「40代、久々の妊娠」医師の言葉、職場の温度に感じたとまどいと不安とは?
LIMO / 2020年11月4日 0時20分
「40代、久々の妊娠」医師の言葉、職場の温度に感じたとまどいと不安とは?
厚生労働省が毎年公表している『人口動態統計(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/dl/08_h4.pdf)』によると、2019年の総出生数は、86万5,239人(前年度より5万3,161人増加)。これを、母親の年齢別、出生順位別にみてみると、全体に占める割合こそ少ないものの、40歳を超えても妊娠・出産を経験している人が、たくさんいることがわかります。
今回は、そんな40代で第2子を出産した、Aさんの体験談をご紹介したいと思います。
41歳、2人目を妊娠で感じた「不安」と「戸惑い」
Aさんは30歳で結婚、2度の流産を経て33歳で長女を出産しました。最初のうちは、自身の年齢のこともあり、「2歳差、せめて3歳差で2人目を」と希望していました。しかし、その後、再び妊娠に至ることはなく、長女を保育園に預けて仕事に復帰。夫婦ともども忙しくなり、2人目が欲しいとは思いつつも、あっという間に時が過ぎていってしまったといいます。
2人目の妊娠に気が付いたのは、Aさんが41歳、長女が小学校5年生になった時のことでした。あれほど切望していた2人目でしたが、Aさんがまず感じたのは「とまどいと不安」だったといいます。
その理由は…
長女の時とは違い、医師から「出生前診断を受けますか?」という質問を受けたからです。医師曰く「この年代の方には、必ず聞くことですので」とのこと。「年齢が上がると、こういうリスクも高くなるのか…」と、まず実感したそう。
その後、Aさんが、あらためてネットで調べてみると、40代の自然妊娠率は非常に低いこと、また流産率も30代に比べるとぐんとあがるということがわかりました。以前の流産の記憶を思い出し、「無事に産めるの?」という気持ちが、Aさんの心の中でどんどんと大きくなっていき…。
しかし、そんなAさんの不安な気持ちを払拭させてくれたのは、夫でした。夫は「僕たちを選んでやってきた子どもなのだから、無事生まれてくれると信じよう」と言ってくれたのです。
「出生前診断」は受けなかった
出生前診断は受けませんでした。最近では簡単な採血だけで99%の確率で胎児異常がわかる検査(※)が登場しているとのこと。Aさんも受けるかどうかを正直迷ったそうです。しかし、いざ異常がわかった時にどうするのかという点を考えたときに脳裏をよぎったのは、流産の処置を受けたときの記憶でした。
「二度とあのような手術は受けたくないと思っていました。でも、お腹の中の子に異常があるかもしれないと診断された場合…」そんなことを考えて、Aさんは、どうにもやるせない気持ちになってしまったそうなのです。
「出生前診断を受ける人たちの気持ちは十分にわかるし、そういう診断があることを否定はしません。ただ、私は、そういった診断は受けず、お腹の中で育ってくれるのならば、この子を産んであげたいと思いました」
結果的に、生まれてきた下の子には、特に異常は認められませんでした。
※新型出生前診断(NIPT)
妊婦の血液にわずかに含まれる胎児由来のDNAを分析する手法で、採血だけですみ、しかも感度が約99%と高く、検査が受けられる時期も長いのが特徴。
「1人目のとき」との違いが多すぎて…。
Aさんには、40代での妊娠で、今までとは違うなと感じたことがいくつかあったそうです。
周囲の「温度感」
ひとつめは周囲の反応。Aさんが職場の上司に報告したときのこと。Aさんが「2人目を妊娠しました。仕事は続けたいと思いますが、経過によってはお休みとか、退職もあるかもしれません」と伝えたところ、上司は、まずポカンとした顔をしたそうです。そのあと、ようやく事情が飲み込めたのか「おめでとう」と。
「同僚に関しては、触れていいのか悪いのか…、といった感じの人が多かったですね。なかには、陰で私の年齢のことを言う人もいたようですが・・・。
1人目の時は、みんな手放しで「おめでとう!」という感じだったのですが、やはり年齢を重ねてからの妊娠出産は、周囲も戸惑うのでしょうかね」
自分自身の体調
妊娠経過は、つわりが長女の時より重めだったのと、切迫早産で入院した以外は、思っていたよりも順調でした。Aさん曰く「悪阻とか、起きられないとかいう話も聞きますから、運がよかったほうかもしれません」
ただ、出産後、体質が変わったように感じたことはあったそうです。たとえば、出産後に、いつも使っていたパックを久しぶりに顔につけたところ、途中でひりひりして、おかしいなと思ってはがしたら、顔が赤くかぶれていたそうです。
赤みがひくまでしばらくかかり、一緒に入院していた人たちや看護師さんに『どうしたの?』と言われ続けたのだとか。長女の時はそういうのはなかったので「これも高齢出産ゆえのトラブルかしら?」と思ったそう。
「下の子が生まれたあとは、自分自身の体力の低下も感じましたね。長女の時は、散歩やら外遊びやら、そんなに疲れは感じなかったように思いますが、2人目の時は、ちょっと無理するとすぐに疲れてしまって…」
『ダブルケア』を強く意識するエピソードも
これぞ高齢出産ならではの問題。ダブルケアを強く意識するできごともあったそうです。切迫早産で入院するちょっと前、Aさんの実母が右腕を骨折してしまったのです。家事をしていたときに、足を滑らせてよろけ、とっさに手をついたところ、ヒビが入ってしまったのだとか。
「実両親とは歩いて5分ほどの距離での近居。長女の時は、保育園の送迎や長期休みの対応などを“ばあば”に頼ることが多かったんです。正直、2人目のときも少しアテてにしていた部分がありました。
でも、ちょっと手をついただけで骨折なんて・・・、まだまだ若いと思っていたけれど、親は確実に弱ってきているということですよね。さすがに、乳幼児の長時間の世話をお願いするのは無理だろうな、と思いました」
「母の腕が治るまでの間、何度か実家に手伝いに行きました。でも、自宅で家事をすませてから、さらに実家で家事・・・、という生活は意外に大変でした。妊婦だったということもあるかもしれませんけど・・・。
この一件で、乳飲み子と要介護状態の親、同時に面倒をみなくちゃいけなくなったらどうしよう?と考えずにはいられませんでした」
さいごに
芸能人の高齢出産がニュースになることも多く、40代での妊娠・出産が少しずつ浸透してきたようなイメージがあります。
「どっしり構えた気持ちで子育てができる」「若い頃とくらべると経済的な苦労が少ない」といったメリットが挙げられる高齢出産。でも、産み育てる自分自身の体力の低下や、親の高齢化といった、いかんもしがたい問題があることも、また事実ということなのでしょう。
Aさんは語ります。「でも、色々不安になることもあったけれど、子どもの寝顔を見ていると、そういうのも全部、吹き飛びます。やっぱり産んでよかった。下の子が成人する前に、自分自身が還暦を迎えてしまいますが、せめて見た目だけでも、若々しく見えるように、自分を磨いていきたい、というのが今の目標でしょうか(笑)」
【参考】
『人口動態統計(2019年)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/dl/08_h4.pdf)』厚生労働省
「NIPT(https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/saniden/nipt.html)」国立成育医療研究センター
「新型出生前診断(NIPT)とは(https://www.genetech.co.jp/nipt/)」GeneTech株式会社
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