2023年に制度廃止される「ジュニアNISA」、今からでもお得に活用する方法とは
LIMO / 2020年11月21日 18時45分
2023年に制度廃止される「ジュニアNISA」、今からでもお得に活用する方法とは
~「移管」先の選択ポイント~
ジュニアNISAが始まって5年。最初の年の非課税期間が2020年末で満了を迎え、2021年は初めての移管の年になります。ジュニアNISAを利用していた方へは、この先どうしますか?という手紙が口座を開いた証券会社から届いているかと思います。
しかし正直言って「どうすればいいの?」と逆に聞きたいくらいではないでしょうか。そこで今回はジュニアNISAの移管について、セゾン投信(https://www.saison-am.co.jp/)の中野晴啓会長に話を伺いました。
2020年末をもって2016年分のジュニアNISA非課税期間が満了を迎える
筆者には現在18歳(高校3年生)と15歳(高校1年生)の子どもがいます。ジュニアNISAがスタートした2016年に口座を作り積立を始めました。
非課税でできる投資にはNISAやつみたてNISAがありますが、20歳以上が条件。ジュニアNISAは19歳以下が使える唯一の非課税口座です。非課税期間は5年、非課税投資枠は年間80万円までです。そして口座を持っている本人が、18歳になるまでは払い出しができないという「払出制限」(※1)があります。もし払い出しをするとなると、原則として、それまでの運用益に課税されてしまいます。これがジュニアNISAのデメリットの1つと考えられています。
この後の選択肢は?
非課税期間の満了を迎えることで証券会社から手紙が届き、そこには今後の選択肢として2つが書かれていました。
課税ジュニアNISA口座に移管する
新たなジュニアNISA口座へ移管する(ロールオーバー)
最初に見た時、筆者はこの2つのどちらを選べばいいのかわかりませんでした。筆者の周りにも同じ手紙を受け取った人がいるのですが、やはりさっぱり分からず…。でも中野会長に話を伺ううちに、筆者が誤解していたことが分ったり、どちらを選択すればいいのか、その基準が見えてきました。
2020年末に満了を迎えるのは2016年の分
満了を迎えることを知らせる証券会社からの手紙には、「2016年分のNISA非課税期間満了に伴うお手続きのお知らせ」と書いてありました。筆者はこのとき、ジュニアNISA口座でこれまで積み立ててきた分が全部これに当たるのだと思ってしまいました。
おそらく筆者と同じように考えてしまう人も多いとは思うのですが、これは大きな勘違いだと中野会長に指摘されました。2020年末に満了になるのは、あくまで2016年の分です。そのため2017年、2018年とそれ以降に買い付けた分は、2020年の満了には関係ないことになるのです。(ちなみに2017年に買い付けた分は2021年、2018年分は2022年に同じように手続きをすることになります)
「80万円枠を使い切ったかどうか」がポイント
今、筆者の目の前には2つの選択肢があります。
「課税ジュニアNISA口座に移管する」と「新たなジュニアNISA口座へ移管する(ロールオーバー)」です。中野会長は、「どちらにするのかを決める1つの基準としては、2016年の非課税投資枠80万円を使い切ったかどうかがある」と話してくれました。
非課税になる80万円の枠を使い切っていない場合
2016年分の非課税枠80万円を使い切っていない場合には、「新たなジュニアNISA口座へ移管する(ロールオーバー)」の方がメリットが大きいと中野会長は言います。「新たなジュニアNISA口座へ移管する(ロールオーバー)」というのは、2021年の非課税枠に移すことを指します。ここでも80万円の枠があるのですが、2016年で使った分を引いた残りは、新たに資金を投入することができます。
例えば2016年分に毎月2万円ずつ積立をして、年間24万円の買い付けをした場合で考えてみましょう。ロールオーバーすることで、2021年分の非課税枠80万円に対して、24万円を使ってしまうことになりますが、残り56万円分の買い付けができるというわけです。非課税枠をフルに使うことを考えれば、こちらの方がメリットが多くなってきます。
非課税80万円の枠を使い切った場合
非課税枠80万円の枠を使い切った場合、ロールオーバーを選んだら2021年分の80万円の枠がすべて埋まっているので、買い付けができなくなります。そのため新たに非課税枠を獲得したいのなら、「課税ジュニアNISA口座への移管」を選択します。
移した後に利益が出れば課税されますが、それまでの利益は非課税になるので、メリットはありますし、できることなら解約せずにその後も、長く運用を続けた方が良い、というのが中野会長の考えです(※2)。
ジュニアNISA制度廃止で思わぬメリット
もともとジュニアNISAは、19歳以下が利用できる非課税制度として2016年から始まりましたが、2023年末で制度は廃止になることが決まっています。
ただ、この廃止によって、最大のデメリットといわれた18歳になるまで引き出すことができないという制限がなくなります。つまり、これからジュニアNISAを始めれば、20歳まで非課税で運用ができて、しかも2023年末以降は引き出し制限がなくなるわけです。
制度廃止まであと3年ですが、1年80万円満額投入すれば240万円の非課税枠になり、いまから始めても十分にメリットは受けられます。
大切なのは運用を続けること
ジュニアNISAの移管に関しては、仕組みが複雑で素人では判断が難しいというのが、筆者の正直な感想でした。きっと筆者の他にも悩んでいる人がいる。そんな気持ちで中野会長にお話しを伺いました。
もともとジュニアNISAは子どもの進学や就職を踏まえ、将来的な長期投資をベースにしていますから、運用を続けることが最も大切なことでしょう。
中野会長も口を酸っぱくして言っていましたが、運用を止めてしまうのは、長い目で見た時にものすごく大きな損失を生むことになりかねません。
筆者の上の子は今年大学受験で、合格すれば大学に進学をします。その時に大きなお金が必要になるでしょうけれど、解約ではなく必要な分だけ引き出せばいいと考えています。今回中野会長の話を伺い、改めて長期投資の本質に触れた気がした筆者でした。
【監修】
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 中野 晴啓(なかの はるひろ)
1987年クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資産運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用のほか、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾンインベストメント事業部長を経て、2006年セゾン投信株式会社を設立。2020年6月より現職。現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売しており、顧客数は約15万人、預かり資産は3,200億円を超える。一般社団法人投資信託協会理事公益財団法人セゾン文化財団理事。
著書に『預金バカ』(講談社α新書)『つみたてNISAはこの8本から選びなさい』(ダイヤモンド社)など。
【参考】
「ジュニアNISA」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/junior/overview/index.html) 金融庁
(※1)3月31日時点で18歳である年の前年12月31日までの間は、原則として払い出しができません。ただし、災害等やむを得ない場合には、非課税での払出しが可能です。
(※2)損失が出ている状態で課税口座に移管する場合、投資額相当に戻るまでの値上がり分も課税対象になり、デメリットとなります。
本取材時において信頼しうると判断した情報等に基づき作成しておりますが、情報の正確性・完全性について保証するものではございません。発言内容についてはあくまで個人の見解となります。また、法令・制度等の変更により内容が変更される可能性があります。
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