定年前後の貯蓄事情。50~70代でどう変わる?
LIMO / 2020年11月2日 0時20分
定年前後の貯蓄事情。50~70代でどう変わる?
2020年、「年金改正法」が成立。これによって老齢年金の受給開始年齢が60歳から75歳に拡大されました。定年後の再雇用、新しい職場に就職、はたまた起業といったかたちで仕事を続けるアクティブな熟年世代も増えています。
「60歳=リタイヤ」というこれまでの概念は、すでに古いものになりつつあるのかもしれませんね。今回は、還暦前のラストスパート中ともいえる50代以上、いわゆる「熟年世代」の貯蓄額にフォーカスしていきます。
そもそも「貯蓄」って?
総務省の家計調査報告(貯蓄・負債編)の用語の解説によると、貯蓄とは、
ゆうちょ銀行,郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構,銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金,生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式,債券,投資信託,金銭信託等の有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価,債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と,社内預金,勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいう。 なお,貯蓄は世帯全体の貯蓄であり,また,個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含める。
とあります。つまり「貯蓄額」には、預貯金以外の金融資産も含まれているわけですね。次では、「預貯金額」「預貯金以外の金融資産額」、そして「負債額」を、「50代」「60代」「70代以上」にわけてみていきます。
「50代」定年目前のラストスパート!
まずは、定年前の50代のお金事情からみていきます。
「預貯金」と「預貯金以外の金融資産」の額を合計すると、日本の50代の平均貯蓄額は約1,727万円という結果がでています。いわゆる「老後2,000万円問題」の2,000万円にあとちょっと、といった感じでしょうか。では、その内訳をみていきます。
50代の預貯金の平均額「1,022万円」
内訳:通貨性預金:441万円、定期性預金:581万円
50代の預貯金以外の金融資産の平均額「705万円」
生命保険など:420万円、有価証券:185万円、金融機関外:100万円
50代の平均負債額「661万円」
貯蓄額と同時に、負債額(借入額)についてみていく必要がありそうですね。50代の負債の平均額は「661万円」でした。50代というと、まだ住宅ローンを返済中という世帯も多い年代です。
50代の貯蓄額(預貯金以外の金融資産と預貯金の額の合計)から負債の額を差し引くと、約1,000万円となります。
60代「リタイヤ後の生活がスタート」
次は、還暦、定年退職を迎えてライフスタイルが大きく変わる人が多い、60代のお金事情についてみていきます。
「預貯金」と「預貯金以外の金融資産」の額を合計すると、日本の60代の平均貯蓄額は約「2,136万円」。2,000万円を超えました。定年退職金としてまとまった金額を受け取る人が多い世代であることも影響しているでしょう。では、そのその内訳をみていきます。
60代の預貯金の平均額「1,329万円」
内訳:通貨性預金:546万円、定期性預金:783万円
60代の預貯金以外の金融資産の平均額「807万円」
内訳:生命保険など:459万円、有価証券:301万円、金融機関外:47万円
いわゆる定期預貯金にお金を預けている金額の方が普通預貯金に預けている金額より多いことが分かります。また、預貯金以外に約800万円の金融資産があることがわかりました。
60代の平均負債額「229万円」
同じように負債額についてもみていきましょう。60代の負債の平均額は「229万円」でした。負債額だけをみると、50代平均額の半分以下に下がっています。
30代、40代ではいずれも負債の平均が1,000万円を超えている中、住宅ローンを返済完了する人も増えた60代では、負債の金額が大きく減ることが分かります。子どもが独立したという家庭も増えるころですよね。
さて、先ほどから見てきた60代の貯蓄額(預貯金以外の金融資産と預貯金の額の合計)から負債の額を差し引くと、約1,900万円ですね。
70代以上「まだまだ“老後”ではない」
次は、70代のお金事情についてみていきます。「預貯金」と「預貯金以外の金融資産」の額を合計すると、日本の70代の平均貯蓄額は約「1921万円」。1,000万円を大きく超える結果となりました。では、その内訳をでは、その内訳をみていきます。
70代以上の預貯金の平均額「1473万円」
内訳:通貨性預金:591万円、定期性預金:882万円
70代以上の預貯金以外の金融資産の平均額「439万円」
内訳:生命保険など:295万円、有価証券:144万円、金融機関外:0万円
70代以上の平均負債額「68万円」
こちらも、負債額をみていきましょう。70代の負債の平均額は「68万円」でした。負債額だけをみると、60代の平均額からさらに下がっている点が特徴的です。
そして、金融資産の額から負債の額を差し引くと約1,800万円となりますね。
さいごに
今回は、定年目前の50代、還暦を迎えた60代、そして円熟した生活を送る70代以上のお金事情についてみていきました。
なお、今回挙げたデータはあくまでも平均値。現役時代の収入、現在の就業状況、さらには親族からの贈与・相続財産の有無など状況は人それぞれです。また、同世代の中でも、「一部のお金持ち」が平均値を押し上げているということも知っておきましょう。
「人生100年時代」といわれます。若い世代は、遠い将来に向けた資金形成について、早めに意識を持ち始めることをおすすめします。また、元気なうちはできるだけ長く働いて、さらなる老後に備えよう、という熟年世代が増えていることは頼もしい限りですね。
【参考】
「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)(https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html)」総務省統計局
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