日本の財政が破綻しそうなときに取る手段〜破綻したギリシャとどう違う?
LIMO / 2020年11月2日 20時0分
日本の財政が破綻しそうなときに取る手段〜破綻したギリシャとどう違う?
日本とギリシャは事情が全く違うので、ギリシャの財政破綻は日本の参考にはならない、と筆者(塚崎公義)は考えています。
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新型コロナ不況への対応として、政府は巨額の財政支出を行なっています。それにより財政赤字が増えて、日本政府が破産する可能性が高まると心配している人もいるでしょうから、数回にわたって財政を考えるシリーズを組むことにしました。今回は第3回です。
ギリシャ人がドイツ国債を買える
日本政府が巨額の借金をしていても資金繰りに困らない一因は、日本人投資家が(消去法的ながら安定的に)日本国債を買うからです。日本人投資家にとって、為替リスクのない資産の中で最も安全なのが日本国債だからです。この点については、拙稿『日本政府は巨額の財政赤字で破綻? そうならない理由は「国債」にある(https://limo.media/articles/-/19211)』を併せてご参照いただければ幸いです。
一方、ギリシャは単一通貨ユーロを用いていますから、ギリシャ人投資家は為替リスクなしにドイツ国債を買うことができます。したがって、ギリシャ国債に対する投資家の需要が安定していないのです。
日本国債の場合は、投資家たちが「他の投資家も為替リスクを嫌って日本国債を買うだろうから、日本政府の資金繰りは大丈夫だろう」と考えて「暗黙のうちにお互いに励まし合う」わけですが、ギリシャの場合には投資家たちの行動が不安定ですから、そうした暗黙の励まし合いは期待できないでしょう。
加えて、経常収支の違いも無視できません。日本は経常収支が黒字で、巨額の対外純資産を持っていますから、政府は国債を日本人投資家に買ってもらえば十分であり、外国人投資家に日本国債を買ってもらう必要はありません。
しかし、ギリシャは経常収支が赤字で対外純資産もマイナスですから、国全体として外国から借金をせざるを得ず、従って政府も外国人に国債を買ってもらわなくてはなりません。外国人投資家は、国内投資家以上に不安定ですから、ギリシャ政府の資金繰りも大変不安定だと言えるでしょう。
余談ですが、将来日本が経常収支赤字になり、対外純資産がマイナスになるようなことになれば、日本政府が破産する可能性は一気に高まります。国内投資家の資金だけでは足りないわけですが、外国人投資家に頼るのは容易なことではないからです。
外国人投資家にとっては「日本政府は借金が巨額で信用リスクが大きい上に、日本円の資産には為替リスクもある」わけですから、外国人投資家はよほど高い金利を払わないと日本国債を買ってくれないでしょうし、逃げ足も速いでしょう。
まあ、経常収支等の現状を考えると日本の対外純資産がマイナスになることは想像しにくいので、過度な懸念は不要でしょうが。
万が一の場合の対策が採り得る
ギリシャ政府は、財政赤字が巨額であるため増税を強いられ、景気が悪化しました。さらに増税する必要があったのですが、そうすると暴動が激化するので増税できず、結局財政が破綻したわけです。
日本で同じことが起きた場合でも、日本は単一通貨を用いていないので、採り得る手段が多数ありますから、財政が破綻することはないでしょう。
まずは、金融緩和です。日本の景気が悪化すれば、日銀が単独で金融を緩和することができます。ゼロ金利下での金融緩和の効果が大きいか否かは議論がありますが、とにかく緩和は可能です。他国の了承を得ないと金融が緩和できなかったギリシャとは大きく異なるわけです。
為替介入等による円安誘導も可能でしょう。本来は円安誘導は好ましくありません。為替の切り下げ競争を誘発しかねないからです。しかし、「日本政府が破産寸前で大増税をしたら景気が悪化して暴動が起きそうだ」という状況であれば、諸外国も「日本政府に破産されるよりマシだ」と考えて日本の円安誘導を容認するはずです。
それにより、日本の輸出が増えて景気が回復することが期待されます。外国人旅行客のインバウンドも増えるでしょう。輸入品を国産品に代替する動きも出てくるでしょう。
アベノミクスによる円安の際には輸出入数量があまり変化しなかったので、過大な期待は禁物ですが、インバウンドは増えましたし、次回もある程度の効果は期待しても良いでしょう。
日本の場合、最後は日銀に紙幣を印刷させて借金を返済する、という手があります。もちろんハイパーインフレのリスクがあるので禁じ手ではありますが、手があるのとないのでは大違いです。ユーロ圏のギリシャは「ハイパーインフレのリスクを冒しても紙幣を印刷したい」と思ったかもしれませんが、それも許されませんでしたから。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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