あなたの年齢の頃「お父さんは1000万円稼いでいた?」昔はよかった神話は本当か
LIMO / 2020年11月8日 20時45分
あなたの年齢の頃「お父さんは1000万円稼いでいた?」昔はよかった神話は本当か
実家に顔を出すと親から聞かれる金銭にまつわる話。雑談の一つとも言えますが「時代が違うから比較しても意味がないのでは…」と思いつつも何度も親から繰り返し言われることで「やっぱり昔の人の方が稼ぎもよく幸せだったのでは?」なんて思って思うことはありませんか。
今とは違い終身雇用でボーナスは当たり前だった親世代。自分たちを「勝ち組」という親世代と比べ、本当に「今の若者はかわいそう」なのでしょうか。
「昔の人は給料をたくさんもらっていた」は本当か?
現在40代のMさんは度々お母さんから「お父さんは高給取りだった」という話を聞かされて育ちました。一部上場企業に勤めていたお父さんは就職して以来その会社一筋で、子会社の役員を勤めた経験もありました。
Mさんも子どもの頃から会社の保養所に旅行に行ったり、会社から福利厚生の一環でプレゼントをもらっていたりしたので「お父さんの会社はやさしいな」と子供心に思っていたそうです。
帰省して何気なく年収の話をお母さんとしていた際にいわれたのが「今はどこも厳しいのね。お父さんはあなたくらいの年齢には1000万円近くもらっていたのにね…」という一言でした。
それでは、本当に「昔の人の方がお給料をたくさんもらっていた」のでしょうか。厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html)」によりますと、平成元年の一般労働者の1ヶ月分の賃金(6月分の所定内給与額)は241800円。対して令和元年は307700円と、なんと最近の方が高い結果になりました。それでは、統計などと比べ「昔はよかったのに」と感じる背景にはどのような理由があるのでしょうか。
正社員は当たり前でボーナスは年3回?
お母さんの辛口なコメントに苦笑いしつつ、Mさんは現在の自分と昔の父の何が違うのか?という点を次の様に考えているそうです。
「父と自分の学歴はそんなに変わりません。むしろ大学名だけでいったら自分の方が有名な大学をでているのではないでしょうか。ただ、父は会社がまだそんなに大きくない時代に就職し、その会社が大企業に成長していきました。昔は転職をする人なんてほとんどおらず、父も新卒で入った会社一筋。年功序列ということもあり、今の僕の年齢のときには役職にもついていた。だから1000万円くらいもらっていたのかもしれません。
僕はというと、現在の会社は転職して入った会社で、まだ当時の父のような役職にはついていません。当然、父のような年収にはまだまだなる見込みもないです。母は『お父さんは年に3回ボーナス貰ってたわよ』なんて口癖のようにいいます。成果に関係なくみんなが同じように貰えていたという話を聞くと時代の違いを実感しますね」
また、お父さんの話ではありませんがMさんは「上司から聞いた話ですが、昔は内定すると海外旅行に招待されたり、豪華なプレゼントをもらったりしたと。交通費自腹で就活した話もすごく驚かれたのが印象的でした。バブルを謳歌した世代はどこか元気に感じますね」と語ってくれました。
格安スマホや100均、ローンも組みやすい現代
ただ、現代から見てすべてが羨ましいかというとそうだとばかりも限りません。Mさんはお父さんから逆に「羨ましい」といわれることもあったそう。
「一番違うのが家のローンですね。僕は超低金利といわれる時代にマンションを買っているので、ローンといえばこれくらいが当たり前だと思っていました。しかし、父の時代は8%もの利息を当たり前のようにみんな払っていたという話を聞いて、買った家が何軒も建つ金額!と驚きました。
また、通信費の安さやネット環境の整った場所で働けることなども羨ましいといわれました。父の頃はとにかく待ち時間や調べもの一つにも半日かかっていたという話を聞くと、今はビジネスのスピードは確かに速いな、と。ただ『今現役だったらお父さんさぼれなくて息が詰まっていたかもな』なんて笑っていましたが」
携帯電話が出始めた頃は通信費も高く、今の様にキャリアを選んで格安に抑えることなどもできませんでした。また、100円ショップや低価格なチェーン店などもここまで浸透していなかったので、家族四人で外食というと現在の倍ぐらい払っていたかもしれない、なども話題に上がったそうです。
現代は工夫すれば暮らしやすい世代?
消費税の増税や膨れる社会保障費など、懐が寒い印象が強い現代。雇用形態の変化や年収の面だけで見ると「貧しさ」に注目が集まってしまいます。
しかし、現代には発達したものもたくさんあります。昔なら考えられないような金額で24時間楽しめるオンラインの世界では、観たかった映画やドラマ、聴きたかった音楽が定額でいくらでも楽しめたり、世界中の人の意見が手軽に聞けることで視野を広げられたり。人脈一つとっても簡単に広げる方法が溢れている現代は「昔の方がよかった」では片づけられないほど有益なものが溢れています。
収入は確かに高くない人も多いかもしれませんが、支出の面も一緒に考えた時。そこには貧しく搾取されるだけの環境が待っているのでしょうか。
子供の教育費や老後のことを考えると不安はぬぐえませんが、多様性が広がる現代は「年収」という物差しだけでは測りえない豊かさが至る所に隠れているのかもしれません。
【参照】
厚生労働省「賃金構造基本統計調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html)」
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