男と女の生涯年収、どれくらい違う?学歴や雇用形態で比較
LIMO / 2020年10月11日 17時45分
男と女の生涯年収、どれくらい違う?学歴や雇用形態で比較
男女雇用機会均等法が制定されてから35年経ちますが、まだまだ仕事における男女格差の解消には至っていないのが実情です。女性が仕事を続ける上で、妊娠、出産、育児の問題は大きく、正規雇用者として働き続けることを困難にしたり、昇進の道が閉ざされる要因になることもあります。
こうしたことが、生涯に受け取る賃金の総額にどの程度影響するのでしょうか。男女の生涯賃金をデータで比較してみたいと思います。
男女の生涯賃金を比較すると…
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)の『ユースフル労働統計』(2019)の調査による男女の生涯賃金の比較を見てみましょう。
学校を卒業して、すぐにフルタイムの正社員として働き始めて、60歳で定年を迎えるまでに得た賃金の総額(退職金は含まない)を、男女別、学歴別でグラフに表しました(グラフ参照)。
フルタイム正社員の男女別生涯賃金
男性の場合、すべての学歴で生涯賃金は2億円を超えていますが、女性の場合、2億円を超えるのは大学・大学院卒だけです。男性と女性とでは、高専・短大卒でおよそ4,000万円、他は5,000万円以上の開きがあります。
このデータは男性も女性も60歳までフルタイムの正社員として働いた場合の差なので、たとえば女性が途中でパートに切り替えて労働時間が大きく減ったわけではないことを考えると、職種の賃金差や昇給などの要素が影響していると推測されます。
次に非正社員の生涯賃金を見てみましょう(グラフ参照)。
フルタイム非正社員の男女別生涯賃金
学校を卒業したあと、非正社員のフルタイムで60歳まで働いた場合の生涯賃金は、男女共に2億円には届かず、男性は1億3,000万円から1億5,000万円程度、女性は1億円を少し超えたくらいとなっています。特に大学・大学院卒の男性の場合、正社員と非正社員では約1億1,300万円もの差がついています。
正社員と非正社員の賃金の差は、雇用形態による賃金格差といえますが、どちらの場合も女性は男性よりも低い賃金となっています。
男女間の賃金格差は、さまざまな要因によって生まれますが、学歴や雇用形態以外にも、勤続年数や企業規模なども賃金に大きく影響します。
男女の賃金格差はどのくらい?
以下のグラフは男女間の賃金格差を学歴、勤続年数、企業規模の分布を共通にし、構成比を調整して表したものです。(調整する前のグラフも一緒に示されています)。男性を100%とした場合の女性の給与の割合を示しています(グラフ参照)。
1990年から2018年までの統計において、75%から80%の間で推移しており、僅かながら格差が縮小していることがわかります。学歴や勤続年数、企業規模を調整する前のグラフでは、格差の縮小幅がより大きくなっています。これは女性の学歴や勤続年数などが男性に近づいてきていることの表れとの分析がされています。
しかし、この統計を見て思うことは、依然として女性は男性に比べて2割程度賃金が低いということです。それは、家庭と仕事の両立という問題が、女性に偏るために、どうしても男性と比べて、仕事に多くのエネルギーを振り分けられないことが影響しているように思います。
長く働き続けられない、補助的な仕事にならざるを得ないとなれば、当然賃金も低くなります。
世界の男女間賃金格差
日本のこうした男女間の賃金格差は、国際社会の中ではどのような位置づけとなるのでしょうか。主要先進国との比較データをグラフにしました(グラフ参照)。
数値が大きいほど、男女の賃金格差が大きくなりますが、日本は韓国に次いで格差が大きくなっています。北欧の国などと比べると4倍近い差があります。年々格差は縮小しているとはいえ、まだまだ日本では根強い男女格差があることがうかがえます。
女性が30歳で仕事を辞めてしまうと…
男女の生涯賃金の比較では、フルタイムで定年(60歳)まで働くことが前提となっていますが、女性の場合、子育てなどのライフスタイルの変化によって、仕事を辞めたり、フルタイムで働くことを断念したり、キャリアを中断するケースが珍しくありません。
たとえば、年収400万円の収入があった女性が30歳で仕事を辞め専業主婦になった場合、生涯賃金は約3,000万円となります。最初のグラフのように、60歳まで働いた場合の2億円近い生涯賃金のたった15%です。
子育てが一段落したあと、再就職をするケースも多いと思いますが、一度キャリアが中断されると、低い賃金からのスタートとなってしまうことが考えられます。こうした低賃金での就業は年金額にも反映されるため、60歳まで仕事を辞めずに続けた人とキャリアが中断された人の生涯における賃金差は男女差以上のものとなるでしょう。
人生100年時代といわれる中で、定年の後ろ倒しは避けられなくなっています。長く働くことを考えた時、産休、育休制度の利用など、女性のキャリアが中断されない仕組み作りが必要であり、このような制度を躊躇せずに利用できる世の中が実現できれば、男女格差も自然と解消されるように思います。
参考
『ユースフル労働統計 2019―労働統計加工指標―21 生涯賃金など生涯に関する指標』(https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2019/documents/useful2019_21_p314-358.pdf)JILPT
『ユースフル労働統計 2019―労働統計加工指標―15 各種の賃金格差』(https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2019/documents/useful2019_15_p239-252.pdf)JILPT
『データブック国際労働比較2019(5.賃金・労働費用)』(https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2019/ch5.html)JILPT
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