深刻なご近所経済格差…貯蓄ゼロ世帯は2割も⁉経済的豊かさの基準とは
LIMO / 2020年10月23日 18時45分
深刻なご近所経済格差…貯蓄ゼロ世帯は2割も⁉経済的豊かさの基準とは
コロナ禍の影響で、雇用や収入をはじめ経済的な打撃を受けている今。貯蓄を切り崩しつつ、切りつめた生活を送っている人もなかにはいることでしょう。
日本における貧困問題は深刻な状況を迎えており、厚生労働省の令和元年度「国民生活基礎調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf)」によれば、2018年の貧困線は127万円となり、貧困線に満たない世帯員の割合(相対的貧困率)は15.4%にものぼるそうです。
また、一見普通にすごしているようで全く貯蓄ができていない「隠れ貧乏」世帯も実は相当数います。そんな、貯蓄がない世帯はどのくらい存在するのでしょうか。そして、今だからこそ考えたい「経済的な豊かさ」について調べてみました。
すべての世代で無貯蓄世帯は2割ほど存在する
全く貯蓄のない世帯は、実はそれほど珍しいものではありません。金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)(https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2019/19bunruif001.html)」(金融資産の状況等)をみると、金融資産をもたない世帯は全体の23.6%に相当します。
最も割合が多いのは70代の31.1%ですが、比較的仕事が安定すると思われる30~40代ですら15~18%前後が無貯蓄であるのです。5人に1人は貯蓄をもたない世帯だと思うと、決して少ないとはいえませんよね。
ご近所で経済格差を感じるときはいつ?
高齢化や単身世帯の増加が進む今、格差はゆるやかに拡大しているといわれています。また近年は、20~30代の若年層で格差が広がる傾向もみられるようです。実生活において、近所で経済格差を感じるのはどんなときなのでしょうか。
「ママ友と話していると、毎年海外旅行に行くとか、どこそこの私立に子どもを行かせたいとか、驚くような話ばかり。うちは貯金もわずかしかなくて、旅行は実家、私立なんてとんでもない。正直相手の年収が気になっている」(Sさん・35歳)
「シングルマザーで持病もあり、生活は常にカツカツ。役所と話し合いばかりしていて、そんなことに縁もなさそうなママ友を見てうらやましく思う」(Iさん・29歳)
「幼稚園でできたママ友は、立派な注文住宅に住んでいたり、高級マンションだったり……正直、劣等感を感じることは多々あります。いいお付き合いをしていますが、うちは築年数の経った狭小アパートなので、ぜったいに見せられません」(Uさん・43歳)
主婦層は住環境のほか育児や教育面、レジャーなど比較対象となるものが分かりやすいぶん、経済的な格差を感じやすいのかもしれませんね。
経済的な豊かさを実感する条件とは?
年収がいくらあっても、貯蓄がきちんとできているとは限らないもの。「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」では、貯蓄のあるなしに加え、「経済的な豊かさを実感する条件」が示されています。その内容がこちら。
【経済的な豊かさを実感する条件】(2つまで回答可)
1位:ある程度の額の年収の実現(59.6%)
2位:ある程度の額の金融資産の保有(53.9%)
3位:消費財購入やレジャー関連消費の充実(19.7%)
4位:マイホームなどの実物資産の取得(16.8%)
マイホームや消費財といった「モノの購入・所有」やレジャーといった「体験」よりも、年収や金融資産の保有など「お金の有無」を実感できるかどうかで、経済的な豊かさを実感する人が多いようです。しかし、「経済的豊かさを実感している世帯」と「実感していない世帯」ではその結果に多少の差がみられます。1位と4位で比較してみましょう。
【経済的豊かさを実感している世帯】
ある程度の額の年収の実現:54.4%
マイホームなどの実物資産の取得:27.6%
【経済的豊かさを実感していない世帯】
ある程度の額の年収の実現:63.9%
マイホームなどの実物資産の取得:9.3%
経済的豊かさを実感している世帯では、実物資産の取得が3割近くに達するのに対し、豊かさを実感していない世帯では1割にも届いていません。その分、年収といった現金の存在感が重視される傾向にあるようです。
「心の豊かさ」にも目を向けつつ、私たち自身の問題として考えて
しかし、お金があれば必ずしも幸せというわけでもないのが事実。同調査における「心の豊かさを実感する条件」によると、「経済的な豊かさ(55.0%)」を抑えてトップは「健康(72.3%)」という結果でした。心身ともに健康であるからこそ、豊かさを実感できるようになるのかもしれません。
しかし、日本は経済大国の中でも、とくに相対的貧困世帯が多いといわれています。格差を打開するために働き方改革も進められていますが、コロナ禍による失業など所得格差の拡大も問題視されるところです。経済的豊かさの実感は、やはり雇用の安定や賃金の保障など、収入が確保されてこそではないでしょうか。
しかし、貧困は当事者だけでは対策に限界があります。行政と民間、そして私たち自身がこの問題に向き合い、どうすべきかを考えていくことが大切でしょう。
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
【参照】
厚生労働省「令和元年度『国民生活基礎調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf)』各種世帯の所得等の状況」
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)(https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2019/19bunruif001.html)」(金融資産の状況等)3・57~61
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