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コロナ禍で加速「ジョブ型雇用」…その陰にやりがい搾取?

LIMO / 2020年10月12日 19時15分

コロナ禍で加速「ジョブ型雇用」…その陰にやりがい搾取?

コロナ禍で加速「ジョブ型雇用」…その陰にやりがい搾取?

2020年4月より施行された同一労働同一賃金制度にともない、「ジョブ型雇用」への移行に向けた整備を進める企業が増えています。

雇用環境が変わっていく中、労使ともにやりがいが意識される環境では、労働者たちが「やりがい」を求めていることがうかがえます。労働者のモチベーションを悪用した「やりがい搾取」にも気をつける必要がありそうです。

コロナ禍で加速する「ジョブ型雇用」とは

ここで、「ジョブ型雇用」の説明の前に、日本の企業の雇用形態をおさらいします。

メンバーシップ型雇用とは?

これまで、日本の多くの企業は「メンバーシップ型雇用」を採用してきました。

メンバーシップ型雇用は、新卒を一括採用し、年功序列で終身雇用といった制度で、人ありきで仕事を割り振るというスタイルです。

企業が社員を育成することが前提となっており、安定的な雇用が確保されるというメリットがありました。誰かが辞めた際、新たな雇用の必要性が発生しますが、役職名で募集がかかるなど職務の範囲があいまいでした。

「ジョブ型雇用」とは?

一方、「ジョブ型雇用」は、いわば業務を進めるために必要な人材が採用されるスタイルです。

募集の際にはどのような業務にあたるかが職務記述書として明確に提示されます。役職や人数など組織構成の都合ではなく、進めるべき業務を基準にして必要なスキルを持つ人材が集められるのです。採用時のマッチ度は、職務記述書に記載された内容で測られます。

「ジョブ型雇用」では給与も年齢や職歴を問わず、その会社でどの業務を担うかに連動します。職務記述書に照らして成果を見れば明白、労使で判断がずれることも少ないでしょう。

個々の能力やパフォーマンスがさらに問われる雇用環境となりますが、世界的にはすでにスタンダードな雇用スタイルとなっています。

コロナ禍を経験した日本企業の多くが、今まで以上に成果を求めなければ生き残れない危機的状況を迎えました。これが、このジョブ型雇用への移行がさらに進むきっかけとなったのです。

働く環境の変換期、何を求めて働くの?

Unipos(株)が、「ジョブ型雇用への移行に伴う組織課題」(全国の上場企業に勤務する20~59歳の男女1,032名が対象)についての意識調査を2020年2月に実施しました。(※)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000036775.html)

「会社に大切にされていると感じるのはどのようなときですか?」という質問に対し、もっとも多い回答は「成果をあげた仕事について感謝された時(493票/1,032名の一般社員)」でした。続くのは、「ちょっとした貢献にも周囲から過程、努力を認められた時(450票)」です。

この調査は、同一労働同一賃金が施行される直前に行われたものですが(中小企業は2021年4月から適用)、この時点ですでに、企業と従業員の関係性の希薄化が懸念点として挙がっていました。

同一労働同一賃金の適用により広がる「ジョブ型雇用」は、懸念の元となる要素をはらみやすいようです。上記の意向を満たせるような、「働きがい(やりがい)」を感じることにつながる取り組みが、人材流出回避の糸口になるのかもしれません。

やりがい搾取には要注意!

自分自身が仕事にやりがいを感じることは充実にもつながり、モチベーションも保ちやすくなります。

ただ、その「やりがい」を都合よく利用され、支払われるべき報酬が得られないという事態に陥らないように注意しなければなりません。

「やりがい搾取」されてない?

仕事に対してのやりがいや充実感を、雇用主などに不当に利用され、報酬以上の仕事(長時間労働など)を求められることを「やりがい搾取」といいます。教育社会学者の本田由紀氏により生み出され、広く知られるようになりました。

たとえば、自分の趣味を仕事にしている人。好きで、面白い仕事をして賃金をもらうのだからあまりわがままはいえないと考えがちのようです。意見をすれば仕事がなくなるかも……という不安もあるでしょう。

責任感の強い人は、「ほかの人も自分と同じ立場なのだから、自分も我慢しなければ……」と思って頑張りすぎることも。自分が仕事を休んだり、辞めたりすると周りに迷惑がかかると考えてやりがい搾取から抜け出せなくなることも多いようです。

自分で何かおかしいと気づいても「やりがい」とのジレンマが働きます。体調不良に陥る可能性もあり、精神的にも大きな負担がともなうでしょう。転職活動をしたくても長時間労働がその時間を与えてくれません。

大切なことは、搾取に嵌まらないよう、自分の働き方を客観視することです。自分の心身の健康に不調が生じてからでは、やりがい搾取から逃げることが難しくなります。

労働環境に疑問を感じたら一人で抱え込まずに、公的機関や弁護士など、やりがい搾取に関して知識がある人に相談することも頭に入れておくと良いかもしれません。現在の労働状況を相談すれば解決に向かうきっかけが掴めることもあります。

まとめ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でテレワークが増えたという人も多いでしょう。

自宅での仕事は休憩を取ることを忘れやすいですし、残業の届出も遠慮がちになることがあるかもしれません。気づかぬうちにやりがい搾取を受ける結果とならないよう、自分の働く環境を振り返っておくことをおすすめします。

参考

(※)「ジョブ型雇用への移行に伴う組織課題」に関する意識調査 Unipos株式会社(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000036775.html)

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