中国、今後5年間の経済ガイドラインを策定 <HSBC投信レポート>
LIMO / 2020年11月26日 21時0分
中国、今後5年間の経済ガイドラインを策定 <HSBC投信レポート>
中国共産党は、10月29日に第19期党大会の第5回全体会議(五中総会)を終えたが、そこでは今後5年間の政策方針が策定されると共に、今後15年間の長期ビジョンも提示された。また、会議後の声明では、開発の目的とその主要分野の概要が示された。
具体的な目標と今後取り組む課題を含む五ヶ年計画の最終版は、2021年3月に開催される中国の議会にあたる全国人民代表大会で発表され、承認される予定である。
「ビジョン2035」
中国は、2035年までに近代化された社会的市場経済体制の実現を目指している。主な目標は以下の通り。
①一人当たり国内総生産(GDP)を先進国の中程度のレベルに引き上げるとともに、中所得人口の大幅な拡大を達成する
②イノベーションのグローバルリーダーになるために、主要なテクノロジーの分野においてブレイクスルーを遂げる
③新たな時代に向けた工業化、情報化、都市化、農業の近代化を推進し、近代化された経済システムを確立する
④中国の文化的なソフトパワーを強化する
⑤炭素排出量を厳しく管理し、2060年までに「カーボンニュートラル」を達成する
⑥都市と農村の格差、家計所得の不平等を大幅に縮小する
第14次五ヶ年計画:イノベーション、技術の自己充足、内需、品質向上に重点
第14次五ヶ年計画の詳細は未だ明らかとなっていないが、「二重循環」開発戦略を優先すると考えられている。
中国が同戦略をどのように実行に移すかはほとんど開示されていない。しかし、重要なメッセージとして見えてくるのは、中国の経済回復力を改善するために、開放策を推進しながら、自己充足(特に内需、市場とサプライチェーン、自主創新)の強化に戦略的重点を置くことである。
声明で掲げられた重点項目は、次の通り。
①国家開発におけるイノベーションとテクノロジーの重要性
②市場改革の推進と経済構造の向上の加速
③家計所得の大幅な向上、不平等な所得格差の縮小、「雇用優先」による内需の拡大
④農村および農業開発
⑤グリーン経済への移行
⑥「高品質」の追求(要約表を参照)
特に食料、エネルギー、テクノロジーの分野において、経済の安全性確保が、高い優先性を持つ項目に引き上げられた。
声明では、今後5年間の具体的なGDP成長率の数値目標についての言及はなかった。政府は特定の数値を強調することなく、仮に公表するとしても、より低位で柔軟な参照基準(たとえば、およそ5.5%または5.0-5.5%など)の設定になるのではないかと見られる。
現在中国は、スローバリゼーション(slowbalisation)と地政学的緊張という外部課題に直面しているだけでなく、現状の経済の規模と発展段階から生じる、潜在成長率の鈍化への対処も求められており、経済成長と構造改革の間のバランスを如何に取るかという難題に直面している。
第14次五ヶ年計画は、第13次と同様、イノベーションと市場改革を通じて、高成長から高品質でよりバランスの取れた持続可能な成長への経済変革の継続を基盤としている。しかし、第14次では、更に変化する外部および国内環境に対応した主要な戦略の変換も反映されている。
内需の拡大、サプライチェーンのアップグレード、技術の自己充足は、外部の不確実性をヘッジするための主要な戦略の一部である。また、一方で、中国は対外開放を続けることを誓っている。
国内では、イノベーション、所得分配、地方と都市のギャップや環境問題などの分野で、これまで不均衡、不十分で持続可能に欠ける展開があったという問題が存在している。「二重循環」戦略の核心は、これまで不振、不均一であった家計消費のバランスを改善することにあると考えられ、消費者に経済を牽引する力を付けさせるためのさらなる政策努力が期待される。
また、参入障壁を低くし、民間企業の公平な競争の場を増やすことが、投資を後押しする鍵となると考えている。全体として、第14次五ヶ年計画は、構造改革の加速を通じて、生産性(および潜在的な成長)を高め、セクター間および地域全体の経済発展のバランスの改善を図ることに重点が置かれている。
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