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伊藤健太郎容疑者が逮捕された「ひき逃げ事故」は増えている? 減っている?

LIMO / 2020年10月31日 12時0分

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伊藤健太郎容疑者が逮捕された「ひき逃げ事故」は増えている? 減っている?

重大な刑事犯罪であることの再認識を!

10月29日、俳優の伊藤健太郎容疑者(23歳)が道交法違反(ひき逃げ)等の疑いで警視庁に逮捕されました。

ご存知の方も多いとは思いますが、伊藤容疑者は新進気鋭の若手俳優であり、テレビや映画で数多くの話題作に出演中、あるいは出演予定で現在最も注目されている1人です。その伊藤容疑者が「ひき逃げ」という重大な犯罪で逮捕されたことは、大きな衝撃をもたらしたと言えましょう。

各種報道によると、伊藤容疑者は28日夕方、渋谷区内において車でUターンしようとした際、反対車線を直進してきた2人乗りバイクと衝突して運転者らにケガをさせ、その場から車で立ち去ったとされています。バイクを運転していた会社員男性は左腕の打撲、バイクの後部座席にいた無職女性は左脚骨折の重傷とのこと。

なお、調べに対し、伊藤容疑者は「気が動転していた。パニックになった」と容疑を認めているようです。

ひき逃げは重大な刑事犯罪

まず、ひき逃げについて簡単に説明しましょう。ひき逃げとは、交通事故で人を死傷させてしまった際、必要な処置(救護措置)をせずにその場から逃げる行為です。交通事故で人を死傷させた時点で罪に問われますが、現場から立ち去ってしまう行為(ひき逃げ)の罪はそれ以上に重く問われることになります。

ひき逃げが罪に問われるのは、道路交通法72条の救護義務に違反するためです。救護義務とは、交通事故で負傷させた相手を保護したり、助けたりする義務を指します。この救護義務には、警察への報告はもちろんのこと、警察が到着するまで現場に留まっていなければならないことも含みます。

また、この救護義務は、相手のケガの程度は一切関係なく、仮にすり傷程度の軽傷だったとしても処置(連絡など)をする必要があります。「大したケガだとは思わなかった」という言い訳は100%通用しません。

ひき逃げで起訴されると、刑罰を科される可能性が高いようです。まずは、救護義務違反に対する刑罰であり、10年以下の懲役または100万円以下の罰金です。さらに、相手を死傷させたこと自体に対して、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪、準危険運転致死傷罪の3つから1つ以上が適用されます。

今回の伊藤容疑者の場合、救護義務違反(ひき逃げ)と過失運転致死傷罪が逮捕容疑になりました。

ちなみに、ひき逃げと似たような罪で「当て逃げ」があります。ひき逃げと当て逃げの違いは、原則として、人の死傷があったかどうかによるものであり、当然ながら、ひき逃げの方が重罪です。人ではなく、物に衝突して現場から立ち去った場合は「当て逃げ」となり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられますが、ひき逃げの10分の1です。

伊藤容疑者は公判請求で裁判にかけられる?

伊藤容疑者の今後ですが、既に検察庁へ送検されており、他の重大な犯罪容疑(酒気帯び運転、犯人隠匿、薬物所有、等)はないようですから、拘留期間中(最大20日間)の取り調べを経て、起訴されるかどうか決定される予定だったようです。

しかし、証拠隠滅の恐れがないと判断されたのか定かではありませんが、30日の夕方に釈放されました。ただ、これは不起訴を意味するものではなく、今後は在宅のままで取り調べが進行するものと予想されます。

過去の事例を踏襲すれば、不起訴になる可能性もなくはないですが、多くの場合が公判請求(検察官からの裁判請求)で起訴され、裁判にかけられると見ていいでしょう。

そこで科せられる量刑は、被害者との示談交渉の成否などが大きく影響しますが、現時点では、そこまで議論するのは時期尚早と言えるのではないでしょうか。

ところで、全国でひき逃げ事故(犯罪)はどれくらいあるのでしょうか?

全国のひき逃げ事故件数は減っている?

法務省の「犯罪白書(http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/mokuji.html)」最新版(令和元年版、以下同)によれば、平成30年のひき逃げ事故は8,357件(内訳は死亡128件、重傷事故867件、軽傷事故7,362件)でした。この件数は、ピークだった平成16年の20,283件の約4割まで大きく減っていますが、いまだに8,000件以上もあると見るべきでしょう。

そうは言っても、大幅な減少となっているのは、検挙率の上昇(大幅改善)と関係があると見られます。

実は、ひき逃げ死亡事故の検挙率は元々高かったのですが(概ね90%以上、平成30年は約98%)、重傷事故と全事件の検挙率はお世辞にも高いとは言えませんでした。実際、前述した平成16年の検挙率は、重傷事故の検挙率が約48%、全検挙率(ひき逃げの全事件の検挙率)は約26%に止まっていたのです。

しかしながら、警察による取り締まり強化に加え、防犯カメラ設置数の拡大やドライブレコーダーの普及によって、平成30年の検挙率は、重傷事故の検挙率が約76%、全検挙率も約61%へと大きく改善して今日に至っています。ただ、それでも十分と言えないのは明らかでしょう。

確かに、ひき逃げの多くが夜間に発生しているため、目撃情報が少ない等の理由があるのは理解できますが、量刑をよりいっそう重くするなどの措置により、“逃げ得”を許さない警察や法務当局の厳しい姿勢が求められます。

吉澤ひとみは芸能界引退に追い込まれる

さて、今回、伊藤容疑者の逮捕で多くの人が驚いた理由の1つが、「ひき逃げ」を犯したことでしょう。芸能関係者の交通事故は時々耳にしますが、「ひき逃げ」となると、芸能人の犯罪としては非常に稀なケースと言えます。

筆者が直近20年間で調べた限りですが、著名芸能人のひき逃げ事件としては、2018年の吉澤ひとみ(元モーニング娘。のリーダー)による飲酒ひき逃げ事件が有名です。

詳細は省略しますが、飲酒運転も重なったことで有罪判決(懲役2年、執行猶予5年)を受け、芸能界引退に追い込まれました。執行猶予期間が明けても、今後の復帰はないと見られ、事実上の芸能界追放という見方もあります。

また、2016年にお笑い芸人の井上祐介(NON STYLE)が起こした「当て逃げ」事故も広く知られていますが、こちらは不起訴処分となりました。その後、芸能界に復帰しましたが、事故以前に比べると露出度は少なくなっている気がします。

伊藤容疑者への処罰は公明正大に行うべき

伊藤容疑者の今後がどうなるのか気になるところではありますが、罪を償うことは言うに及ばず、芸能界を含めた社会全体が厳正に対処すべきです。更生の機会まで奪う必要はないと思いますが、“将来有望だから”、“初犯だから”、“深く反省しているから”等の理由で、いつの間にか何事もなかったかのように表舞台に登場するようなことは許されません。

ひき逃げ事故は重大な刑事事件であることを全ての運転者に認識させる良い機会にすべきでしょう。

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