コロナ禍でも絶好調のニトリHD。業績や株価はどれだけ伸びている? 島忠買収検討も
LIMO / 2020年10月25日 20時0分
コロナ禍でも絶好調のニトリHD。業績や株価はどれだけ伸びている? 島忠買収検討も
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、消費者に直接「モノ」を販売する業種に甚大な影響をもたらしました。中でも深刻なのが人との接触が避けられない小売業や飲食業です。外出自粛によって需要がなくなり、資金繰りに堪えかねた店舗は軒並み閉店に追い込まれました。
苦境にあえぐ小売業界で、抜きん出た業績のニトリ
5月末から6月初旬にかけて、東京商工リサーチが行った調査(対象:全国1万8462社)によれば、小売業では85%の事業者がコロナの影響を受けていると回答しています。
食料品や生活必需品を扱うスーパーやドラッグストアは、消費者の生活圏が自宅周辺に狭まったことで、前年比プラスの売上高や利益を出したところも少なくありませんでしたが、アパレルなど緊急性の低い業種では大量の店舗閉鎖が起きました。
家具・インテリア用品を扱うニトリも、緊急事態宣言の期間中である4月末時点で103店舗の休業と436店舗の営業時間短縮を実施しており、コロナによる業績への影響は避けられないように見えました。
しかし2021年2月期第2四半期(2月21日〜8月8日、以下同)の業績をみると、売上高を前年同期比で12.7%も伸ばしています。
ニトリは他の小売業と何が違うのでしょうか。
事業内容
ニトリを展開するニトリホールディングス(9843)の事業は、家具・インテリアの販売です。その他事業として不動産収入もありますが、売上高が全体の2%弱なのでここでは割愛して考えます(以下、ニトリホールディングスをニトリと表記)。
ニトリブランドの店舗数は第2四半期終了時点で国内554店・海外67店の計621店舗となっており、これに加えネット通販も展開しています。
北海道で生まれたニトリが全国展開に踏み出した2000年以前は、家具類でリーズナブルなものは少なく、店舗によって商品のデザインも異なっていました。しかし「お、ねだん以上。ニトリ」というキャッチフレーズのもと、全国どこでも均質かつシンプルな商品を低価格で提供することで人気を獲得していきました。
ニトリのビジネスの強みは、商品の企画開発、原材料調達から、物流までを徹底的に管理したうえで、商品の生産を海外の自社・協力工場に委託する「製造物流小売業」の仕組みです。商品の90%以上をベトナムやインドネシアなど、人件費の低い海外で生産することで低価格を実現しています。
近年の業績と株価
2018年2月期から2020年2月期まで3カ年の通期売上高は、5721億円⇒6081億円⇒6423億円と順調に上昇。店舗数拡大にともなう買い上げ客数の増加が要因ですが、同時期の店舗数は523店⇒576店⇒607店、買い上げ客数は8201万人⇒8829万人⇒9392万人と伸び続けました。
さらに、営業利益は934億円⇒1008億円⇒1075億円、当期純利益は642億円⇒682億円⇒714億円と推移しており、利益面も好調です。
ニトリの決算説明会資料では労働生産性や従業員1人当たりの売場面積など、他社には見られない経営効率を示す指標も公開されています。これらの数字も18年2月期以降伸び続けていることから、効率化を維持しながら規模の拡大を進めていることがわかります。
注目すべきなのがコロナ禍のただ中にあった2021年2月期第2四半期の業績です。売上高3625億円、営業利益806億円、四半期純利益498億円と、前年比でそれぞれ12.7%、45.0%、35.1%も伸ばしています。
巣ごもり生活により自宅のインテリアや収納に関心を持つ生活者が増え、また、テレワーク導入により自宅の作業環境を整えたいという需要から、ワークデスク等の売り上げが好調だったようです。
一部店舗の休業も、営業再開後の需要集中とネット通販での売上増加により巻き返しました。特に通販の売上高はここ数年、前年比20〜30%の増加を続けていましたが、今期は56%も伸ばしています。
株価は17年末に18,000円弱、19年末に17,000円程度でしたが、今年度第2四半期の好調を受けて10月時点で22,000円台を記録しています。
今後の見通し
ニトリは今後さらなる効率化を目指しています。売り上げ貢献度の高いアプリ会員を増やし、実店舗と通販サイトをシームレスに利用できる利便性を提供するとともに、顧客データを蓄積し、販売戦略に活かしていくようです。
コロナの影響で海外事業には不透明さが付きまといますが、国内では、配送方法や配送ルートの見直しによる物流の効率化を進めています。いずれ店舗数拡大による成長は頭打ちを迎えるでしょう。効率化と商品開発によって消費者を逃さない戦略が求められます。
まとめ
ニトリは家具・インテリアのリーズナブル化によって消費者に受け入れられ、インテリア業界で圧倒的な地位を獲得しました。
巣ごもり需要とテレワークによってコロナ禍がむしろ追い風となりましたが、長期スパンで見た場合、今後も安定した地位を保ち続けられるかがポイントです。今のところ目立つ競合はいませんが、消費者が離れないよう時代の変化に対応していかなければなりません。
なお、10月20日夜来、ニトリが家具販売店・ホームセンターを展開する島忠の買収を検討していると報道されています。島忠は既にホームセンター大手のDCMホールディングスからのTOB実施に賛同しているため、買収合戦に発展するのではないかという見方もあります。こうしたM&Aの動きも今後の注目点でしょう。
【参考資料】
「第5回 新型コロナウイルスに関するアンケート(https://img03.en25.com/Web/TSR/%7B42379c82-bb66-466f-bbda-81aaa3487062%7D_20200616_TSRsurvey_CoronaVirus.pdf)」調査(東京商工リサーチ)
ニトリホールディングスHP(https://www.nitorihd.co.jp/)
株式会社ニトリホールディングス 2021年2月期 第2四半期決算短信(https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/HP_2021_2Q_tanshin.pdf)〔日本基準〕(連結)
株式会社ニトリホールディングス 2021年2月期第2四半期 決算説明会資料(https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2020_2QFinancial%20Report_ver.2.pdf)
株式会社ニトリホールディングス 2020年2月期決算短信(https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/HP_2020_4Q_tanshin.pdf)〔日本基準〕(連結)
株式会社ニトリホールディングス 2019年2月期決算短信(https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/HP_2019_4Q_tanshin.pdf)〔日本基準〕(連結)
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