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デジタル庁は縦割り行政を乗り越えられるか〜期待したい政府業務の合理化

LIMO / 2020年10月26日 20時0分

デジタル庁は縦割り行政を乗り越えられるか〜期待したい政府業務の合理化

デジタル庁は縦割り行政を乗り越えられるか〜期待したい政府業務の合理化

デジタル庁が設置されるのを機に、政府の業務が大幅に合理化されることを筆者(塚崎公義)は期待しています。

* * * * *

デジタル庁ができることに伴い、政府業務の効率化が進むことを筆者は大いに期待していますが、本稿では政府による個人データの一括管理、政府の統計データの一括管理、自治体事務の統一、という3つの面からの期待を表明することにしましょう。

こうした業務の統一を図る過程で、種々の縦割り行政が見直されることになるならば、それはさらに素晴らしいことですね。

政府の持つ個人データは一括管理しよう

政府に個人情報を知られたくない、というのは自然な感情ですが、政府が既に持っている個人情報を効率的に活用することにまで反対するのは、政府は非効率な方が良い、ということになってしまうので、筆者は賛成しかねます。政府の持っているデータは極力効率的かつ有効に活用すべきです。

たとえば筆者が死亡した時に死亡届が提出されたら、全国の戸籍謄本がオンラインで結ばれていて、相続人が誰であるかという情報が届出人に知らされると同時に税務署にも通知されることが望ましいでしょう。

実は、被相続人(死亡した人)に隠し子がいないということを証明しないと、銀行預金の引き出し等々の手続きに支障が出る可能性があるのです。銀行としては、後から隠し子が名乗り出て預金の一部は自分のものだと主張されると面倒ですから。

しかし、隠し子がいないことを証明するためには、被相続人が生まれた時の戸籍謄本等が必要で、それを取り寄せるのが大変なのです。死亡届の提出と同時に隠し子がいない(または、存在する)ということの証明書を役所が発行してくれれば、相続人としては大変助かるでしょう。

税務署だって、誰が死亡して相続人が誰であるかがわかれば、税務調査がスムーズに進むはずです。

加えて、死亡情報が不動産の登記簿とも連動すれば、被相続人名義の不動産について相続人に登記を促すことが可能となるでしょう。相続登記がなされていないために所有者が不明になっている土地が大量にあるようなので、ぜひともデジタル化によってデータを一元管理して所有者の特定につなげてほしいものです。

反対に、死亡しても死亡届が提出されない場合もあるでしょう。長期間にわたって健康保険の利用のない高齢者はそうした可能性が疑われるので、リストアップして生存を確認することができれば便利です。手続きとしては、健康保険組合から表彰状を渡すことにすれば良いでしょう。

届出住所を訪問しても本人と面会できない時には、「年金振込口座のある銀行に協力を依頼して、キャッシュカードで預金が引き出されているならば、引き出す時に面談を申し込む」といったことも要検討ですね。

政府の統計データを一括管理すべき

各省庁等が個別に統計データを集めて発表していますが、これをデジタル庁に統一することが望ましいでしょう。

そうすると、たとえば「統計によって大企業と中小企業の定義が異なるために比較できない」といった問題点が明らかになり、大企業の基準が統一されるかもしれません。それによって統計の使い勝手が向上すると期待されます。

もうひとつ、たとえば農業関係の統計は多数あるけれどもサービス業関係の統計は少ない、といったことが容易にわかります。かつて農業が日本の主要産業だった時代の名残なのでしょうが、経済がサービス化しているわけですから、農業関係の統計を減らしてサービス業関係の統計を増やす、といった調整が必要でしょう。

地方自治体のシステムも統一すべき

国民全員に10万円を配布する際に、大変な手間と時間がかかったことが話題となりました。マイナンバーと預金口座が紐付けされていない、といったことも話題となりました。しかし、筆者が注目したのは、各自治体ごとに10万円の申請方法をホームページで解説していたことです。

全国民に一律に配布するのですから、総務省が一括してホームページを作り、「添付の申請書をプリントアウトして各自治体に提出してください」とすればよかったのです。さらに言えば、総務省にデジタル情報あるいは紙情報で提出してもらい、それを各自治体に配れば良かったのでしょう。

ちなみに政府は、免許情報を管理する各都道府県の警察が現在バラバラなシステムを用いていることを問題視して統一する方針のようです。これも全く同様で、警察庁がまとめて作れば良いのです。

地方自治は重要です。自治体によって公園を増やすべきところ、道路を増やすべきところ、犯罪防止に注力すべきところ、などがあるからです。住民の声を聞きながら、自治体ごとに必要な施策を細やかに作り上げていくためには、「総務省が一括して自治体の予算の雛形を作る」といったことは望ましくないでしょう。

しかし、何でも自治体がやれば良いというものではありません。統一すべきことは統一する、各自治体が個別に行うべきことは個別に行なう、という区別を考える上でも、デジタル庁の存在は大きいと期待しています。

上記の他にも色々と統一すべき事例はありそう、というより事例の山がすぐできそうですね。デジタル庁に期待しましょう。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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