コロナ禍で広がる「教育格差」を食い止めるために
LIMO / 2020年10月31日 7時0分
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コロナ禍で広がる「教育格差」を食い止めるために
今年、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに終始する様相を呈しています。このコロナ禍にあって、「教育格差」の広がりは世界的に大きな課題の一つです。そこで今回は、この課題を取り上げ、教育格差の広がりを食い止める処方箋について考えていきましょう。
コロナ禍で一層広がる教育格差とその影響
新型コロナウイルス感染症の影響により、日本国内では一部の学校や学習塾を除き、オンライン授業の対応ができないなどといった事態に陥ってしまっているケースも少なくありません。
世界全体に目を移すと、約4億6,000万人もの子どもたちが、十分な教育を受けることができない状態に置かれてしまっています。なかでも、特に貧しい家庭の子どもたちが、オンライン授業を受講できる環境になく、教育格差の広がりが従前以上に懸念されています。
教育経済学によると、教育は高い経済成長を実現する前提条件となっていることが明らかになっています。また、教育が普及することが主に貧困層の賃金上昇につながり、所得分配のバランスが改善することで、貧困削減効果が期待できるとの指摘もあります。
これは裏を返せば、教育格差の広がりにより、貧困から脱却する機会が奪われてしまうことを意味します。
コロナ禍以前から解決していない教育格差
今般のコロナ禍となる以前から、貧しい家庭における教育の状況は芳しくありません。たとえば、世界銀行の統計によると、世界全体で15歳以上の男女の識字率は近年、男女ともに上昇傾向にあります。しかしながら、低・中所得者に絞ると、識字率は男女ともに低い水準に止まっています。
また、世界全体では近年、小学校に通えていない人数は男女ともに減少傾向にありますが、低所得者に焦点を当てると、低水準で横ばいの推移となっています。
地域別にみると、中東・北アフリカ地域や南アジア地域、サブサハラ・アフリカ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)では、相対的に識字率が低い結果となっています。小学校に通えていない子どもたちの人数も、そもそも人口が多いこともあって、サブサハラ地域や南アジア地域で相対的に多くなっています。
これらの背景には、家庭が貧困に陥ってしまっていることで、学費や教材費などの直接的な教育に関わる費用が賄えていないことに加え、貧困に陥っているがゆえに子どもたちを貴重な働き手の一員とし、家計を支えてもらわざるを得ない事情もあります。
また、特に新興国においては、金融インフラが十分に整っていないケースが多いため、奨学金などの借入れが難しいというのも大きな要因の一つです。
教育格差を解消するための一つの処方箋「マイクロファイナンス」
こういった主に貧しい家庭を支援する取組みは以前から行われてきました。たとえば、従来から行われている国際機関などが主導している教育プログラムがその一つです。これは具体的には、学校建設などのインフラ整備支援、教材や文房具などの教育補助支援が中心をなしています。
もちろん、こういった支援の取組みはこれまでに一定の成果を果たしてきましたし、十分に意義のあるものです。しかしながら、莫大な費用が掛かることや、貧しい家庭の親が給食をアテにして労働意欲を減退させてしまうなどといった弊害が生じてしまっているのも事実です。
そこで直近では、こういった弊害を乗り越える取組みの一つとして、マイクロファイナンス機関などを通じて、民間資金を活用した教育融資に注目が集まっています。
マイクロファイナンス機関とは、少額のローンを貧困層に融資する金融機関です。マイクロファイナンス機関は従来、金融サービスを提供することに注力していました。金融機関の形態の一つである限り、その役割は今後も変わりません。しかし、近年ではそれだけに止まらないところが注目に値します。
たとえば、極度の貧困に陥っている人々へのセーフティネットの設定、識字率向上のための一般的な教育や家計管理を自力で行えるようにするための金融教育の実施などといった多面的な支援の体制を整えています。
以前は学校に通えていたにもかかわらず、現在はコロナ禍にあって通えなくなってしまったことで、十分な教育が受けられない子どもたちがいます。また、経済情勢の悪化の影響で、教育費を払えない状態に追い込まれる家庭があります。
各国のマイクロファイナンス機関は、一時的な返済猶予の措置の実施、審査や融資の仕組みの再構築などといった取組みを行っています。
世界的に苦境といえる時期にあればこそ、世界全体を見渡して、より以上に厳しい立場に置かれている方たちに対して何ができるかをいま一度考え直す好機ともいえるのではないでしょうか。
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