シマノはポストコロナの勝ち組か。前期比24%増へと上方修正された今期純利益予想
LIMO / 2020年11月12日 20時0分
シマノはポストコロナの勝ち組か。前期比24%増へと上方修正された今期純利益予想
昨年は米中貿易摩擦が世界経済の成長をじわじわと減速させましたが、今年は何より新型コロナウイルスの感染拡大が景気に大打撃を与えました。大手・上場企業から零細企業まで多数の企業が減収減益を記録し、今年度の業績予想を下方修正しています。
しかしそんな状況下でもシマノ(7309)は業績を上方修正しました。10月27日の発表では、2020年12月期の連結純利益が前期比24%増の643億円になる見通しとされています。これは従来予想から60億円上振れた数字です。
コロナショック下で何がシマノの追い風となったのかを見ていきましょう。
コロナ禍にあえぐ製造業にあって、明るい見通しを示すシマノ
新型コロナによる経済への影響はリーマンショックを超えました。リーマンショックは投資や融資が滞るという資金供給面から発した負の影響でしたが、今回のコロナ禍は需要が消滅するという直接的な景気の悪化です。勤め先が倒産したり、給料が減額されたりしていない人々もすべてが当事者となり、感染を防ぐために外出・消費を控えました。
外出を控える動きは人々の車の購入にも影響し、マイナス幅がもっとも深刻だった5月の国内新車販売台数は前年比で45%も減少しています。自動車産業を基幹とする日本の製造業は連鎖的に影響を受けやすいため、部品メーカーや素材・機械業界各社は今年度の業績予想を未定もしくは減収減益とすることを余儀なくされました。
このように製造業にとって苦しい状況であったにもかかわらず、シマノは売上げを伸ばし、今年度の業績予想を上方修正するに至りました。そこにはシマノの事業ドメインの強みが関係しているようです。
シマノの事業内容
「シマノ」と聞くと釣り好きの人はフィッシング用品の専業メーカーと思うかもしれません。一方で自転車好きの人は自転車部品メーカーとしてのシマノを思い浮かべるでしょう。
シマノの主要事業は2つあり、リールやロッドなどの釣り具事業と、ロードバイク用コンポーネントや完成車などの自転車部品事業を展開しています。2019年12月期の売上高3632億円のうち「釣り具」は20%、「自転車部品」は80%を占めています。
近年の業績〜堅調な増収増益にコロナ禍が追い風
次に、同社の直近3年間の事業成績を見ていきましょう。
売上高は2017年12月期から2019年12月期まで順に3358億円⇒3480億円⇒3632億円と年3〜4%のペースで成長し続け、営業利益も644億円⇒657億円⇒680億円と同2〜3%ペースで増加しています。
2019年度は、欧州で天候に恵まれたことから電動アシストスポーツバイクが好調な売れ行きを見せ、北米では高級モデルへのシフトが進んだことで自転車部品事業の売上が伸びました。釣り具事業は一部地域で売上が減少したものの、世界全体では堅調な伸びをみせました。
こうしたことを背景に、当期純利益は384億円⇒539億円⇒518億円と推移しています。2016年度は510億円であった点を考慮すると2017年度の384億円はとても低く見えますが、これはドル安による為替差損を109.6億円計上したことが原因です。また、19年度は前年度に為替差益37.6億円を計上した関係で、18年度より減少しています。
注目すべきは、今年度(2020年12月期)第3四半期の業績です。第1、2四半期では今年度の売上高、営業利益の予想値を未定もしくは減少としていたものの、第3四半期の決算発表では通期予想で売上高を前期比1.9%増(3700億円)、営業利益を同13.2%増(770億円)、当期純利益を同24.1%(643億円)に上方修正しました。これには第3四半期の好調が影響しています。
第2四半期までは消費の落ち込みから累計売上高が前年同期比で▲12%でしたが、第3四半期で急激な伸びを見せ、今期累計で▲2%まで持ち直しました。個人消費の回復と共に、各国で感染リスクの少ない自転車での移動が人気となったことが影響し、自転車部品の在庫が不足気味になるほどの急激な需要の増加があったようです。
株価は安定から上昇基調へ
株価に目を転じると、2017年から2019年末までは特に材料がなかったため、1万5000〜1万7500円前後を行き来していました。しかし今年の春先から世界的な自転車人気の盛り上がりが起きたことで株価は急激に上昇し、6月以降は2万円以上をキープしています。
今後は屋外レジャーニーズの動向と海外展開を注視
短・中期的には、今後も新型コロナによる感染リスクの少ない移動手段やレジャーが求められ、自転車部品の売れ行きは伸び続けると推測できます。
コアなファンの場合は頻繁にパーツを取り換えることが多いことに加え、新たなユーザーを獲得できれば、今後も安定した収益源となるでしょう。一方で過去の業績にも現れているように、アウトドア関連は天候によって影響されやすい側面もあります。
長期的には欧州の環境対策や新興国の成長が業績を伸ばす要因となる可能性があります。一方、中国での展開は頭打ち感が出始めているため、東南アジアやアフリカなど他の新興国の市場開拓を進める必要があるでしょう。
まとめ
シマノは新型コロナの影響で第2四半期までの売上実績が前年比▲12%でしたが、経済活動の再開とともに感染リスクの少ない移動手段やアウトドアレジャーに消費が向かったことから第3四半期ではV字回復し、今年度の連結業績予想を上方修正しました。コロナ収束後も安定した成長を続けるためには、新規ファンの確保と世界市場におけるさらなる市場開拓が求められます。
【参考資料】
株式会社シマノ 2020年12月期第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.shimano.com/jp/ir/library/cms/contents/FY2020-3Q.pdf)
株式会社シマノ 2020年12月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.shimano.com/jp/ir/library/cms/contents/FY2020-2Q.pdf)
株式会社シマノ 2020年12月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.shimano.com/jp/ir/library/cms/contents/FY2020-1Q.pdf)
株式会社シマノ 2019年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.shimano.com/jp/ir/library/cms/contents/FY2019-4Q.pdf)
株式会社シマノ 2018年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.shimano.com/jp/ir/library/cms/contents/FY2018-4Q.pdf)
「5月の国内新車販売45%減 大震災直後に匹敵の水準(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59831120R00C20A6X13000/)」(日本経済新聞 2020.6.1付)
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