年時代における資産形成」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190412/03.pdf)
GPIF年金積立金管理運用独立行政法人「2020年度の運用状況」(https://www.gpif.go.jp/operation/the-latest-results.html)
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