クラウドワークスにはコロナ禍が追い風、株価の昨年ピーク超えはあるか?
LIMO / 2020年10月21日 20時0分
クラウドワークスにはコロナ禍が追い風、株価の昨年ピーク超えはあるか?
新型コロナウイルスによる経済への影響は深刻です。小売・飲食業界が外出自粛によって休業を余儀なくされたことは言うに及ばず、自動車販売の低迷などによりサプライチェーンも打撃を受けました。実際、今期の業績が最終赤字になる予想を発表する上場企業も少なくありません。
クラウドワークスの主力事業は?
コロナの収束が見えない中でも、クラウドソーシング大手のクラウドワークス(3900)は、主力事業の成長を見込んでいます。その理由はどこにあるのでしょうか。
事業内容
まずは事業内容を確認しましょう。クラウドワークスの事業はマッチング事業と受託事業の2つです。
主力事業であるマッチング事業では会員向けサイトやアプリを通じて求職者と発注者のマッチングの場を提供しています。発注者が提示する仕事内容、報酬に対して求職者が応募し、両者が同意したらマッチングできる仕組みで、報酬の一部がシステム利用料としてクラウドワークスの収入になります。発注されている仕事としてはプログラミング、動画編集、ライターといったものが多く見られます。
一方の受託事業は企業に対してプロジェクト管理システムなどを開発する事業ですが、今後はマッチング事業に資源を集中するため、事業規模を縮小する模様です。
コロナによる影響
主力のマッチング事業では、コロナによる影響がプラスに働くでしょう。まず、フリーランスの間では、対人業務に関わる求人が減少しており、代わりにクラウドワークスが発注するようなPCを使った仕事のスキルが求められています。
一方で会社員に目を向けると、テレワークの導入により通勤時間を削減できるようになったため、副業を始める余裕が生まれたというケースが出てきています。また、会社として時間管理からタスクで管理する方針に変わり、副業を解禁する企業も現れています。
副業しやすい環境が広まりつつある中、感染リスクの少ない在宅の副業は魅力的です。PCを使ったタスクの仲介を中心とする同社のマッチング事業は、ウィズコロナの環境下でよりニーズが高まることが期待されます。
近年の業績と株価
同社の売上高は2017年9月期から2019年9月期にかけて29.3億円⇒66.3億円⇒87.5億円と推移し、20年9月期は第3四半期までが70.7億円で通期予想が85.5億円と成長が続いています。背景にはクラウドソーシング自体の認知度上昇に加え、クラウドワークスが展開したテレビCMの効果により同社サービスの利用者数が増えたことがあります。
営業利益の推移は2017年9月期から2019年9月期にかけて▲3億3,500万円⇒2,300万円⇒4,800万円で、20年9月期は第3四半期までが▲9,800万円に対し通期予想は▲5億円~▲6億円という範囲で公表されています。
同様に当期純利益は▲3億5,400万円⇒▲8,100万円⇒▲1億2,700万円と推移しており、20年9月期は第3四半期までが▲1億7,500万円で通期予想は公表されていません。このように、売上高は順調に伸びているものの利益面は芳しくありません。
同社はここ3年間、規模の拡大を狙って社員数を伸ばしながら積極的に広告宣伝を行った結果、人件費と広告費が増え続けています。2019年9月期は予想以上に売上高が伸びたため営業利益が黒字となりましたが、2020年9月期では中止したテレビCMに代わって展開したウェブ広告の費用がかさみ、赤字が見込まれています。
利益の赤字はシェア拡大を狙ったもので、当初の計画通りでしょう。自己資本比率も伸び続けてはいますが、株価の動きはシビアです。黒字が好材料となり2019年2月末に2,500円台を突破しましたが、その後は赤字の拡大と共に下落し続け、コロナショックでは1,000円を下回りました。やはり投資家は利益に注目するようです。
今後の見通し
ウィズコロナの環境では在宅でできる仕事の需要が今後も拡大すると見られ、これはクラウドワークスには追い風と言えるでしょう。実際にコロナショックで下落した株価も回復基調にあり、直近は1,500円台まできています。
クラウドソーシング業界にはランサーズなどの競合もいるため、同社は今後もテレビCMやウェブ広告を積極的に展開し、「クラウドソーシングと言えばクラウドワークス」というレベルにまで認知度を高めていく意向があるようです。
ただ、認知度の高まりとともに売上高の上昇は期待できるものの、売上高の伸びが鈍化した場合、赤字が拡大する懸念があります。広告費は簡単に削減できますが会社の規模拡大と共に増え続けた人件費は簡単に削減できず、2年以上にわたって業績の重しとなるかもしれません。こうした場合は株価の下落につながるでしょう。
一方でコストに注意し、販管費の拡大を売上高の上昇以下に抑えることができれば、黒字幅を伸ばし、2019年2月の上場来高値、2,544円を再度達成できるかもしれません。
まとめ
クラウドワークスは外注需要の高まりと、広告による認知度の上昇から売上高を伸ばしてきました。ウィズコロナでも成長し続ける可能性が高いと見られますが、以前にコスト圧迫が原因で株価が下落したことがあります。今後は販管費の動向を注視しながら同社の成長を見ていきたいと思います。
【参考資料】
株式会社クラウドワークス 2020年9月期第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS80447/04743f95/2670/4897/a03c/88f00f5ecbd6/140120200813481658.pdf)
株式会社クラウドワークス 2019年9月期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS80447/74282833/a184/49b3/8d96/38fc22db9004/140120191114427233.pdf)
株式会社クラウドワークス 平成30年9月期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS80447/426beb69/8483/4c3c/af23/026464d1d25b/140120181114437628.pdf)
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