日韓関係の冷え込みとコロナ禍、ダブル打撃のハナツアージャパンに回復はあるか?
LIMO / 2020年10月23日 20時0分
日韓関係の冷え込みとコロナ禍、ダブル打撃のハナツアージャパンに回復はあるか?
近年、徴用工問題や韓国への半導体素材の輸出管理強化などをめぐり、日韓関係は冷え込んでいます。
韓国では日本向け旅行のキャンセルや日本製品の不買運動が展開されるようになっていたことに加え、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で海外渡航自体が制限され、旅行業界の業績悪化が深刻になっています。
韓国からの訪日観光事業を展開するハナツアージャパン
韓国の大手旅行会社であるハナツアーは、日本法人として株式出資比率51%のハナツアージャパン(以下、ハナツアーJ)を保有。ハナツアーJは韓国からの訪日観光客を相手にした事業を展開しており、東証マザーズにも「HANATOUR JAPAN」(6561)として上場しています。
ハナツアーJの事業内容は、旅行事業、バス事業、免税販売店事業、ホテル等施設運営事業およびその他で、2019年12月期の売上高65.9億円に対する各事業の売上比率は次の通りです。
旅行事業:28%
バス事業:19%
免税販売店事業:23%
ホテル等施設運営事業:28%
その他:2%
日韓関係悪化で下り坂の業績にコロナが追い打ち
韓国人による日本旅行が収益源のハナツアーJですが、ここ2、3年は日韓関係が冷え込み、韓国人の日本ボイコット運動によって訪日観光客は激減。
そこに追い打ちをかけたのがコロナです。日韓の両方において外出自粛・規制が敷かれ、旅行客はほとんどいなくなってしまいました。日韓関係の悪化、コロナの感染拡大というダブルパンチを受けたハナツアーJは生き残ることができるのでしょうか。
まず、2017年12月期から2019年12月期の業績を見ていきましょう。売上高は79.3億円⇒78.9億円⇒65.9億円と下降しており、2020年度は第2四半期の段階で累計わずか7億円です。
売上高同様に利益面も不調です。営業利益は17.6億円⇒9.2億円⇒2.7億円と大幅減少が続き、今年度は第1、第2四半期ともに赤字を記録しています。
同様に当期純利益も12.8億円⇒5.6億円⇒▲7.7億円と、昨年度の段階で赤字を記録し、今年度は第2四半期の段階で累計▲16.5億円の赤字です。このように売上高、利益ともにピークは2017年度で、それ以降は業績が悪化しています。
2017年度までは韓国からの訪日観光客の継続的な増加が追い風となり、業績は伸び続けました。しかし2018年度には売上高の伸びが止まり、利益は大幅に減少。
韓国からの訪日観光客は2018年がピークですが、ハナツアーJでは台風によって関西国際空港が数日間閉鎖した影響を大きく被ったようです。また、2017年度までの伸びを背景に人員を拡大したことによって、人件費が利益を圧迫したことも業績悪化の一因と考えられます。
そして2019年度には当期純利益が赤字に転じました。これは日本政府による韓国への輸出管理強化を発端に、2019年7月から韓国国内で日本製品不買運動が起きたことが大きく影響しています。
さらに2020年度はコロナ禍で甚大な影響が出ています。旅行事業では東京本社以外の大阪・北海道事業所が閉鎖に追い込まれ、バス事業はほぼ休止しています。日韓関係悪化により業績が悪化しているところにコロナが追い打ちをかけた形です。
政府方針がカギだが先行き不透明
ハナツアーJは業績と共に財務状態も悪化。自己資本比率は2017年度末の53.4%以降、28.6%、23.8%と減少を続けています。営業所の縮小、バス事業の縮小によるリストラによって財務健全化を図っていますが、現状を乗り越えられなければ債務超過となってしまうでしょう。
しかし現状では日韓両国における入国制限のため、訪日旅行が再開するめどはたっていません。決算報告では「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況」が存在すると報告しており、今後の状況によっては倒産する可能性も否定できません。
業績の回復はコロナの収束やワクチン・治療薬の開発、日韓両政府の入国制限緩和にかかっています。外的要因であるため自社の努力ではどうにもならず、できるだけ規模を縮小して好転を待つしかないのが現状です。同社では観光旅行再開に向けて新サービスの開発を進めながら、状況の変化を待つとしています。
下がり続ける株価
ハナツアーJの株価は、好業績だった2017年度の決算報告が発表された2018年初旬にピークを迎え、4,700円台を記録しました。
その後業績の悪化と共にじりじり減少を続け、2020年8月の段階で400円台まで落ち込みました。9月に入ってからは、Go To トラベルキャンペーンなど、日本国内で旅行業界に活気が戻りつつあることから上昇傾向となり、直近は700円台で推移していますが、今後の展開は未知数です。
まとめ
2017年度までは訪日客の増加と共に売上を伸ばし続けたハナツアーJでしたが、その後は自然災害や日韓関係悪化に伴い業績が悪化しました。さらにそこへコロナが追い打ちをかけ、今期第2四半期までの累計売上高は前年同期比で6分の1程度にまで激減しています。外的要因による業績不振をしのぐことができるか、しばらくは厳しい状況が続きそうです。
【参考資料】
株式会社HANATOUR JAPAN 2020年12月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS71113/59062f62/4d08/48b3/94ee/9604fd27a0af/140120200814482197.pdf)
株式会社HANATOUR JAPAN 2019年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS71113/ede9c5e7/12fc/498e/a168/f87ad9ed889d/140120200214464871.pdf)
株式会社HANATOUR JAPAN 2018年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS71113/31f914eb/59b0/48a7/b4d2/33666c8735a6/140120190214477020.pdf)
「水際対策の抜本的強化に関するQ&A 令和2年10月6日時点版(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html)」(厚生労働省)
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